さらに印刷会社はCMS構築の活動を通じて企業内の構造改革を行い,新たなビジネスモデル確立の手段としていかなければならない。
それらの実現のためには,まず「印刷工程=印刷機上」でのCMS構築が不可欠である。本稿では印刷工程を中心として標準印刷とCMSの関係をまとめ,具体的な印刷工程の管理ポイントを解説したい。その第1回目は私たちユーザにとってのCMSの本質・目的とは何か,そして本稿で提起するCMS環境構築のアウトラインを概観してみたい。
これまでのCMSはソフト・ハードのメーカー主導で,プリプレス工程でのツールや手法ばかりが語られてきたが,肝心なユーザの視点での目的や意義が議論されてこなかった。従って,「何のため」「だれのため」のCMSかはあまり認識されていない。改めて考えてみると,さまざまな答えがあるだろう。いわく「クライアントのため」「コストダウンのため」「短納期対応のため」「品質向上のため」などなど。どれも正しいのだろうが,一番の目的は私たちユーザ自身が「もうかる」ためではないだろうか?
「CMSをやってなぜもうかるのか?」と疑問視されるかも知れないが,CMS本来の目的を追求すればそうなるのである。私たちはクライアントから注文のあった「印刷物を納品」して対価を得ている。つまり「刷ってナンボ」の商売をしているのである。CMSにしても,決してマニアックに色を合わせて楽しんでいるのではない。手法と結果だけでなく,自社においてその目的を明確にすることで自然とゴールが見えてくるだろう。
本稿で提起する印刷工程を中心としたCMSの統合管理を構築するための条件としては,
@ 変動要因のないデジタルプルーフの活用
A スキャナ分解から印刷までの「色合わせ」
B 常に安定したレベルを維持する「標準印刷」
が不可欠である。これらの条件をクリアし,日常的にCMS環境をベースにした良い印刷物を納品することがもうけにつながるのである。
例えば,校正と本刷りの違いによるクレームや印刷での色調トラブル,再校・三校などの訂正が減ることで,短納期・コストダウンの実現と信頼性の向上などの顧客満足を得ることはもちろんだが,生産側にも大きなメリットがある。端的なのがデータに基づく「標準印刷」を維持することで,損紙が低減すること,バラツキのある校正や標準を壊す無理な印刷指示で「盛り過ぎ」がなくなれば裏付きなどの事故はもちろん,適正膜厚管理により刷本が速く乾き,製本工程に回せるという生産性の向上にもつながる。
つまりCMS環境が結果的に生産性向上に寄与することで,印刷会社の本来の目的が達成され「もうけ」につながるのである。逆にいえば,プリプレスでいくらCMSを効かせたファインチューニングを施しても,印刷工程で「標準印刷」が確立されていなければ顧客に納品する印刷物は常にバラツキ,またクレームや事故も起こり得るので,「刷ってナンボ」の商売である限り「もうけ」には結び付かないのだ。
ユーザにとってCMSは「もうける」ためにあるのではないだろうか。
(プリンターズサークル 2002年5月号より)
2002/04/27 00:00:00