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外字・異体字をどう扱うか(フォントワークスの場合)

フォントワークスジャパンは,日本のDTP市場に書体を提供するというコンセプトで設立された。1990年にゴシック系のロダンをリリースしたのが最初で,日本法人は2002年度で創立10周年を迎える。外字ソリューションとしては2001年に外字マスターNEOというツールをリリースしている。

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外字・異体字管理の問題点

外字・異体字管理には2つの問題がある。一つはコードの違いによる文字化けである。つまり,外字エリアのユーザ領域の文字は書体を切り替えると異なる文字になってしまうということ。もう一つは字形の違いである。フォントワークスは字形は文字のデザインだと考えているが,そのデザインの違いをどう扱うかが問題である。

今後OpenTypeが標準フォントフォーマットになる可能性があるが,OpenTypeフォントには含まれていても,アプリケーションや環境によって使えない文字は外字と認識せざるを得ない。OpenTypeで文字をたくさん実装しても使えなければ意味がない。フォントメーカーとしては苦労して文字を作っているから,早くOpenTypeが使える環境になれば良いと思っている。

字形判定基準

フォントワークスでは,外字などの字形判定についてはユーザの意向を第一にしており,自社の基準で字形を決定するわけではない。つまり,「この文字がないから何とかしてくれ」と言われれば基本的にはその要求どおり作るという考え方である。

字形の包摂の基準というのはなかなか難しい問題である。WebサイトでCIDの字形改訂の内容をPDFで公開しているが,例えばフォントワークスとしては字形デザイン差だと思っていたものが,Adobe-Japan1-4での字形選定で小塚明朝と比較検討してみると字形の解釈自体が違っていたということもある。OpenTypeのヒラギノ明朝とも比較検討しており,今後フォントワークス側の字形改訂が必要かどうか検討している。

OpenTypeフォントになってプリンタフォントが不要になれば,ホスト側すなわちデータを作成する側のマシンで文字も管理しなければならなくなるが,データのやり取りについてのコンセンサスが取れれば,文字コードに独自のグリフを入れてユーザ専用のフォントを作ることも可能だと思う。また,OpenTypeが標準フォーマットになってほしいという気持ちはあるが,大きな文字セットの中には使わない文字もたくさんあるから,ユーザが使いやすい提供方法があれば取り組んでいきたい。

外字・異体字関連サービス

これまでフォントワークスは独自の外字関連サービスを行ってきた。まず1995年にリリースしたフォントワークス外字「Plus書体」(OCF)がある。独自に選定した718文字をユーザ定義領域に実装して提供したもので,総合カタログにも掲載している。「ハシゴダカ」「ツチヨシ」「ナベ」などの異体字を収容してユーザには好評だった。

CID化にあたっては他社のCIDフォントとの互換性を考えて字形セットをAdobe-Japan1-2に準拠させたが,この時「Plus書体」で作成されたデータの継承を考慮してOCF互換ATMフォントを提供することにした。Plus書体の名前を継承し,考え方としてはフォントの組み替えを行ってOCFフォーマットのPlus書体で作成されたデータでも,OCF互換ATMフォントを使って開けば独自選定の外字部分も含めてATM表示とアウトライン情報の取得,PDFへのエンベッドが可能になるという方法を取った。

2001年には外字マスターNEOというパッケージ製品を出した。これは外字に関するフォントワークスの考え方を具体化した製品である。ない文字は作らなければならない。外字提供方法とは,探すのと作るのとどちらが面倒かという違いだけだと考え,ロダン・マティスに限定して既存フォントをパーツ化,1バイトフォントを作成するツールをリリースした。

一方,フォントワークスはコンサルティング業務の一環として,ユーザ独自フォントの開発を請け負っている。ここでも必ず外字の問題が出てくるが,一期一会の気持ちでユーザと綿密に打ち合わせしている。例えば外字マスターNEOで作った外字を2バイト化する作業など,ユーザの運用面を支援する業務も考えている。

さらに,現在,外字のASPサービスを検討中である。既にある文字のダウンロードだけでなく,文字作成のオーダーも受けていきたいと考えている。具体的な字形を指示するために外字マスターNEOを使ってもらい,外字マスターのフォーマットでレシピを送ってもらうということも考えられるが,まだあくまでも検討中である。

外字関連サービスの最終形態は外字マスターによる1バイトフォントの作成である。これに関してはユーザ管理でやってもらう。でき上がるのは,1バイトフォントといえども漢字で,非漢字は対応していない。非漢字の部分はパッケージの中に1バイトフォントとして括弧付き文字とか丸付き数字を入れているが,それ以外の文字は受注して作るという形を考えている。これに関連して,外字作成受注とカスタマイズ業務が発生してくるだろう。名簿用,人名・地名を中心としたサービスや膨大な字形が必要な学術研究用などを考えている。

Plus書体

Plus書体は文字パレットから「第1水準」「第2水準」「外字」が選べるようになっていて,そのうちフォントワークス外字はF040以降に入れている。これらのグリフはPlusという名称の書体ではすべて共通である。

ただ,このままではフォントワークスのPlus書体を使っていない相手先にデータを送った時に文字化けしてしまうので,こういうやり方を積極的に推進するわけではなく,要望があれば対応するということである。フォントワークス専用でなく,ユーザ専用の外字セットも作り込めるのではないかと考えている。

外字マスターNEO

外字マスターNEOは外字作成におけるユーザの負担を減らすことを重視した。目的とする外字の偏や旁のパーツを「部品ライブラリ」から呼び出し,直接ドラッグ&ドロップして微調整すれば完成する。1バイトフォントで128文字を1つのフォントとして搭載することができる。作字した外字はキーボードに任意に割り当てることができる。

もともとの文字のパーツはマティスのオリジナルのパーツをそのまま採用しているため,マティスと合わせるという前提であれば,ベースラインからヒントの置き方,字形の微細な部分までそのまま使える。

現在,Webで体験版を公開しているのでダウンロードして試してもらいたい(http://www.fontworks.co.jp/)。現在はMacintosh版だけだが,Macintosh版での評価やユーザの要望にによってはWindows版の対応も考えていきたい。
テキスト&グラフィックス研究会

■出典:JAGATinfo 2002年4月号

2002/04/14 00:00:00


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