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リモートプルーフには、色の総合的な判断力を

今年はリモートプルーフが旬である。CTPがかなり普及してきたことでやっと、「こりゃ本格的にフルデジタルにせんと…」という意識が高まってきた。本来、フルデジタルした結果としてCTPにたどりつくもんじゃないかな。順序は逆な気もするけど、フルデジタルの問題が解決する前にイメージセッタの買い替え時期がくれば、CTP化せざるを得ないのも納得がいく。

CTP化のネックは色校正とその後の修正であった。大判インキジェットプリンタによる色校正は毎年ぐんぐん進んできて、平台校正は激減したので、色校正面でのフルデジタル環境はできてきたと考えられる。プリンタでは納得がいかない仕事は、オフセット印刷機による本機校正のサービスも増えて、印刷ビジネス環境としてはCTP化の対応はできあがりつつある。

これからの各社の挑戦する点は、クライアントとのコミュニケーションがネットワーク化で大きく変る点と、印刷現場にCTPレコーダを置いてプリンタ出力を見ながら本刷りをすることだろう。インキ校正の校了紙がないことは当初は不安があろうが、印刷作業の標準化と、印刷機の管理水準を上げることと、デザイン・プリプレスから印刷までの一貫したCMSでカバーするしかないし、それは出来るだろうということになっている。

クライアントとのコミュニケーションについては、印刷よりももっと奥深い長期的なテーマになろう。それは単に出来上がった紙面の色校正だけではなく、制作途中でのリモートプルーフや、画像のDAM(デジタルアセッツ管理)のための校了済マスター画像作成、商品実物の色と画像の色を関連つけた管理など、今後テーマが増えていくためである。

それらの出発点がリモートプルーフであるといってもよい。だからリモートプルーフの取り組みは、とりあえず1点1点の仕事が手離れすればよい、という目前の目標だけでなく、将来にわたってクライアントと色管理のパートナーになるんだ、という大きな目標も持たなければならないのである。

これからも印刷と色の世界に身を置こうとする人は、従来の印刷製版の現場の知識の範囲内だけで色を考えるのではなく、色の総合的な判断力をもつために、色を科学的にとらえられるようにならなければならない。印刷作業における色の知識はCMYKおよび網点に関するものが固有に発達してきたように、過去から、伝統工芸、服飾、放送その他、非常に多くの分野でそれぞれの色のノウハウが積み重ねられてきた。

今日ではどの分野もデジタル化したことによって、色情報は他分野と横断的に扱えるようになった。色に関するデバイスが異なっても色情報の変換が可能なカラーマネジメントシステムはその典型である。だから印刷制作内部においても標準的な色彩理論の重要性が高まるとともに、次第に従来の印刷以外の色世界とのインタフェースが必要なことが多くなりつつある。

色や見え方に関する科学的な視点を学びなおしてみると、今までの印刷作業に関する色の知識(減色混合)では行き詰まっていた問題も、意外な解決方法があることに気づくかもしれない。昨今の色の装置に関する進歩も、原理的な発明によるというよりも、着想の積み重ねでなされているのである。

関連情報 JAGATでは、エッセンシャルシリーズセミナーとして、色を科学的に理解するを開催いたします。

2002/04/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会