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第17期DTPエキスパート認証試験 講評

1. 結果概要

 全受験者数は1982人,そのうち筆記試験の合格者数は731人でした。筆記試験の合格率は36.9%で前回なみです。前々回(第15期)までに比べるとあまりよくありません。
 課題制作の合格率は「課題A. スキャナマニュアル」が87.7%,「課題B. 旅行パンフレット」が89.7%,「課題C. 自由課題」は96.8%。課題不提出者を除く課題制作全体の合格率は89.8%です。
 最終的な合格者(筆記試験と課題制作の両方で合格した人)は703人で,合格率は35.4%です。 実技課題の内訳は以下の通りです。

選択課題
提出者課題合格者課題合格率
A・スキャナマニュアル
 171人
 150人
 87.7%
B・旅行パンフレット
1430人
1284人
 89.7%
C・自由課題
  63人
  61人
 96.8%

※実技課題を提出しなかった受験者が318人いましたが,このうち13人が筆記試験に合格しています。

2. 課題の全体講評

 今回は「課題B. 旅行パンフレット」をパリからロンドンに変更しましたが,合格率には直接の影響はありませんでした。課題Cは前回までに比べると制作ガイドをきちんと作っている人が増えました。課題Aの傾向には大きな変化は見られませんが,XMLを利用している人が数人いました。
 不合格,あるいはぎりぎりで合格した作品の多くには次のような傾向が見られます。

 第一に,表・写真・イラストなどパーツごとの処理はできているのに,配置が適切でない,つまり全体のレイアウトの計画性がありません。制作ガイドと合わせて見るとよくわかりますが,いきなりソフトウェアを立ち上げ,作品を作ってから制作ガイドを作っているのではないでしょうか。
 試行錯誤ができるのはDTPの特長ですが,DTPエキスパートに望まれるのは第三者への正確・効率的な指示能力です。1.全体のイメージをコンセプトとして明確化し,2.レイアウト図で具体的な紙面設計を示し,そのうえで3.画像処理や表組・文字組版の細部を指定する,という手順を踏んで,受験者自身も制作ガイドに従って制作することを実践してはいかがでしょうか。このときにグリッドをうまく使えば,配置の指示だけでなく,デザインの考え方も伝達することができます。
 第二に,これは以前から続いている傾向ですが,画像処理に比べて組版への配慮が足りません。写真やイラストはとても丁寧に処理しているのに,文字組は行末すら揃えていない作品が少なくありません。ビジュアルなインパクトが重要な旅行パンフレット,文書構造を明確にする必要のあるユーザマニュアルなど,印刷物の性質に応じた書体の選択や組版の工夫をしてください。

 作品そのもののできは全体的に良くなっているので,点差の多くは制作ガイドのできによっています。
 基本的な必要要素を満たしているだけでなく,コンセプトを生かしたレイアウト設計を行なっていたり,配色や組版への細かい配慮を行なっているなど,作業指示が的確で実作業上の効率までよく考えられている制作ガイドも少なくありませんでした。
 ページ数が極端に多い制作ガイドが見受けられますが,作業の効率性から見て,数十ページにおよぶ制作ガイドはあまり感心しません。難しいかもしれませんが,一目でイメージがつかめる工夫と,正確で詳細な指示の両立が必要です。

 不合格の方にまずお願いしたいのは,「課題制作の手引き」に記載されている条件はできる限り守っていただきたいということです。実際の仕事の多様性を考えれば,「課題制作の手引き」の諸条件が不適切だったり,非現実的だと感じる方もいらっしゃると思いますが,DTPエキスパート試験も試験である以上,提出に際して必要なルールを守っていただかないと採点そのものが不可能になる場合が生じます。
 数は少ないものの,「作品」や「制作ガイド」に相当するもの自体が無かったり,指定された仕上がりサイズになっていないなど,「課題制作の手引き」を読んでいないのではないかと思われる提出物があります。自信のある方やプロの方も,「課題制作の手引き」には必ず目を通すようにしてください。

2002/05/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会