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過渡的な製品開発とブランディング

これからもナノテクなど根本的なところで技術革新が続く限り、究極の商品というのはありえない。いくら優れた製品を開発しても、暫くするともっとよいものが出てきてしまう。商品を売る側からすると、なるべく完成度が高いことをアピールしたいだろうが、利用者側はその商品にいくらか不満があっても、次段階には改善されてもっと良くなるという期待を持てなければ選択してくれなくなる。

CTPでもレーザヘッドが取替え可能で、この先もっとパワーがあって安いレーザが時価で使えそうだというのは安心材料である。特にプリプレス関連機器は縮小・撤退が目に見えてきたので、今すぐ役立つおいしいセールストークよりも、作る側の信念とかポリシーなど長期的につきあってよいベンダーかどうかが問われることになる。

DTPソフトも何十種類もあったものが数社に絞られてしまったが、消えたものは開発コンセプト自体があまりにも一時的な製品であったといえる。実際に開発されるものが過渡的な製品になるのは仕方がないことで、それが悪いというのではない。今開発して載せるターゲットであるMacとか、その周囲にあるイメージセッタとか、いろいろなツールの限界がある。

今理想的なものを作ったからといって、すぐに効果を発揮するわけでもないので、コストのバランスが第一ということで、とりあえず2、3年の範囲の過渡的な商品を作ることになる。しかし過渡的商品だけずっと作り続けていると、最終的には耐え切れなくなって消滅してしまう。

残った会社は、それぞれ自分なりの考え方や信念で続けてきている。AdobeやQuarkは2、3年とか5年ではなく、10年たっても自分たちがどのようなポジションでいるのかということを考えていた。それがブランディングにつながることにもなる。そのために、例えばSeybold会議などで何か議論があったときに、最終的に譲り合わない点として出てくることもある。

例えば、PostScriptにはこういう機能が足りないという議論があっても、Adobeのジョンワーノック氏はPostScriptは絶対変えないで、ある点では折り合わない姿勢を示した。つまりSeybold会議の中でのいろいろなやりとりを通して、各社の開発の背景にどのようなポリシーがあるのかが浮き上がっていた。

これは今後、DTPの次にクロスメディア的な製品を作っていく場合も同じで、Webの状況やデータベースの状況、XMLの状況等見れば、当然それぞれ過渡的な製品を作るしかない。しかし、DTPとクロスメディアがその先どうなり、そのときに自分はどういうスタンスでやっていくのかというポリシーを築いていないと、一時的な製品を作ることに忙殺されているうちに、自分の居場所がなくなってしまう可能性がある。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 182号より

2002/05/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会