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無方針のデザインは逆効果

DTPエキスパート認証試験の大きな特徴に「課題制作」がある。ここでは印刷物としての適正なものができるか、逆にいえば適正上に問題があることをチェックする能力があるか、というのが出題の主旨なので、あまりにも読みにくいとか、判りにくくなっているもの以外は、グラフィックデザインは問わないことにしている。

しかし、組版は減点があり、その要因のひとつにデザインはなっている。A4の印刷物で9ポイント文字を1段組みすると、組版の設定上も無理が生ずる。このような不自然な文字領域の取り方をみると、一体この人はレイアウトをどう考えているのかと疑問に思う。

デザインやレイアウトという作業は,図や文字を配置して組み合わせることで,ある印象を演出するもので、どのようなことを伝えなければならないのか、そのためにどのような効果を出そうとしているのか、最初から意図をもって行わなければならない。紙面の一要素としての個々の図の形を作るのと同様に、図相互の関係をどうするかということも合わせて考える。近く配置されているか,離れているか,似た形か異なった形かなどが大きく印象に影響してくる。まとまって見えるかばらばら見えるかで,効果もまた違ってくる。

「課題制作」では課題と共に「制作ガイド」を作って提出することになっており、上記のようなレイアウトの方針は制作ガイドに書くのだが、当然レイアウトの方針が皆無の制作物もあり、その場合にはかなり大きな減点となる。

なぜそうなのか。まず、成り行きで放置したような部分は無秩序になり、散漫な印象,あるいはただうるさいだけになる。曖昧さとか散漫な感じは一般にデザイン表現では効果的ではない。さらに、デザインの意識のなさは、組版も、配色も、品質の一貫性も、作業性も損なってしまう。つまり、デザインには、その人個人のユニークさを出すという面と別に、品質や作業の設計として、印刷物制作にかかわる人が意識すべきところがあるといえる。

このような背景で、レイアウトとデザインを考えるセミナーも開催するようになった。6月21日のDTP時代のレイアウト方法論は、レイアウトデザインを自分なりに体系化するためのヒントとして行うもので、昨年も和田義徳氏はじめ現役のデザイナーで、かつ自分の仕事を理論的に整理している方に来ていただいた。過去の記事で以下のものを参考にしていただきたい。

DTP時代のレイアウトデザインの継承・発展
良い印刷物設計とは - いまこそ必要な論理的制作態度
レイアウトの考え方と,写真・画像の扱い方

参考 : 6月21日 DTP時代のレイアウト方法論

2002/06/06 00:00:00


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