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CTP運用を効率化する仕組み

普及期を迎えたCTPであるが,CTPが登場した当初から指摘されていたフルデジタルワークフローの課題,すなわちカラーマネジメント,プルーフ,プリフライト,検版,出力の信頼性などについては,完全に解消されたとは言い難い。自社の仕事の種類ややり方に応じて,何を重視してワークフローを組み立てるのか,ユーザ自身のシステム構築力やシステム運用力が問われつつある。本稿では,CTPワークフローを効率化するポイントをいくつかピックアップしてみたい。

色校正の合理化のために

CTP化によるフルデジタルのメリットを享受するには,なんといっても色校正の合理化が必須である。「デジタル入稿→フィルム出力→平台校正→責了・校了→CTP出力」という,従来型ワークフローではコスト削減や納期短縮の効果は薄い。
そこで,カラーマネジメント技術とDDCPないしカラープリンタによる色校正が求められる。カラーマネジメントについては,ICCプロファイルベースの仕組みは成熟してきており,技術的に大きな変化はないものの,最近ICCのデバイスリンクプロファイルに対応したCMSツールがいくつか見られる。
通常のプロファイル変換は,「CMYK→CIEL*a*b*・XYZ→C'M'Y'K'」のように一度PCS(Profile Connection Space)と呼ばれるデバイスに依存しない色空間を経由する。これに対しデバイスリンクプロファイルは,例えば「CMYKからC'M'Y'K'」にダイレクトに変換する。あらかじめ入出力のデバイスを組み合わせてプロファイルを作成することで,マッチング精度の向上やスミ版保持などが可能となる。

多種多様なカラー出力機の充実

CTPのワークフローでは工程の段階ごとに校正の目的に応じて出力機を使い分けることになる。また,色校にしても,仕事に応じてスピード,品質,コストのうち何を優先するかによって,本機校正を含めさまざまな選択肢がある。
数ある選択肢の中でも,CTPワークフローに欠かせないものとして定着しているのが,大判インクジェットプリンタである。面付け確認,検版,CMSを用いてのプルーフと幅広い用途に使える上に,価格の安さが魅力である。
また,メーカー間の開発競争も激しく,次々と高性能の機種が登場している。キヤノンが大判インクジェットプリンタ分野に本格参入し,発表したBJ-W9000は,3072本のノズル(各色256ノズル×6色×2セット)をもち,1200×600dpiの高解像度で高速(A0/7分「速い」モード選択時)に出力する。
また,大判ではないが,2002年7月発売のW2200は,A3ノビサイズ対応ながら,7680本のノズル(各色1280ノズル×6色)を装備し,2400dpi×1200dpiで,A3サイズを約6枚/分(普通紙,「速い」モード時)で高速出力できる。インクジェットプリンタは,出力スピードの遅さが最大の弱点であったが解消されつつある。

カラーマネジメントの課題

今後のカラーマネジメントの課題は,データを作成するデザイナーへの啓蒙と安価で使いやすいツールの充実であろう。デザイナーが自分の手元で最終印刷物の色の確認ができれば,色校正の究極の合理化であるリモートプルーフの実現が見えてくるし,何の補正もしていないカラープリンタに,印刷物の色を合わせてくれというような無理難題に苦しむこともなくなる。
高精度な測色機に定評のあるGretagMacbeth社からは,i1という安価版のCMSツール(測色機,プロファイル作成ソフトなどから成る)が出ている。
DTPソフトのCMS対応としては,Adobe Photoshop,Illustrator,InDesignは色管理はすべてICCプロファイルベースとなっており,カラー環境ルの設定メニューも共通化されている。また設定したカラー環境をファイルに保存して,やり取りすることができる。
一方,よりオープンな環境でデータ交換する際には標準化の問題が避けられない。標準化の新たな取り組みとして,雑誌広告基準(JMPA)カラーがある。
JMPAカラーの目的は,広告原稿出稿から印刷までの期間を短縮して,雑誌広告の即時性,速報性を高めることにある。広告会社(制作会社)は,DTPデータの入ったMO,JMPAカラーに準拠した色見本,データ入稿仕様書の3点セットを出版社に送稿し,確認後,印刷会社へ送稿する。印刷会社では,内部校正(印刷見本)用にJMPA準拠のDDCPから出力したものを用いる。これにより印刷会社は校正刷りをなくすことができるため大幅な納期短縮が期待できる。
JMPAカラーは,大手印刷会社3社におけるオフセット輪転印刷のコート紙での色再現を比較し,どの印刷会社でも再現できる(一番狭い)色空間に設定してある。またオフ輪での印刷を想定しトータルインキ量を最大300%に設定してある。
プリンタメーカー・ベンダーに対し,JMPAカラー・ベンダーキット(DDCP出力サンプルと評価用画像データ,測色評価専用チャートおよび測色値から成る)を提供している。2002年3月現在で28セットの販売実績がある。
広告会社,出版社,印刷会社は,JMPAカラーを再現するプリンタをそれぞれ使うことで同じ色を共有でき,従来の色校正が不要となる。ただし,プリンタ用紙と印刷本紙の用紙の違いの問題や現時点では許容色差の基準がないので,当面は完全にオープンな環境での運用ではなく,特定の関係者間で使用するプリンタを限定してといった運用となるだろう。

注目集める1bitTIFF

1bitTIFFが脚光を浴びている。CTPが普及する中で,確実に出力でき,かつ生成・出力に機器メーカーを問わないオープンなところが受けているようだ。
CTPでは,フォントの有無などRIPの違いに左右されない「確実性」が強く要求される。そこで,一種のプログラミング言語であるPostScriptの解釈と出力処理とを分離しようとして登場したのが,いわゆる中間ファイルである。
またRIPの違いによりプルーフとプレートとで出力内容が異なることは許されないので,中間ファイルを用いて一度のRIP処理で複数の出力機にデータを供給するR.O.O.M.コンセプト(Rip Once Output Many)が出てきた。
中間ファイルについてもう少し詳しく見ていく。RIP処理というのはインタープリット,レンダリング,スクリーニングの3段階に分けられる。
インタープリットでは,PostScript言語を解釈して,文字,線画,画像のオブジェクトがどのように配置されているかを明らかにし,PostScriptエラーや使われているフォントがRIPに搭載されているかのチェックを行う。線画はベクトルデータのままで保持される。PDFはPostScriptファイルをインタープリットして作成される。
次にレンダリングでは,各オブジェクトを演算処理し,1枚の絵の形に展開する。この段階で出力解像度が規定されるが,出力線数や網点形状は特定されていない。サイテックスのCT/LW,ハイデルベルグのDelta Listを始めCEPS系ベンダーの中間ファイルは,レンダリング後のものが多い。RIPのシステムと出力機のシステムが同じベンダーのものだと信頼性は非常に高いが,ベンダー間での互換性に乏しい面がある。
最後にスクリーニング処理により,カラーであればCMYKの4版のデータに分割されて,出力機の露光ヘッドのオンオフ制御の信号にまで展開する。網点化されたデータという言われ方をするが,これを厳密にいうと,例えば8ビット256階調を一つの網点で表すには,一つの網点を16×16の格子に分解して,その一つひとつのオンオフを制御することになる。オンかオフの二つの信号しかないので1ビットである。今話題の1bitTIFFは,このスクリーニング処理後のデータである。
こうして見ると,1bitTIFFは本当に出力直前の最終データということが分かる。1bitTIFFワークフローと称されてPDFと比較されることも多いが,PDFワークフローという時には,ページ面付けやトラッピングなどの製版処理が含まれるのに対し,1bitTIFFは,こうした製版処理はすべて終わっていることが前提となるので,単純に並べて比較してもあまり意味がない。
PDFワークフローの先駆けであるApogee(日本アグフア・ゲバルト)にしても,RIP処理済みのデータをハンドリングするシステム(PrintDrive)が提供されている。また蛇足となるが,Apogee Series3では日本語CIDフォントのエンベッドが可能となっており,PDFワークフローの環境整備も進んでいる。

1bitTIFF対応ツール

データ圧縮ツールとしては,シンボリック・コントロール社の「cubic-D」がある。1bitTIFF専用のデータ圧縮・伸張ハードウエアで箱形をしている。1ビットデータを平均20分の1に自動圧縮し,ネットワーク上の指定されたIPアドレスのcubic-Dに自動的にデータを転送する。受け取ったcubic-Dは自動的にデータ伸張を行い,さらに決められた場所,例えばCTPコントローラへデータを転送する。
ジーティービーからは,BitThroughシリーズが出ている。PlatePlannerは,殖版,大貼り作業用ツールで,自動トンボ出力やアクセサリの配置なども簡単な操作で行える。
StripEditorは,文字修正やブロック差し替えなど従来のストリップ修正に準じた作業を行える。
ProofMakerは,分版された1bitTIFFをデスクリーニングして,プリンタから出力可能なコンポジットのTIFFファイルを作成する。
DotAdjusterは,指定されたトーンカーブに従って網点のサイズを変更しドットゲインの補正を行う。
Image Compareは,Proof MakerやRIPで出力されたTIFFデータを比較し,差分を自動抽出する。大日本スクリーン製造のBitstepperは,出力先が同社のプレートセッタに限られるが,カラープレビュー,大貼り・殖版,プルーフ出力といった多彩な機能をもつオールインワンシステムで,CIP3準拠のPPF出力にも対応している。また,G3,G4,PackBits,LZWなどのさまざまな圧縮方式に対応している。
殖版・大貼りシステムには東洋インキのPlate Frontもある。
サカタインクスのBEST screenproofは,RIP後の1bit TIFFにICCプロファイルを適用し,印刷物に近似した色調のカラープルーフをインクジェットプリンタから出力する製品である。網点の線数,角度,モアレやロゼッタパターンの再現ができるという特徴がある。

2002/06/17 00:00:00


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