まず,私が考えたい「組版」が誰にとってのものか,ということを明確にしておきたいと思います。
直接組版に関わる人間としては,広い意味での組版作業者と読者の二者が挙げられるのではないかと思うのですが,それぞれを一括りに考えてしまってたちゆく現状なのかどうかというところに,まずは私の疑問があります。私の考えでは,作業者にも読者にも,「プロ」と「アマ」の如き,二つのあり方が存在するのが現状ではないかと……。
まず作業者としては,それこそ「日本語の文字と組版を考える会」で世話人をされている方や写植時代からの職人さんをはじめとする「プロ」がいて,例えば文芸書や気合いの入った雑誌など「テキストを読ませる」媒体の組版をされている。その一方で,予算・知識・納期などさまざまな条件の下で,アプリの機能に引きずられてなんとなく文字を並べ,それをフィニッシュワークとして何ら痛痒を感じない・流さざるをえない「アマ」と言って良い三文デザイナーがいて,そのテキストは読まれなかったり読み捨てられたりしていくという状況が,それこそ浜の真砂のごとく尽きない。本来そういう人が「デザイナー」と名乗っていいのかどうかというのも大いに疑問ですが,予算がないから誰か指示してくれる人もおらず,自分ですべてを判断し出来映えを評価している以上,現実としては,その責任範囲はオペレーターを超えてしまっている。──以上が,DTPと不景気がもたらした組版(とも言えないような)現状ではないかと思うのです。
私は自分自身が三文デザイナーですから,後者の現状をどうすればマシな製品ができるのかということに強い関心がある,そういうことなんです。前者のお仕事に関しては,学ぶ点こそあれ,自分が口出しするようなものだとは思っていません。
さてそれでは「アマ」の組版品質をどうやって管理すべきか? と考えたとき,組版のことを本当に理解している人物に決定や最終権限を委ねるというのは,理想なのかもしれないけれど,予算や納期,ワークフローをどう構築するかという点で,私にはちょっと答えがわからない。また,DTPアプリケーションの組版仕様がしっかりしていれば,何もわからず使っても組版品質の底辺は押し上げられるのかもしれないけれど,これもまた,「アマ」ユーザーが左右できるようなものとは思えない。それじゃ,「アマ」作業者が自分でできることとして,最低限のことだけでも勉強してはどうか? というのが,私が「組版」というものに興味を持ったきっかけでした。
ところが,ちょっとだけ勉強しようと思い始めた私にとって,状況はそう甘くはなかったようです。何しろ,組版ルールというものがどこまで理論化され,開かれたものとして存在しているのかすら,いまだにわかっていません。そこで私にとって非常に心強かったのが,JIS X 4051という規格だったわけです。何しろ,何の知識もコネクションもバックボーンも持たない万人に対して,文書の形で開かれている。もっとも,もと写研にお勤めだった方のお話を伺ったり,「プロ」の方が書かれた本を読んだりすると,あれはあれで,色々物議を醸す点はあるようなのですが……。それでも,開かれた規格であるという点において,三文デザイナーとアプリのデフォルト機能が生み出す怪組版が出回る現状を,一定のスタートラインに並べるという大きな価値があるのではないかと。「プロ」の方がJIS X 4051をどう評価されているのか,という情報をあまり持っていないので,そのあたりをお聞かせいただければうれしいんですが……。
以前JIS X 4051にちらりと触れたところ,某プロの方から,「4051は93年の第1次規格,95年の第2次規格を経て,いま第3次規格審議中。これでようやくページ組み対応になるわけで,それ以前のものをつかまえて,JIS X 4051の組版ルールを云々するのは笑止千万」と思いっきり叱られてしまったんですが,ページ組み対応でないと組版はまったく云々できないものなんでしょうか? 私は組版というのは,文章の意味内容を体現したものであると考えているのですが,「JIS X 4051(95)日本語文書の行組版方法」では,字間のアケ方のルールや行の折り返し規則は規定されているわけですよね。このふたつで「JIS X 4051はどの程度文章の意味内容を具現できるのか」をある程度評価できないものなんでしょうか? 字間は文字同士の結びつきの強さ弱さ(=意味,文脈)を具現として示すためのものだし,行の折り返しも,意味の連続性の強さ弱さを具現するものではないかと思うのですが。
それと逆に,第三次規格に何が盛り込まれていくのかについて,不勉強なもので,まるでわかっていません。ウィドウ/オーファンとか,ページ内の組版の配置とか,になるんでしょうか……? せっかくの機会なので,この際そのあたりを整理して教わることができればと希望しているんですが。
●前田@ライン・ラボ:
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2002/06/19 00:00:00