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デジタルカメラにはどのような特性があるのか


 印刷業界においても従来の製版プロセスに代わり,デジタルカメラの画像データを印刷用に変換するケースが増加している。また,一般消費者向けのデジタルカメラも急激に普及し,さらに高機能となり発展している。
 デジタルカメラを直接または間接的にデータ利用するにあたり,その構造,本来の特性などを取り上げる。

カメラ究極の目的と開発経緯

 見たいところへ眼をという究極の目的からCCD(Charge Coupled Device)やCMOSセンサが開発された。画像を撮るための放送局や家庭用カメラ,ものを撮るための監視や業務用カメラと用途,品質の区別により大きく2つに分類される。

 1960年代からテレビカメラ,ビデオカメラなど動画用が開発され,1990年後半から静止画である民生用デジタルカメラが登場した。  1970年にCCDが開発されて以来,デジタルカメラもさまざまな経緯を辿ってきたが,1980年代までは品質やデータ容量など問題点も数多く存在した。  現在のデジタルカメラの基本的な技術は,ビデオカメラで相当に培ってきたともいえ,種類も携帯電話,PDA,時計,パソコンなど多種にわたっている。

デジタルカメラの構成

 CMOSセンサはCCDに比べ,システムオンチップ可能,動作電圧単一,スミア,消費電力も少ないが,ノイズは多くなっている。
 CMOSセンサ,CCDともに基本的な部分である感光部はフォトダイオードを使用している。CMOSセンサは,順次走査をするため,信号が一斉に読み出されるものではない。それに対しCCDは,全画素一斉に信号を送るので,全画素で蓄積している時間が同一ということが大きな違いとなる。写真の表現に例えると,レンズシャッターとフォーカルプレインシャッターに相当する。

 単板式カメラ,デジタルカメラの最大の問題点は,周波数と考えられる。実際にはLPF(Low Pass Filter),水晶の複屈折を使って処理しているが,処理しすぎると解像度が悪くなる。いかにこの部分に混入する成分を無くし,また混入しても色信号として再生されないように考えている。
 色フィルタのピッチを細かくすると,大画素のCCDやCMOSセンサが必要になる。従って画素数を大きくし,周波数を高くすることが,根本的な解決方法となる。
 撮像デバイスの要件は,感度の場合,照明なしの暗い場所で撮影できることであり,S/N,ダイナミックレンジ,解像度についてもそれぞれ厳しい条件があり,さらには小型,軽量,低消費電力,高信頼性高機能,低コストでなければならない。

カメラの画像処理,デジタル回路技術

 偽色信号抑圧,高輝度着色防止,低彩度圧縮などが代表的である。偽色信号をいかに減らすかという,偽色信号の抑圧方法は,各社ノウハウがあり,高輝度着色防止や低彩度圧縮は,色バランスが悪くなるような場合,高輝度の部分に色をつけない方法や,低彩度の色バランスが問題になる部分を若干薄めにするようなことを行う。これは極端に処理すると製品にならないが,若干補正した場合,破綻が無い画像が得られる。その他,CDSは相関二重サンプリングといい,CCDから出るノイズを電気処理で減らす回路であり,キズ欠陥補正は,大画素センサの場合,無欠陥製造をすることが困難であるため補正を行う。輪郭補正は,垂直相関や水平相関を使用して,隣接画素を平均し,埋め込むような補正方法をとっている。

 カメラの場合は,CCDやCMOSセンサなどそれ自体が大きなセンサなので,有効に使い処理しようということである。実際は,画面分割しブロック内処理後に制御する。画面を8×7程度に分け,人間の顔など統計的に調べた結果,重要な被写体は画面の中央やや下部に置かれるためその部分で測光し,オートホワイトバランスやオートフォーカス,感度調整などの処理を行う。

 デジタル回路技術は,色コーディング,画素ずらしなどの撮像方式,駆動方式,信号処理に分類される。信号処理はCDS回路にてノイズ低減を行う。その他何画面かピックアップし,平均化してノイズを減少させる機能を備えたデジタルカメラもある。色分離・デコーディングが色づくりの本質となっており,デコーディングの中にはマトリックスをかけ,色度図上でいう色再現範囲を変えることや,実際には全体の色調を変化させるマスキング技術がある。
 画像づくりで大事な点は,非直線補正処理であり,フレア処理,ガンマ補正,輪郭補正,ニー補正などを行う。リニア補正処理は,マトリックスをかけたり,色温度変換,肌色調整をしている。

 民生用カメラは,このようにいろいろな処理をしてしまうが,画像処理をするカメラは,本来処理しない方が良いのではないだろうか。印刷業界としても,処理をしていない生のデータをもらった方が良いかもしなれい。ある意味では,残念ながら現在のデジタルカメラは,非常に一生懸命このように内部処理をして,最後に1枚の画像を組み立て直して記録している。
 多機能化は現在の回路処理の中では大きな役割を占め,このような機能が入っていないとカメラとは呼べないほどとなってきており,現在はマイコン処理で制御している。

今後の展開および課題

 今後のセンサの動きは,売れ筋のものは大量生産をする必要があり,そのためには,なるべく画素ピッチを小さくして,1枚の半導体ウエハーから多くのチップを取り出す方向である。以前は,半導体ルールとして線幅0.6μmであったが,最近は0.35μmと微細加工が進んでいる。2003年から2004年の製品としては0.18μmが予定され,すでに試作が行われている。よってCMOSセンサ,CCDの画素ピッチは,5.6μm程度で停滞していたが,5.4μmと少しずつ動き始め,やがて4.0μmと予想される。これにより電源電圧も下がり,消費電力も低下していくことになる。

 画像処理カメラとしては,γ特性も0.45ではなく,1のままが良い。また解像感を良くするために,画素ずらし,高域加算,輪郭強調など処理しているが,そのようなミックスハイ,輪郭補正は不要と思われる。周波数特性はフラットが良く,視覚効果も,民生用カメラは輝度信号が帯域が広く,色度信号は狭帯域となる処理をしているが,実際の画像処理をする場合には,同一特性が良いことになる。複数画像の均一性は,信号処理,伝送特性が均一ということである。

 画像を撮ることは高機能であり,放送用やビデオカメラ,デジタルカメラであるが,今後高画質はもちろん,芸術性という点も視野に入ってくる。
 また,ものを撮ることも単機能のモバイル,玩具,ロボットなどの用途で,いかに安く小さくできるか課題である。測定・医療用は,新型の内視鏡も最近開発され,医療用として多機能が必要になっている。また多眼協調は,カメラのセンサ部分を多数配列して,総合的に1つのCPUでコントロールすることで,監視や車載,介護などの環境で必要である。

 将来,真の高画質カメラとして,人間の感性を,解像度,階調,色調,感度,S/N,ダイナミックレンジなどの組み合わせのハードに,どのように変換,反映してデジタル化するか,工学的に何をすべきかが課題となる。

(テキスト&グラフィックス研究会)
JAGAT info8月号より

2002/08/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会