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進歩を続ける製本技術

広がるプリプレスデータによる自動調整

製本・後加工機でも、すでに遠隔操作やコンピュータコントロールは行き渡った。その次の展開として期待されていたプリプレス工程で生成されたデータによる各種調整機構の自動調整も、この1年で実用化の範囲を広げてきた。
ハイデルベルグの「スティッチマスターST400」では、面付けソフト「シグナステーション7.0」で中綴じ機の設定に必要なデータ(折丁の寸法設定,針金の長さ調整、本の寸法に合わせた位置調整、三方断裁寸法,スタッカーの寸法調整,冊数設定)を作成し、中綴じ製本システム各部の調整機構をプリセットすることができる。同様のプリセット機能を持った断裁機、折機も実用化された。

製本工程に限らず、いくつかの工程をインライン化したシステムに共通する問題は、全ての部分の調整に時間が掛かることと、どの部分に不都合があっても、ライン全体を止めなければならないということであった。したがって、ロングランの仕事以外での生産性は非常に低くならざるを得なかった。しかし、上記のようなシステムが可能になれば、少なくとも前者の問題はかなりクリアできるだろう。

さまざまな付加価値向上策

ホリゾンは、CIP3/CIP4で提唱されている考え方をベースに、印刷物の制作,デザイン時から最終的に印刷物を手にする顧客までをデータベース化し,一人ひとりに必要な印刷物を提供する「i2iシステム」というコンセプトを発表した。単なる省ロット化への対応だけではなく付加価値を高めるシステム構想である。

マスマーケティングからターゲティッドマーケティングへシフトする中で、顧客データベースを使って顧客の嗜好を分析し、その結果に基づいて個々に異なる折丁を選択、丁合し、顧客の宛名印刷も行うセレクティブ・バインディングは、カタログ分野で使われるようになってきた。全ての顧客に同じカタログを配る従来の方式に比べて、レスポンス率は数倍に上がるという。

雑誌の販売促進、広告効果アップを狙った付録の添付や広告ページへの現物添付が増えてきている。このようなニーズに対応するために、他の本や印刷物,サンプル,CD-ROM等を投げ込み、あるいは糊付けして印刷物の多様な組み合わせでの発送セットを作ることができる設備も出されている。これに、顧客データベースに基づく選択丁合機能を結びつければ、顧客毎に異なる発送セットを作るセレクティブ・パッキングも可能である。

利用者の安全配慮、環境対応技術

針金を使わない中綴じ「糊綴じ製本」は、印刷物の利用者への配慮と両端折り・変形折りを取り込むことが可能で差別化した印刷物提供を可能にする。この綴じは、くるみ表紙になる刷り本にセンター糊付を行い、その上にミシン加工とセンター糊付した折丁を重ねて必要な折丁全てが揃ったところでナイフで直角二つ折りをし、さらに天地、小口断裁をして完成する。
本の利用者が、中綴じに使われる針金で指などを傷つけることを避けるための製本方式として「逆中綴じ」もある。逆中綴じでは、本の背から針金を打つのではなく、本の内側から針金を打ち,その後でバインダーで表紙くるみをするので、針金の先端が読者の手に直接触れないようになっている。

従来、無線綴じの糊として使われていたEVA(エチレン酢ビ)の代替品として、空気中の水分によって反応が進み硬化するPUR(Polly Urethane Reactive)が出てきている。紙のリサイクル適性の問題と製本強度向上、見開き性の改善が期待できるからである。ただし、PURホットメルトが高価であることや管理面での問題に対する工夫、使いこなしのための習熟が必要である。図書印刷は高級書籍においてPUR製本を実用化、中小製本会社での使用事例も聞かれるようになった。

(出典 JAGAT 発行「2002-2003 機材インデックス」ー工程別・印刷関連優秀機材総覧―)

2002/08/25 00:00:00


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