デジタルカメラの発展を振り返ると、3ショットタイプとか3CCDタイプなどスタジオカメラ用の特殊な高級カメラバックというところから始まった用途と、1990年代中頃のカシオのQV-10のような画像メモのようなハンディカメラの用途は暫く平行線であったが、2000年のシドニーオリンピックでは35mm的デジタルカメラが報道で普通に使われるまでになり、一般市場にも一挙に広がって銀塩カメラを抜くほど普及した。
小型デジタルカメラの技術革新と浸透は思ったよりも早く、小さいAPSカートリッジフィルムを使った普及型銀塩カメラのマーケティングは遅きに失した。デジタルカメラの受け皿としてのパソコンやインクジェットプリンタの普及が凄まじかったことが、APSカメラには不利に働いたであろう。フィルムの方が解像度が高いとしても、デジタルの方が身近になったので利便性がよくなり、マス市場の流れが変わったのである。
一眼レフのようなアナログのカメラは残って、デジタルカメラとの棲み分けができていくだろう。しかしデジタルカメラの競争はまだまだ激しい。今度はデジタルカメラ同士の戦いになっていくからだ。近年は画素数を多くする競争が最も目立ったが、これは必要度から考えると、もう上限にきているかもしれない。それよりは絵作りなどもっと本質的なところへ競争の焦点は移るだろう。
使い勝手や既存のレンズの流用という点では、構造的に銀塩フィルムカメラの継承をするのか、デジタルカメラの特徴がよくでるように新規設計がいいか、などがまだくすぶっているが、大勢は新規設計のコンパクトなカメラになるだろう。カメラもハンドバッグの中でMDや携帯電話とぶつかり合うデジタルガジェットの仲間入りをする。
その理由は、デジタルカメラはマニア向けなどの独自の世界に閉じこもるのではなく、パソコンなどの更なる発達に引きずられていくからである。デジタルカメラにどのような機能を持たせるべきか、今後意見が分かれてくるだろう。業務用ならば近くにノートPCなどを置いて、カメラとはbluetoothのような無線でインタフェースをとって、カメラにはデータは蓄えないという方法もあろうし、また小さな液晶ファインダーではなく、大型の液晶モニターで絵を確認しながら撮影したいという場合もあろう。
要するにコンピュータの方にある程度機能を譲って、カメラは本当に受光部分に特化させてシステム的にフレキシブルにしたいこともある。これはデジタルガジェットも似たことかもしれない。受光部分というコア機能で考えると、CCDかCMOSかという議論になる。プロには大型CCDを望む声は多いが、CCDは量産面で不利だし、CCDそのものの性能を上げることには限界がでてくるだろう。
一方CMOSとその信号処理回路は、CPUやメモリと同じようなテンポで進化していく性質のもので、単独で戦うCCDよりは有利な位置にいる。マイクロエレクトロニクスに、より強くコミットした方が得であることはまだ10年くらいは続くであろう。
テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 187号より
2002/08/04 00:00:00