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Windows 3.0とWIFEフォントの登場─フォント千夜一夜物語(10)

MacintoshのTrueTypeがデバイスインデペンデントで、フォントが出力装置に依存しな いとなると、低解像度のプリンタでも高解像度のタイプセッタやイメージセッタでも、同 じフォントが出力できるわけだ。したがってこのメリットはユーザーにとって大きな要素 である。このことは現在のWindows3.1のTrueTypeフォントを見れば明らかである。

この事実は電算写植システムの開発・販売をしているR/RIにとって、Mac DTPの印刷 業界における将来の位置付けは見えないものの、自社フォントを他に提供することは敵に 塩を送るようなもの、という危機感が強かった。そこで600dpiという出力解像度制限を設 定することを要求したわけだ。

一方「漢字Talk7.1」の標準搭載のモリサワフォント2書体は、実はモリサワの許可を 受けてアップル社側でTrueTypeにしたといわれる。したがってモリサワも600dpiの解像 度制限に対して特に異存はなかった。つまりポストスクリプトフォントを解像度別に販売 しているからだ。

MacintoshのTrueTypeの出荷後、普通紙プリンタの利用範囲では好評であったが、印刷 物制作においてタイプセッタやイメージセッタなどで印画紙/フィルム出力に使えないこ とが、デザイナーや印刷業界の間で不評をかった。このことが前回述べた「禍根」の一つで ある。 つまり印刷物にはTrueTypeフォントは使わないこと、という評判が伝わった。この結果 Mac DTPにはポストスクリプトフォントにかぎる、という定説が流れた。

「システム7」の発売前の1989年に、アップルコンピュータ社とマイクロソフト社はア ウトラインフォントとPDL開発の技術提携を発表したことがある。アップル社がTrueType のアウトラインフォントを、マイクロソフト社はTrueImageというPDLを開発するという ものである。これはポストスクリプト対策と思えたが、その後この計画は立ち消えになり 「システム7」へ発展したという経緯がある。

一方1990年5月、米マイクロソフト社が発売した「Windows3.0」は、GUI(Graphical User Interface)対応のパソコン新OSとして注目を浴びた。日本でも「日本語版Windows3.0」 が1991年2月から発売されたが、アプリケーションが少ないとか、使いにくいなどの理由 により、それほど普及しなかった。

●スケーラブルフォント時代の到来
しかし「Windows3.0」は1990年代のコンピューティング環境を変えるものといわれた。 それまでパソコンOSの主流となっていたMS-DOSは、グラフィックスには弱点があったか らだ。

マイクロソフト社は日本語版Windows3.0に独自機能として「WIFE(Windows Intelligent Font Environment)」を開発しOSに組み込んだ。「WIFE」はワイフ(奥さんのことではない) と呼ばれる、Windows OS下における日本語フォント管理機構のことである。

このWIFE機構に対応したフォントドライバ(ラスタライザ)をメーカーが開発すること により、TrueTypeフォントがWindows環境で使えることになる。そこでいち早くこのWIFE に対応しWindows市場に日本語フォント環境を築いたのがアルプス電気とRI(リョービイ マジクス)である。その頃RIはBitstreamとMacintoshのTrueTypeを開発している頃で あった。

アルプス電気はWIFEに対応したフォントラスタライザ「FontPro1000」と「FontWaveフ ォント(TrueType)」を開発し発売した。1991年末のことである。

その1年前にアルプス電気のU氏とY氏がRIを訪問し、Windows3.0のWIFE機構とアル プス電気開発のフォントラスタライザ「FontPro1000」の技術的優位性の説明と、販促のた めにRフォントの協力を求めた。

と同時に「FontPro1000」とリヨービフォントをWindows市場に普及させるという両社の 思惑が一致した。かねがねRIのS氏はフォントビジネスを画していたので、アルプス電気 のパッケージ販売戦略に関心を示し提案に賛同した(つづく)。

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2002/08/24 00:00:00


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