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ブロードバンドで先進ユーザをつかめ

これまでWebを制作する場合,データの最適化や最小化は大事な要素であった。ダイヤルアップ接続などのナローバンドユーザでもストレス無くWebサイトをみることができることが前提で制作してきたからである。オープニングに見栄えの良いFlashアニメーションを使う場合でも慎重になったし,図版やボタンにいたるまで画像データは容量が小さくなるようにデザインされていた。しかし,ADSLやCATV,光ファイバなどのブロードバンドが一般化すると,これらのWeb制作の常識が一変する可能性が高い。

ブロードバンドは2001年ごろから騒がれてはいるものの,最近ではややトーンダウン気味の感は否めない。実際にはブロードバンドはどの程度普及し,ビジネスは進展しているのだろうか。2002年9月2日に総務省が発表した7月末時点のインターネット接続サービスの利用状況では,ブロードバンドインターネットの利用世帯が初めて500万世帯を超えたと発表した。主な回線別の内訳は,DSLが361万件,光ファイバが8万件,ケーブルテレビが171万件で,全体の合計は540万になる。特にDSL利用者の伸びが全体を牽引している。

また,情報通信総合研究所が2002年5月に発表したインターネット普及予測によると,ブロードバンドの利用世帯は2001年度の約390万世帯から,2005年度には3200万世帯となり,4年間で8倍に増えると報告している(*1)。世帯普及率が6割以上になるということである。2005年まではADSLが多勢を占めるが,その後は光ファイバを利用したインターネットが急増し,ADSLと光ファイバの2つがブロードバンドの主流になると予測している。

ブロードバンド時代になると,高精細画像や動画などのコンテンツビジネスが拡大すると大きな期待を集めた。1999年から2001年かけて,映像系コンテンツ配信を中心としたブロードバンドコンテンツのコンテンツアグリゲーターが数社立ち上がった。コンテンツホルダー系の事業者に,日本テレビ系のB-BAT(ビーバット),テレビ東京系のTX-BB(テレビ東京ブロードバンド),TBS,フジテレビ,テレビ朝日が中心となっているTRESOLA(トレソーラ)などがある。伝送路系は@Net Homeや,有線ブロードバンドのBROAD GATEがある。しかし,放送系については権利管理処理などの問題が足枷となり,本格的なサービスが遅れている。

また,早い時期から大容量データを配信をてがけてきた音楽の分野において,サイバー・ミュージックエンタテインメント(旧リキッドオーディオジャパン)やミュージック・シーオー・ジェーピーなどは2001年の経営は厳しかった(*2)。 どうも,ただ画像や音声を流せば受け入れられるというものではなかったようだ。では,今日のブロードバンドはどのようなターゲットを狙えばよいのだろうか。

ブロードバンドを導入したユーザ側のスタンスはどのように変わりつつあるのか。デジタルコンテンツ白書2002では,有料コンテンツを購入する意欲はそれほど高いとはいえないが,見るWebサイト数や,ファイルのダウンロード回数,映像や音楽・インターネット放送の利用が増加するなど,コンテンツ利用は活発化する傾向がみられる。

インターネット白書2002では,ナローバンドユーザとブロードバンドユーザに対して同じ質問をなげかけて,それぞれの志向の違いを詳しく調査している(*3)。この結果,現在のブロードバンドユーザは可処分所得が高く,先進的な志向を持ち,インターネットで提供されるサービスを積極的に利用したいと願っていると分析する。音声動画情報を視聴するユーザの6割がブロードバンドユーザであり,「映画,TVなどの広告やニュース・天気予報,オンラインラジオ」など情報量の多いものほど視聴率が高い。また,オンラインショッピングの経験者はナローバンドユーザの43%に対してブロードバンドユーザは60%近い。インターネットで商品・サービス購入のための情報収集活動や実際に購入することが浸透し始めている状況の中で,カタログ的な音声や動画が快適に利用できる点でブロードバンド利用者が優位に立っている。

オンラインショッピングのサイトでは,ブロードバンドの常時接続・高速ネットワークというメリットをいかして,より詳しい商品情報を提供することで顧客の購買意欲を高めることに成功しつつある。ブロードバンドだから単に大容量コンテンツを送るというのではなく,ビジネス戦略の中でブロードバンドという手段をいかに組み込むかを,Webというメディアを制作する時点で考えなければいけない。(通信&メディア研究会

(参考文献)
*1 インターネットの普及予測(2002年5月21日発表)-情報通信総合研究所
*2 デジタルコンテンツ白書2002-財団法人デジタルコンテンツ協会
*3 インターネット白書2002-インプレス

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情報通信総合研究所からはブロードバンドの普及状況を,So-net,DNPアーカイブ・コム,ウェブプログレッシブからブロードバンド向けコンテンツの制作についてお話を伺います。

2002/09/09 00:00:00


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