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共用品,UDの標準化の下地はできた

共用品・共用サービス推進のためのアプローチ〜より多くの人が使いやすい製品・サービス〜(その4最終回)

(その1)(その2)(その3)
(財)共用品推進機構 専務理事 星川安之 氏

新所沢北口にある50軒ほどの商店街のほぼすべての店の入口にスロープがついています。30年ほど前に国立のリハビリテーションセンターがここに移転し,障害のあるお客さんが毎日来るので,それぞれ手づくりをしたり買ってきたりしてスロープをつけたということです。ここの商店街の会長さんはおそば屋さんです。車いす使用の人たちが友だちや家族と来た時に,同じテーブルでなかなか食事ができないことを見ていて,どちらを向いても一緒に食べられるように,テーブルをつくり直しています。車いす使用の人が来ない時は,ここに普通の椅子が置けるような形をとっています。
メニューも,ファミリーレストランではよくあることですが,この店では完全に意図して写真をつけています。

ユニバーサルだとか共用だとかバリアフリーだとかという修飾語がつかないものたちがたくさんあると思います。ゆくゆくはそれが当たり前になり,スーパーやコンビニなどあらゆるところで,ほとんどの人たちが使えるようなものが目指されていけば良いと思います。
まずはどんな人たちがどういう不便さがあるかを知っていただきたいということと,もう一つはコミュニケーションしながら製品やサービスがつくられていくようにあってほしいと願っています。

またすでに標準があるものは使っていくことが早道と思います。ISOの会議に出させていただいて思うところは,出席する前は,理論が積み重なって規格が出てくるのだろうと思っていたのですが現実は少々違っていました。特にヨーロッパはまず規格から固めていこうという作戦のようです。点字ブロックも日本で初めてつくられたものですが,最初に規格が作られたのは日本ではなくオーストラリアで,それをISOに提案したのも日本ではなく,フランスであったと聞いています。日本がつくったものを温めて温めてどこから言われても正しいものにしてから提案するのではなくて,まずは国際的な場で提案する大胆さも必要だと,この3年間で感じております。 自分のところで良いなと思うものはできれば標準化に持ちこむぐらいに思ってもらっても良いのでしょう。その下地はできたと思います。

「ISO/IECガイド71」は大もとの基本規格で,簡単にいえば高齢者・障害者が使えるような製品・サービス,環境をつくるための指針です。その下に「グループ規格」といって,いろいろな規格に共通する部分があります。包装容器や「音の表現」があります。一番下には個別の製品の規格という三層の構造の一番頂点がやっとできたところです。

「ISO/IECガイド71」は大きくは7つの分野に分かれております。

1.情報,表示,注意表示,警告における考慮ポイント
2.包装容器における考慮ポイント
3.素材(材質)における考慮ポイント
4.取り付けにおける考慮ポイント
5.ユーザー・インタフェース(扱い易さ,操作スイッチ,フィードバック)における考慮ポイント
6.整備,保管,廃棄における考慮ポイント
7.構築環境(建物等)における考慮ポイント

情報・表示は,点字や,大きな字,コントラストなど様々な配慮事項があると思います。カタログ1つをとっても,大きな活字,点字,Webサイトなど,様々な試みが個別の段階で行われていて,非常に増えてきています。
包装容器は,点字の併記,触覚情報,文字の大きさ,片手操作,開封性,持ちやすさもその中に入っております。シャンプーも今40社ほどがギザギザをつけています。2001年12月3日からは牛乳パックの一辺に刻みがつきました。家庭用のップの業界は16社が最初から「W」の字を凸表示にしてアルミホイルと区別できるようにしました。ビールも「おさけ」と点字でつけられています。ソニーはカセットテープが何分テープか知らせるために,右下に二等辺三角形の「へこ(凹)」をつけて,12時の方向を指しているテープは120分テープ,6時の方向を指しているものは60分テープというルールをつくっています。

持ちやすさでは,東洋ガラスが今までの厚手の牛乳のびんを薄くして,なおかつ強度を上げたものがあります。箱の開け口の「へこみ」もあります。これらの多くは包装・容器のJISになっています。
いろいろな工業会でも取り組みがあり,日本自動販売機工業会では,バリアフリーの自動販売機に力を入れたいとのことです。日本エレベータ協会は数字の配列が今までまちまちだったのを左,右,左,右という順で統一をして,目の不自由な人にも分かりやすくしました。

このように,決められたことをきちんと消費者に情報として届ける仕組みも考えていきたいと思っています。まずWeb(http://kyoyohin.org)でいろいろな情報をまとめておりますのでご覧下さい。

―― 了 ――

2002/8/22 シンポジウム/迫り来る超高齢化社会とユニバーサルデザイン
共用品・共用サービス推進のためのアプローチ〜より多くの人が使いやすい製品・サービス〜(その4)
(財)共用品推進機構 専務理事 星川安之 氏(文責編集)

2002/10/06 00:00:00


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