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忘れられた? フルデジタル化のメリット

PAGEは1988年に来るべきDTP化のナビゲーションを使命として始まり、1994年頃の日本語DTP・カラーDTPの本格化、1997年頃のプリプレスにおけるDTPの勝利宣言と、ほぼ人々の期待どおりにDTP化が日本に浸透していく時代を経験してきた。この後は印刷物製作工程のフルデジタル化は常識となり、今日ではCTP化が急進展するに至った。それで過去に問題にしていたことは解決したのだろうか?

つまり出力までのフルデジタル化を最優先課題にして、世界のトップクラスのCTP化を実現した日本の印刷業界は、フルデジタル化とともに約束されるはずだったメリットの数々をどこかに置き忘れてきたことを、もう一度振り返って考えるべき時に来ている。DTP化の結果を人々はどう評価しているのだろうか? 一般的にいえば、「設備費の軽減+材料の削減+オペレータ費の削減=値崩れ」という式になっている。その結果、社内でやらない方がマシのDTP、やらない方がマシの印刷となって、グラフィックアーツのビジネスにかける情熱を失うところも少なくない。

電算写植・トータルスキャナが普及しだした10数年前と比べて、コンピュータの性能は1000倍に、価格は1000分の1になった。この効果は社会の隅々に及び、IT化を率先して取り入れたところは競争力を身につけて安値で市場を席巻し、それを追うところはITコストにみあった売上の伸びは得られない、いわゆる「勝ち組み/負け組み」問題を引き起こしているように、ITの本質はそのままでは経済を右肩下がりにするものである。モノ作りをする人が生み出す価値はコストダウンだけではないはずだ。今のDTP化・IT化におけるプロダクティビティには大きな誤解がある。それは需要が伸びつづける大量生産時代のプリダクティビティから何も変わっていないのである。

プロダクティビティ・トラック

もうCTPで材料削減ができなくなるのを契機に、各社は価値的な生産性で競争するフェーズに入るべきである。それでないと今後の経済のグローバル化で海外からの印刷調達がされるようになると生きていけなくなるのは目に見えている。前述の置き忘れたデジタル化のメリットとは、実はかつてはよく語られていた。オープン化、データの再利用、システムの柔軟性、最適化などで、これらの要素を用いて顧客の問題解決を図り、サービスの価値を高めるとか、ミッションを実現するなどである。

PAGE2003コンファレンスのプロダクティビティ・トラックでは、生産性向上のヤリ残した部分の検討と、ITを使った価値的な生産性への展開を大きなテーマとして取り上げたい。このトラックは次のようなキーワードをベースにセッションを組み立てようと考えている。これらの範疇の中で、2〜3年先をターゲットに活動を始めている方々は、ぜひ参画していただきたいと同時に、それぞれの試みをPAGE2003コンファレンスで発表していただきたい。

●プリプレスにおける標準化
  業界内フォーマット、生産管理のIT規格、コラボレーションと標準化

●画像をめぐるコラボレーション(スタジオ・デジカメ〜プルーフ)
  分散(リモート)環境、責任・役割分担、品質をめぐる共通ルール

●ネットワークによるコンカレント作業
  プリプレスワークフローの改革、受発注にまたがった仕組み、新サービス

●デジタルプルーフ
  電子送稿におけるルール、プリンタによるプルーフ、リモートプルーフ

●異作業間のデータ交換
  CIP3/CIP4、JDFのアプリケーション、出力ワークフローと互換性

●品質保証
  印刷のOEM化、標準作業、品質管理

●カラーマネジメント
  ジャパンカラー対応、各カラー装置の標準色管理状況、標準化動向

Call for speaker

前述のように、近未来のビジョンをもって上記に関する取り組みをされていて、PAGE2003において30分ほどのプレゼンテーションが可能な方は2002年11月15日までに、担当の相馬宛に、発表できるテーマについて簡単な内容をお書きの上、メールをお送りください。追って当方から、連絡を申し上げます。

2002/10/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会