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得意先に対する評価を見直していますか

第43回テーマ(2002年10月号)

経営者の考えが社員まで浸透しているか(来期の方針や今後の新製品の開発状況の動きなどの問いに対して,どこまで答えられるか聞きます)? 会社案内の内容について質問した時,社員が明確に答えれるか? 入り口と受付の対応(担当者の予定変更がある時の対応)はどうか? 経営者の考え方・物の見方・習慣・行動が文書に表現できているか? 整理・整頓されているか? 経営者と社員が愛着をもって自社製品に接しているか? 以上のような視点で見ると,その会社の実状が分かると思います。
会社に属している方が,オンリーワンの考え方・行動を取っている,内容・中身が本物である,顧客・当社がお互い共通の問題意識をもち,目標をお互いが共有化し,お互いの課題を克服できる場を作れる得意先は,結果,時間と内容が伴うので良いといえるのではないでしょうか。
危ないと思って受注を控えた得意先はあります。その時,側面調査による情報収集をすれば,うまく断れたとつくづく感じました。しかし,紹介の場合は大変難しい判断を迫られます。
こちらから,情報発信しないと情報は一切入ってこないので,今は経営セミナーなどの開催で,問題意識を当社と共有化できる方と勉強中です。
単純ですが,参加者からありがとうという声を頂いた時,良かったと感じます。
経営者・管理者にとっては,きっかけと機会を提供でき,問題意識が共有化できていることが,われわれの活動の必要性にもつながっています。

(大阪・中川印刷 中川専務)


現在のような厳しい環境のなかで,得意先に対する評価の見直しは必須と考える。得意先の動向,状況が即,売り上げに影響してきているからである。得意先がどのような状況にあるか,どの方向で営業を拡大しようとしているか,そのなかでどのような仕事が発生するかを考え,仕事に対するセールスの比重を検討しなければならない。
もっとも,得意先の仕事が自社に入るかどうかが気になるところではある。もちろん守備範囲は広く取っておいたほうが良いと思うが,現在の厳しい受注環境ではたとえ売り上げを伸ばしても,すべてを外部で生産する仕事では利益は望めない。そのため,自社の設備に合った仕事をもっているか,それが拡大方向にあるか考える。また,自社の設備に合っていない場合でも,メールや物流システムの利用により,セールスの「効率」が図れるかによって得意先の評価を見直す必要を感じている。
このことは,私たちも得意先から見直されていることに外ならないことだと考える。
(東京・匿名希望)


今度の内閣改造で,懸案の不良債権処理の方向性が決まるでしょう。
竹中金融相の誕生はもたもたしていたこの問題の解決を加速させるものです。
つまり,銀行に公的資金を注入してでも不良債権を処理する,ということですから,倒産は間違いなく増加する。とりわけ不良債権の元凶である建設,不動産,流通といった業種は注意が必要です。借金過多の企業は市場から退出願うと閣僚が公言するほどですから,倒産増加を覚悟しての荒療治(ハードランディング)が待っていると思っていいでしょう。
小泉さんは,自民党をぶっ壊す,と言っていました。派閥に一切氣を遣わない,党利党略なし,で組閣に臨んでいます。新しい政治のスタイルを構想しながら,日本の夜明けを願っているようです。
さて,そこで,得意先の見直しは絶対欠かせません。不良債権処理の対象となるような企業につながっていないか,既に銀行が保証付きでなければ貸さない状態になっていないかどうか,得意先の取引銀行自体が危ない状態でないかどうか,などつぶさに観察する必要があります。一つの大型倒産から数十の連鎖倒産が発生するのです。
観察→警戒→縮小→撤退の順に,手順を踏んで自社の債権を保全する。
(田中昌六)


口を開けば値切ることしかしない印刷ブローカーから,「今回は降りるのか?」と言われてしまいました。個人的な感情としては,「やってられない」仕事というのは以前からあったのですが,やはり売り上げを少しでも稼ぐためには1件でも多く受注する習慣が付いていました。
しかし,一昨年辺りから利益の出ていない仕事をどうしていこうかと,営業部門で考えるようになりました。具体的に利益が出ていないかどうかは営業段階ではよくつかめないことと,たとえ利益が少なくても何らかの政策的にするべき仕事もあることで,なかなか行動には移れませんでした。
そこで考えた結果として,受注1点ごとの利益ではなく,利益は仕事のセットで考えてどうなのか,リピートとか今後の拡大の可能性はどうなのか,などを営業責任者が判断してOKしたもの以外は,社内の基準料金以下で無理やりは受注しないことになりました。
こういう方向性が社内で意識されてから,売り上げは若干下がったものの,全社的な利益は随分改善されました。これは冒頭のような仕事を思い切って捨てる決断ができたからです。実際にはまだ「???」な部分は多いのですが,営業が得意先を見る意識というか心理が変わって,少し冷静に得意先情報を集め,部内で客観的に検討する雰囲気が生まれました。
今後社内のIT化で受注分析がリアルタイムで把握できるようになると,さらに利益率の視点から得意先を選別できるようになるでしょうが,切ってばかりはおれないので,こちらから努力して何とかできるかどうかの情報も処理したいものです。
(匿名希望)


印刷業は長年,信用取引に依存してきた。請負産業である以上,今後も信用取引が基本となることは変わらないが,「長年」については疑問符が付く。技術革新・情報化が各段にスピードアップしたことにより,短期に企業が興亡する環境になったからだ。
仲間うちの仕事の外注協力に特化して好業績を上げている二人の印刷経営者から伺った話では,この10年で得意先の半分以上が入れ替わったという。一方,安値受注を減らし,付加価値の高い仕事を選択するには,他社と差別化する能力を自社がもたなければ不可ということも教えられた。
かつて「一業種一社に尽くす」「長期安定取引を結ぶ」は美徳とされたが,いまやその美徳は得意先評価,選別をなおざりにする経営怠慢とさえみなされる,厳しい時代に突入した。
不良債権処理に悩む銀行業界では信用力に応じた貸出先のランク分け戦略が始まっているが,信用力のない貸出先がメーンバンクに泣き付く「メーン寄せ」現象が起きて思惑どおりに進まないでいる。銀行業界の例を他山の石として,自社が生き残るために「得意先評価」を断固として進めなくてはいけないと考える。
(匿名希望)


日常的に一番注意しているのは得意先の経営状態である。同業者の話として,大きい仕事だが安値だから取らないようにして利益面はかえって良くなったといったことも聞くようになった。しかし,いざ自社でもということになるとやはり踏ん切りがつかない。
最近,地方の印刷会社で東京に出てきているところが1000社もあると聞いたが,わが社の得意先はどうなのか? 営業から特に聞いていないが一度調べてみなければと思っている。
(東京・匿名希望)


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2002/11/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会