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平成フォント誕生物語(4)─フォント千夜一夜物語(15)

  「文字フォント開発・普及センター」(以下フォントセンターという)の第2期開発フォントとして「平成丸ゴシック体」を計画した。そしてその制作を(株)写研に委託した。

日本の印刷物制作には明朝体・角ゴシック体だけでは書体バリエーションが不足、とい う開発会員の意見が多かったため、開発委員会で丸ゴシック体の開発を決めた。

ところが、第1期開発の「平成明朝体」と「平成角ゴシック体」は、デザインコンペに より開発委託先が決定されたが、何故か「平成丸ゴシック体」についてはコンペなしで決 められた。

フォントセンター側では、フォント開発に経験豊富な且ハ研を委託先と選び交渉したよ うである。その選択に、何か不純なものを感じた開発委員は少なくなかったようである。

しかし34社の開発会員が参加し1991年3月に開発をスタートした。2年後の1993年に 完成し、「平成丸ゴシック体W4」と名づけられた。

●平成フォントのファミリー化
第1期開発の明朝体と角ゴシック体だけでは、印刷物はもちろんのこと文書処理や情報 処理などにとっても、本文用フォントだけでは不便ということで当然のごとくファミリー 化の需要が高くなっていた。

そこでフォントセンターはファミリーフォントの開発を計画した。当然ファミリー開発 参加者は、別途開発参加費を支払うことになる。

「平成明朝体」のファミリーフォントは、1990年にリヨービイマジクスが制作委託を受け、開発をスタートしているが、角ゴシック体については検討段階であった。

最初に開発した平成明朝体の線幅を「ウエイト3」として、超特太明朝体(ウエイト9 =W9という)を新規デザインすることになった。

そして中間ウエイトのファミリーフォントW4〜W8の6種類は、ウエイト9とウエイト 3をベースにしてコンピュータ処理により作成する。すなわちインターポレーションである。

ファミリーフォントの線幅基準は、ISO(国際標準化機構)のウエイト基準を参考にして、 平成フォントのウエイトガイドラインを作成した。

ISOのウエイト分類はウエイト1〜9までの9種類であるが、平成フォントはウエイト3、 4、5、6、7、8、9の7種類とした。そして中間ウエイトの線率変化はリニアに設定し作成 した。(図参照)。 heiseimintyo

一方「平成角ゴシック体」のファミリー化は、平成明朝体ファミリーの仕様決定後の1990 年後半に開発をスタートした。オリジナルの角ゴシック体のウエイトをW4として、超特太 角ゴシック(ウエイト9=W9)を新規デザインし、インターポレーションによって中間ウ エイトのW8、W7、W6、W5、を作成した。

そして基本ウエイトのW4をベースにW3を作成した。これで明朝体と同じファミリーの W3〜W9までの7種類のウエイトが完成したわけである。

「平成丸ゴシック体」のファミリー化については再三議論がされたが、ファミリーのウ エイト数を明朝体と角ゴシック体と同じにすると、委託先(写研)の開発体制の問題、開 発会員の開発費負担の問題などが要因で、アンケートを実施しても参加希望は少なかった。

その結果、決定まで約1年半のブランクがあったが、結論として最も太いウエイトを開 発することになった。1994年に開発をスタートし、1996年に完了した。その結果W4とW8 の2種類のファミリーフォントのみが完成したことになる(つづく)。

澤田善彦シリーズ>

フォント千夜一夜物語 印刷100年の変革

DTP玉手箱

2002/11/23 00:00:00


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