印刷業界では,紙面制作のデジタル化が完了した今日では,印刷物制作・製造全体を見渡して,各工程にまたがるコントロールの最適化,生産情報伝達の効率化,ボトルネックの排除などによって,顧客の問題解決を図り,サービスの価値を高め,価値的な生産性の向上を図らねばならない。
このためには,各生産機器が関連する工程と作業データの共有・交換が可能なシステムの構築や,ネットワークを介して各生産機器が情報を交換するためのフレームワークが必要となる。そこで,注目を集めているのがXML(eXtensible Markup Language)をベースとしたCIP4/JDF(International Cooperation For Integration of Processes in Prepress, Press and Postpress/Job Definition Format)で,生産機器に実装される段階にきた。印刷のFA(Factory Automation)・CIM(Computer Integrated Manufacturing)化につながる自動ワークフローや,印刷のサプライチェーンマネージメント(SCM)といった目標を,利用者側各社の計画に取り込んで価値的な生産性の向上を競い合う時代に入ろうとしている。
FA・CIM・SCMなどで先行する製造業では,個別企業のサプライチェーンから複数企業連携のサプライチェーンへと進化している。オープン環境での設計から製造・販売の連携を可能とするインターネットや情報連携のための標準化が進められたからである。
12月12日に開催する第29回JAGATトピック技術セミナーでは,製造業における上記のような動向について,サプライチェーンカウンシル日本支部チェアマン,PSLXコンソーシアム理事・運営委員などを務められた北海道大学大学院経済学研究科教授 毛利 峻治氏を特別講演講師としてお招きし,「XMLで実現する製造業での企業間連携」のテーマでお話しいただく。
毛利氏の特別講演予稿の中から,製造業におけるXMLによる標準化動向に関する部分を抜粋し,下記に紹介する。詳細は,特別講演予稿を参照のこと。
企業情報システムを構築するには,基幹システムであるERP(Enterprise Resource Planning)と製造の計画,実行系のSCM,サプライヤ管理のCSM(Component and Supplier Management)あるいはSRM(Supplier Relationship Management)や顧客管理のCRM(Customer Relationship Management)といったシステムを導入する必要がある。
このようなシステム間でのデータの相互利用技術は,今後重要となるものと思われる。入出力のデータ形式そのものを標準化して,ERPデータをその形式に変換して出力することで,別のアプリケーションでも利用可能にするような試みも出てきている。これには,XMLが使用される。XMLでは,データの意味を示すタグが重要である。そのタグの標準化がいろいろな分野で進んでいる。
製造分野の例としては,スケジュール結果のデータを別のガントチャート表示モジュールで表示するといったケースでの受け渡しデータや,スケジューラに対する入力データのタグの標準化が,PSLX(Planning and Scheduling Language on XML)コンソーシアムで行われている。
このような製造業でのいろいろな試みの背景には,政府の「強い製造業復権のためのe-JAPAN構想」があり,IT化なしにはモノ作りは生き残れないという危機感がある。
【特別講演予稿(PDF形式 約200KB)】 「XMLで実現する製造業での企業間連携」
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【トピック技術セミナーの案内】 第29回JAGATトピック技術セミナー
2002/11/28 00:00:00