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各地の声(2002.10)

年初から寄せられた声をまとめて、2002年を振りかえったみた。2002年は、「二極化現象が進み企業間格差は拡大している。特に,小規模企業の落ち込みが激しい」という厳しい業界状況の指摘で始まった。今の業界の低迷は「定常的景気と名づけるべきか」との声は業界共通のものであろう。

それにしても2002年は、より多く、また強い価格低下に関する声が寄せられた。「大手の『一山いくら』」的価格に対しては原価を積み上げた価格では戦いとならず」といった業界内での価格競争から、「各得意先とも販売不振で一段と価格競争が激化」、「クライアントの値下要求が相次ぎその対応に苦慮している」といった得意先からの値下げ要求、「官公庁の入札価格が人件費を無視したようになっている」などの声である。さらに「不良債権が発生し、目下特別利益対策と称し各部署,全社員で対応」あるいは「金融・保険業界の統合合併により受注確保に不安がある」など、デフレ下であらゆるマイナス要因が噴出してきている。

しかし、4月、5月にはやや景況が緩和したようで、「3月〜5月は、受注件数,売上ともに順調であった」、「売上高において、前年同期比が101%と少し上向いている」、「4月に入り急速に受注環境は良くなっている。ただし、より短納期を要求される」といった声が聞かれた。「月次業界動向」では、4月の対前年売上同月比は100.0であった。
しかし、6月には94.9と再び前年を割り込み、夏以降は「印刷業界に身を置いて30数年、ここ2、3ヶ月の急激な売上低下は未だ経験がない激しいもの」、「最近3ヶ月の売上の落ち込みが大きく、資金繰りが窮屈になり夏季賞与も不支給」といった、非常に厳しい状況を訴える声が聞かれた。

そして、「10月から紙の値上げ。売上は維持するのが精一杯。原料値上げは更なる受注難と経営内容の悪化に繋がりかねない」、「9月21日以降紙の値上げがなされる。年間仕入れが3億円弱でその半年分の10%(1500万円の値上げになる。その分は顧客に転嫁できず粗利が減る」というように、印刷用紙値上げが問題となった。
このような中で「大口受注先の印刷会社の仕事が減って受取手形が激減,一方、新規開拓のお客様は振込みが多いので売上は落ちてもキャッシュフローは好転、皮肉な話しだ」といった声もあった。

倒産・廃業の増加、継続的な価格低下、受注量減少、得意先の信用不安、材料費の値上りと悪い材料に事欠かない2002年の印刷業界の中で、「供給過剰の終わりを待つ以外に手はないのだろうか?」といった声もあった。一方、厳しい状況を乗り越えていこうという数多くの声が寄せられた。
「同業他社の倒産による受注増,銀行合併による特需など業界一般とは異なった状況にある。設備投資を控え,キャッシュフロー改善を図り,デジタル基礎投資と社員能力開発に重点をおき,今後の事業方向を考えている」、「企画,情報のプロモーションで広く深く需要を喚起、安定売上を定着させ厳しい環境を打破すべく努力」、「営業効率アップのためにエリアを絞り込んで地場密着にシフトを変更中」、「照準の新規開拓毎に営業の主軸を置く。新工場も完工、CTP導入も決定し役職人事も見直す」、「弊社は新しい他社にないビジネスモデルを提案することで持続的な成長を図っている。業態革新がキーである」、「10ヶ月が過ぎて、売上累計前年度比は87.4%である。今後も肥満体質から筋肉質の企業を目指す。捨てる!、改める!、新しく!の3原則」、「今年度の目標に向って,情熱と確信でチャレンジ」といった声である

いずれにしても、「売上減でも収益は上がり得る。製造業の場合、社内生産が増え外注費が減れば当然改善される。見せかけの儲からない売上増を追っかけるのは、みんなしてやめたい」ものだし、「この時期,経営者としての社会正義と使命を貫き通したい」という正論で、この困難な時期を乗り切っていただきた。

(出典:JAGAT機関誌 「JAGAT info 2002年12月号」)

2002/12/09 00:00:00


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