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試行錯誤のDTPから、IT化が活きるDTPへ

私も日本人だから、グラフィックアーツの表現において外国では気にしないが、日本ではこだわりがある部分がいろいろあることはわかる。それらは微妙な違いのようだが、DTPなどのプログラムをローカライズする際に非常に大きな問題になることがある。元のシステムの考え方がいかに優れていても、「日本じゃ使えない」的な烙印を押されてしまうことがあった。日本にそれに相当するソフトウェアがいっぱい揃っていた時代はそれでもよかったが、情報の世界のグローバライゼーションはどんどん進み、グリーバルなシステムが日本で使いにくいことは、日本のユーザにとっても不利であるようなことも起こっている。

色については、日本の分解カーブといわれるものは墨版をあまり減らさないものであったために、GCRのような極端に墨版の少ない分解は好まれなかった。CEPSからDTPになっても以前と同じような仕上がりの調子を求めたことは自然であるが、技術的には挑戦をしなかったことでもある。GCRにするとロゼット模様が目立つので、欧米ではロゼットの形状議論がいろいろなされたが、日本はGCRはしないのでロゼット議論もあまりなかった。

日本はCMYKのカーブを尊重するあまり、RGBデータのままで出力段階までDTPの制作を進めることには消極的でもあった。RGBに不慣れで対応が遅れたことは、今日ではPDFワークフローをスマートなものにし難いとか、デジタルカメラ入稿の問題としていろいろ折り重なってのしかかっている。

組版では、日本は括弧類や前後の語のつながり関係をあらわす記号などの約物を多用して、文にメリハリをつけることが習慣的にあった。日本で括弧でくくるようなものは、欧米ではイタリックやボールドやフォントの選択ということでメリハリをつける。またつなぎ記号などは欧米のものは厳格にルールがあるが、日本では見てくれだけで使うこともある。要するに日本は約物の使い方は不徹底な傾向にあり、利用形態が多様で、しかも自動チェックも行い難い。

また全角や半角スペースを多用して文字の並びを揃えようという、活字から日本語ワープロを経て伝わっている方法がDTPでも根強く残っていて、これがやり難いからDTPは嫌いという人もいる。名簿の組版のような日本固有のそろえ方もあり、Tabやspaceのシンプルな欧文とは組版仕様がかなり異なる。

これらを反映して日本語化したDTPは仕様が複雑になると同時に、組版されたデータは紙面からは見えない下のレベルで小細工の塊になることがあり、同じような見栄えでもPostScriptなどPDLに吐き出すとクセのあるものになりがちである。これはPDFにもっていった時にも余計なものを引きずっている可能性があり、PDFデータの信頼性を下げてしまうかもしれない。組版の自動化やPDFワークフローの活用を前提にすると、綺麗な組版済データを作る組版仕様や組版フロントエンドというところにまで遡って考え直さなければならない。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 197号より

2003/01/20 00:00:00


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