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Macの復権と今後の課題

DTPのプラットフォームとしてのMacはいまだ強力で,他のパソコンに浮気した後,Mac復帰というユーザもいる。Macは,ハードウェアとOSとMac用アプリケーションの3点セットで考えなければならないが,これらの要素の強弱は必ずしもバランスしていないと思う。DTPというのは近年あまり大きな変化が無いので,主にハードウェアの進歩が今日のMacを魅力的なものにしている。しかし今後DTPのユーザが何か別の進歩を望むと,OSやアプリケーションの進歩がもっとクリチカルになるだろう。

Macのハードウェアの進歩の要因は2つあり,ひとつはCPUであるモトロラのPowerPC,もうひとつは他の部品類である。このうち宣伝ではPowerPCの能力が過大視されているようだが,実際はMacもIBMのPC系に開発された部品や技術を大胆に使うようになって,安く性能のよいものとなったのである。しかしこの要因だけだとPC系を追いぬくことはできない。先の手を見せないところも少し不安材料である。

PowerPCは、RISCの元祖でもあるIBMの開発に、モトロラとAppleの開発を継ぎ足したものがMac用CPUである。思い出せばずっとMacが使ってきて共に発展してきた68000系のCPUだが,モトロラが68040で開発を打ち切り,将来のCPUを絶たれたことがAppleをIBMに近づけることとなった。この後のロードマップの大混乱というしこりはまだ残っている。

Appleが最初からRISCのCPUを希望したわけでもなく,対インテル連合的な色彩が強かった。この結果はOSから何から何までの開発項目がてんこ盛りんになり,IBMもAppleも舵が思うようにとれずにAppleがガタガタになってしまった。この時SteveJobsはすでにAppleを去ってNeXTにいたが,やはり68000系を使っていたために,CPUをインテル系に切り替えつつあった。しかしNeXTもビジネスはうまくゆかなかった。

SteveJobsがAppleへ復帰するとこれらのゴタゴタを清算し,Appleは企業コンセプトを明確にして製品を最小限に絞った効率化や,流通チャンネルのコントロールも強くし,運営上も在庫を圧縮して経営を建て直した。Appleはオープン化で生き返り,ここ2〜3年は編集レイアウトに関してはMacのDTPは安泰であろう。

ところがPowerPCに関してはJobsも手をつけていない。PowerPCはMac用カスタムCPUではないので,今後モトロラ依存で何が起こるのか不安である。SteveJobsはG4がPentium!!!の3倍速いとしてファンを湧かせたが,これはJobs人気に上乗せした演出であり,ほとんど素人にしか通用しない。G4ではモトロラがAltivecという機構を組み込み,一度に多くの画像処理ができるが,この機構を活用するには特別なプログラムが必要となる。G4Macには標準でPhotoshop用のプラグインが添付されるが,Altivecを意識しないソフトではAltivecの効果はない。

Pentiumのmmxが活用されていないように、汎用であるべきCPUに特定用途を想定した専用回路を組込むこと自体が矛盾をはらむ。mmxも3DNow!もAltivecも一時的に効果はあっても,次の世代のCPU開発にとって古いCPUとの互換性という重荷を負うかもしれない。モトロラの主業務は通信であり,Altivecは通信制御用に使うつもりであったろう。今は両者の思惑が一致しているが,次世代CPUを考えると,もともとの狙いが異なるAppleとの蜜月がいつまで続くかも少し不安である。

今までのグラフィック需要がパソコンを引っ張っていた時代から、近いうちに通信環境の要望が開発を引っ張る時代になり、そこではパソコンやCPUの勢力地図は塗り替えられるかもしれない。デスクトップ機やサーバは64bitになり、32bitCPUは通信や組み込み用に分かれて行くときに、モトロラはどこに重点を置くのだろうか? 次世代の強力なデスクトップ用CPUとしては、intelの主導性も保証されているわけでもなく、今は全く先が見えない時である。

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1999/11/09 00:00:00


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