印刷ビジネスも「環境」がキーワード
近年,社会的にさまざまな形で環境問題がクローズアップされ,環境問題意識が高まっている。企業の環境に対する取り組みも注目を集め,企業経営にも影響を与えるようになってきた。
印刷業界でも,顧客の環境問題への取り組みにより,再生紙,非木材パルプ,大豆インクなど,環境への負荷を少なくした素材の使用が求められる場合も出てきた。
今回は,利根川印刷の大豆インキ使用の事例を紹介する。(プリンターズサークル11月号特別企画記事より)
大豆インキを全面的に採用
環境対応の企業姿勢をアピール
利根川印刷株式会社
東京の利根川印刷では,今年5月より使用インキを全面的に大豆油インキに切り替えた。
同社では,利根川英二専務が5年ほど前から大豆油インキに注目していたが,当時は乾きにくいといったことや品質,商品構成などの面で満足のいく製品がなく,採用することはなかった。しかし,昨年インキメーカーから大豆油インキを紹介された印刷部が,環境面からの顧客貢献と営業バックアップのツールとして,今年2月に大豆油インキの採用を社長に提案した。
大豆油インキとは,印刷用インキに含まれる石油系溶剤に代えて大豆油を使用したものである。従って,地下資源保護につながるほか,一般の印刷用インキに比べて,大気汚染の原因のひとつであるVOC(揮発性有機化合物)の発生が少なく,産業廃棄物の処理にも貢献できる。
また,紙と分離しやすいため,用紙からインキを落とす脱墨性に優れており,印刷用紙のリサイクルにも適している。このように,大豆油インキは環境保全・環境保護に役立つという利点がある。
営業ツールとしても大きな効果
大豆油インキの採用で,社内の意識も変化した。印刷部門では,自分たちの提案が受け入れられ顧客の反応も良いことから,非常に自信をもつようになった。
また,今年の新人に研修の一貫として新規開拓を課したが,先述のPRパンフレットは,営業ツールとしてかなりの威力を発揮し,新規受注にもつながったという。
「お客様のなかには大豆油インキの存在を知らなかった会社もあり,興味をもって話を聞いてもらえます。また,従来のお客様のなかにも,積極的に大豆油インキを使用した印刷物にシフトしていきたいという会社もあります。数字としてはまだわかりませんが,営業ツールとして大きな効果を上げていると思います」(利根川英二専務)
このほか,同社では大豆油インキへの全面切り替えに伴い,協力印刷会社にも大豆油インキを使用してもらえるように,協業のネットワーク作りを始める予定である。大豆油インキの切り替えを契機に,環境対策が確実に進展しているようである。
これらの活動を踏まえ,同社では今後の環境対応策として,まだ懸案事項であるが,2000年中にはISO14000の認証も取得する方向で考慮中である。
(詳しい内容はプリンターズサークル11月号の記事をご覧ください)
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1999/11/06 00:00:00