日本イーラーニングコンソーシアム会長
NTTラーニングシステムズ株式会社
マルチメディアラーニング事業部
企画調査室長小松秀圀氏
昨年の2002年7月24日に3日間eラーニングワールドが開かれ,前回の倍近い25000人が訪れた。この1、2年でeラーニングという言葉が聞かれるようになり、急速に浮上し、話題にはなっているがビジネスはこれからである。
eラーニングは、基本的には会社や学校の中のパソコンにネットワークで教材を配り各自が独自に勉強する。eラーニングシステムにはオーサリングシステムという教材を作る機能があり、作られた教材をサーバが管理し、各自が勉強する。
しかし、現実問題、教材があっても勉強するとは限らない。そのため勉強していく様子を見ているメンターという人がいる。コンピュータにアクセスしている状況等を見ながら後押して学習を進めていく。質問があればコーチングする人がいて、教材の範囲ならメールで教えていく。このような人間による後押しがあり機能が動いている。
コンピュータと人間がそれぞれできることをやる。当初は企業の中、学校の中の閉じられたものであった。ここ1、2年、特に日本ではADSLでブロードバンドが急速に普及した。CATVを含めると約700万所帯が接続している。そのため1つのコンピュータに2人が使える環境なら千数百万人が今インターネットを通じて勉強ができる環境にあり、ここが一番注目されているところである。
ブラウザがあればコンピュータの画面で勉強することができる。最近では帯域が太くなったので、教材の画面にストーリ−ミングビデオを利用するのが多くなってきている。ストーリ−ミングビデオを使った画面は音声が出て、画面が動いている。画面には常に目次があり、大体5分から10分くらいで切ってある。タイトルがついているので、教材を頭から見ていく必要はなく、自分に必要なところだけ勉強する使い方ができる。これが実用上非常に便利だと言われている。会社の方針とか、新製品情報などをどんどん勉強することができる。
インターネットを使った放送型のeラーニングもある。インターネットを通じて、話している内容を世界中どこでも受けることができ、同期型のeラーニングと言っている。これはインターネットで音声と画像を見せることができ、かつ双方向でやりとりすることができる。実際やってみると、受講者200人くらいまでなら、話をしている人が見えて音声が出てきて資料が出てくる形で勉強することができる。同期型eラーニングは非常に注目されている。
eラーニングの業態
eラーニングが立ち上がったときの市場は、プラットフォーム、いわゆるコンピュータシステムの会社がシステムを売ろうとして始まった。これは5、6年前から始まっているが、システムが入っても、コンテンツがなければ勉強できないので、コンテンツ市場が立ち上がってきた。
日本ではリクルートなど大きな会社がコンテンツの市場に参入してきた。印刷業界でも、本を編集する技術を生かし、印刷からマルチメディアに移り、マルチメディアからeラーニングとかインターネットコンテンツへ視点を広げている会社が多い。
その次に出てくる業態は、eラーニングで勉強するときにメンタリングしたりコーチングしたりするサービスである。それは勉強する団体や目的によって独特な味を出すことができるので、これによる業態が出てくる。
プラットフォーム、コンテンツ、サービスの次は,その結果を管理するLMS(ラーニング・マネジメント・システム)がある。お金をかけて勉強させるので、その結果、企業にどう役だったのか、誰がどのくらいの能力があるなどを調べるシステムである。そういうシステムができた後は、1つの会社ですべての仕事、コンサルティングからシステム構築、コンテンツ開発、サービス、LMSまで全部を引き受けるところが出てくる。これをシステムインテグレーションと言う。
業態としては、プラットフォーム、コンテンツ、サービス、LMS、システムインテグレーションと発展していく。今日本はビジネスのフェーズとしては、コンテンツの時代で、一番会社の数が増え始めている。その次は教育の質の競争に入っていく。
プラットフォームでは、eラーニングの基本的な仕組みそのものを売っていく。日本では富士通が出しているIntenet Navigwareが一番売れている。最近はアメリカからSaba、Docent、Click2Learnというアメリカ型のプラットフォームが出てきている。アメリカはeラーニングにおいては日本より先へ行っているので、最新の考え方、最新のテクノロジーを搭載してきている。
プラットフォームやコンピュータシステムを買うことになると、大きなお金が動く。会社を説得するのも大変なので、最近ではアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)によるプラットフォームが出てきている。サーバそのものは提供会社が持っていて、顧客は使った分だけ、コンテンツを見た分だけお金を払う契約である。
自分でシステムを持つと保守が必要になるし、コンテンツを買ったら古くなるので入れ替えなければいけない。このため担当者は結構大変である。ASPはこれを全部代わりに行うサービスである。当初は中型もしくは小型の企業を対象に始めたが、大企業も教育部門などが、ASPサービスを使うところもある。ただし、一種のレンタルサービスなので、多少割高になるところもある。
会社によっては、新入社員の教育を全部eラーニングで行うため、10月から4月まで契約して、新入社員が育ったらまた解約する使い方もある。ASPならそういう使い方もできる。
eラーニング市場
アメリカのeラーニング市場は大体5000億円で、年率約2割伸びているといわれる。日本では,株式会社富士経済が出した調査レポートが一番妥当な数字をだしていると思われる。2002年の日本のeラーニング市場は430億円で、2003年には約1135億円になるという。成長前期の段階で、これから成長期に入る。この不景気な時代で市場規模がこれだけ伸びれば、いいところだろう。
日本の導入状況については,製薬会社が多く導入しておりユーザ事例などの発表もよく出ている。ファイザー製薬などが有名である。また,あとはキヤノンなどの精密機器、NTTなどの情報・通信の分野が進んでいる。教育を事業としている企業は、集合教育や紙の通信教育をeラーニングに変わりつつある。
アメリカでは銀行などが非常に進んでいるが、日本の銀行はなかなか話に出てこない。やや進んでいるのは、三洋電機や松下電器などの電気機器、UFJなどの金融機関などがある。ビルシステムには、三菱ビルメンテナンスなどのビルメンテナンス技術をeラーニングで教育している。人材派遣でも少しずつeラーニングは進んでいる。派遣する人のスキルが上がれば単価が上がるからである。
今後は,住宅、化学、自動車、官公庁、高等教育機関の導入が進むだろう。官公庁は入札の最中であるし,総務庁や経済産業省,IPAも次々にeラーニング関連の入札をしている。eラーニングにとってはこれからの市場である。
教材コンテンツビジネス
XMLのビジネスはなかなか立ち上がらないようだが、重要なテクノロジーである。特にEPSS(Electronic Performance Support Systems)は、実務に貢献するeラーニングの必要性が認識されたときには極めて重要なテクノロジーだろう。XMLを使えばあらゆるドキュメントがそのままeラーニングに取り入れやすくなり、ドキュメントを持っていれば、それがどんどんスキル管理に昇華していく。その考え方がEPSSという1つのシステムを組むのに非常にやりやすくなるので、XMLには注目している。
ブロードバンドビジネスのキラーコンテンツは教育だと言われている。そう大きなビジネスになるかどうかは別として、例えばEZプレゼンテーターという商品がある。先生が話をしている。それに対してデータがある。それをデジタルカメラで撮ってコンピュータで処理すると、話し終わったときには教材ができてしまう。もしくは、これをこのまま放送するシステムもできる。コンテンツを作るために、ほとんどお金がかからない。これはユーザには非常に有利だが、ビジネスではあまりお金にならない。
ALICとeLC
日本には先進学習基盤協議会(AILC)と日本イーラーニングコンソーシアム(eLC)というeラーニングの団体がある。経済産業省が主導しているのが先進学習基盤協議会である。ここには相互運用性部会という標準化を推進する部会がある。次世代研究部会は協調学習を研究しているグループである。またコンテンツ部会はeラーニング導入促進のために何をしたらいいのかを実態を調査したり、eラーニングの品質とは何かを策定したりということについて、200人くらいがかかわっている。
NPO法人の日本イーラーニングコンソーシアムは,会社数は約80社で、eラーニング普及のための標準化の推進や教育、eラーニングの啓蒙、海外のeラーニング関連機関の情報交流や関連ビジネスを行っている。その中に相互運用性委員会がある。先ほどのALICと似ているが、eラーニングの標準化推進をやっている。標準化により,作成したコンテンツが、どの会社のどのプラットフォームでも合うことができるように,いろいろ取り組みをしている。
日本イーラーニングコンソーシアムは月例会を行っていて、業界の情報や新しいテクノロジーの情報をどんどん提供している。
職場の中で勉強するのはなかなか難しい。アメリカでも、職場の中で勉強するのは大変である。しかし、eラーニングは今後の社会では企業生き残りのために重要なツールとなるものなので、地道な努力を重ねてeラーニングの良さを生かしていく社会にならなければならない。
2002年8月20日(火)通信&メディア研究会主催拡大ミーティング「eラーニング最前線」より抜粋(文責編集)
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2003/01/30 00:00:00