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DTPの次世代システムを垣間見る

PAGE88が始まった時点では、まだ日本には殆どDTPはなく、安価(1000万円とか)で600dpiの普通紙版下が出力できる電子組版機なるものと、億の単位のCEPSが羽振りを利かせていた。それらはそのうち全て何十万円のDTPに吸収されて、経産省の統計からも消えてしまった。その代わりに何が使われだしたのかは、実は統計上はわからない。どこでも同じようなシステムを使う時代は過ぎたのである。

いや、正確にいうとDTPの定番ソフトのようなものは一般化したが、デジタル化はそれだけにとどまらず、データ管理ツール、作業管理ツール、コラボレーションツールなど、その仕事固有・その会社固有のソリューションとか最適化に向かいだしたからである。DTPに最も近いところでは、本当はPDF関係のソフトがいろいろあって、それらがローカライズされてもいいはずだが、これはなかなか進んでいない。Unicode時代になったとはいえ、やはり日本語フォントの問題というのはなくなってはいない。(参考:試行錯誤のDTPから、IT化が活きるDTPへ)。

PDF関連開発はAdobeのフォントエンベッドの壁が立ちはだかっているが、それ以外のところは毎年見るべきものがどんどん増えていて、これからDTP環境が大きく変わりそうな気配がある。PAGE2003では、特にXML関係の新製品が目立つが、それらについてはXML publishing ZONEを参考にされたい。今までお目にかかったことがないものがいくつも出品される。XMLの応用面はこのZONEのプレゼンテーションや、ジョイントイベント2月5日「これからのXMLパブリッシング」で、ネクストソリューション(株)と(株)モリサワのセミナーが行われる。

また従来から気になっていた新技術の新たな動向がうかがえるものもある。昨年にOneToOneのシステムのコンセプトがコンファレンスで話された内容が、今年はMac OS X DTPソリューションZONEで、2月5日(水)にサカタインクスから、「Personal EffectによるOne to Oneマーケティングソリューション」として話される。管理系では、昨年はプラネットコンピュータが出していたのと似たリモート校正のグループウェア的なシステムが、MIS/CIM ZONE内の大日本印刷から、実稼動に即した形でデモされる。ホリゾンの製本システムも、今年はCIP4の考え方をベースに先行的に取り組んだ「i2iシステム」として出る。これらから時代が動いていることが実感できるだろう。

DTPソフト関係は近年シンプルのXML Automagicが独走状態で、他になかなか動きがなかったが、Mac OS X DTPソリューションZONE ではInDesign関係の事例が一挙に増えたことと、XML対応が始まったQuark5.0やEDIAN WINGなどは押さえておきたい。そしてMac OS Xといえば、「あれは、どうなった?」のシステムが、XML publishing ZONEの(株)デジタルコミュニケーションズから展示される。なにしろ「あれ」は、Mac OS Xが出る前からMac OS Xに対応していたのだから、本当ならもっと話題になっていてもいいはずのものであった。「あれ」とは韓国Softmagic社のProject-Mのことである。Mはマガジンを指し、雑誌の出版システムのことである。その前に新聞システムがあり、それは日本では(株)ビー・ユー・ジーが扱おうとしていた。

つまり新聞で蓄積した、記事・写真・広告原稿の管理、レイアウト、制作進行管理などのさまざまな業務を、ネットワークで分散して、しかも素材はデータベースで一元管理しながらすすめられる統合システムをベースに、雑誌の制作管理およびWebなどマルチメディアコンテンツ制作に活用するものであろう。 MacworldTokyo2001では大物ソフトの登場として一部には騒がれたものである。

実はこの種のソフトは海外の大手出版社にいけば何らかのものが使われていて、やはりQuarkのQPSが最もハバをきかせている分野である。新聞は新聞で欧米には数多くの同種のシステムがあるが非常に高価である。日本の出版界にこの種のシステムが殆どないのは、出版社はプロダクションや印刷会社に「号令」をかければ事足れリになっていて、自分でデータの流れをリアルタイムに管理する必要性を感じていないからである。しかしCTPやネットワーク利用が当たり前になると、残る競争は校正の「行きつ、戻りつ」の時間短縮をせざるを得なくなって、結局は自分で最短システムを作ることになるだろう。

その意味でProject-Mなどをよく理解しておくことが必要になる。Project-Mの元システムはNeXT上に作られたものであることからも、歴史が古いことと、なぜMac OS Xの最初の出版ソフトになったのかが理解できよう。他にも、DTPの歴史を噛み締めつつ、来るべきシステムについて想像力をかきたてられるような展示がいろいろあって、書ききれない。小さいブースでも大きな発見! というのがPAGE2003のもうひとつの面である。

2003/02/04 00:00:00


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