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中国におけるCTPの現状と展望

■ASIA FORUM
第6回シンガポールFAGAT(2002年)
中国講演レポート

February 10, 2003

中国印刷技術協会理事長・ 武文祥氏
北京印刷学院副院長・ 蒲嘉陵氏

1. 中国におけるCTPの認識状況は?  2. CTPは中国において成長しているか?
3. CTPは中国で順調に推移しているか?  4. 印刷業界の最大の懸念点は何か?
5. 最近の動向  6. 今後の展望

DRUPA95以来、CTPは国内および国際的な全ての産業展示会において注目を浴びるテーマであった。CTPは、間違いなくグラフィックアート技術発展の本流であり、全ての分野で支配的な存在となることは疑いの余地がない。CTPは、CTPlate、CTPress、CTProofおよびCTPaperなど様々な分野を含む広い概念である。中でも、CTPlateはプリプレス技術の発展の最終的な姿と考えられ、プリプレスにおける現在の主流であるCTFilmに対する大いなる挑戦でもある。印刷業界は、CTFilmからCTPlateへ移行しつつある。15万の印刷会社が登録されている業界規模と経済力の急速な成長を考えれば、中国は巨大な市場に成長する可能性があり、CTPlateに対する需要も急増している。本論文では、中国におけるCTPlateの現状と今後の展望に光を当てるが、特に断らない限り、CTPlateとCTfilmをそれぞれCTP、CTFと呼ぶことにする。

1. 中国におけるCTPの認識状況は?

 業界団体、CTPサプライヤーおよび専門雑誌の多大な努力のお陰で、地域産業は業界の展示会、セミナーおよびワークショップを通じて情報や知識に効率的にアクセスできるようになり、CTPの発展と歩調を合わせて進んでいる。1995年にはCTPの概念に話題が集中していたが、2000年になると、CTPに収益性を持たせるにはどうすれば良いかが議論されるようになった。従来のCTFに対するCTPの優位性が業界全体で広く認識され、受け入れられている。人々は、CTPがプリプレスの将来の姿であることを確信している。
DRUPA'95および2000は、中国におけるCTPの発展に大きな影響を与えた。1996年、すなわちDRUPA'95の僅か1年後には、Optronics社が中国に初めてプレートセッタを納入して地域の出版社に設置した。DRUPA2000の僅か1年後の2001年までに、中国で60台のプレートセッタが設置された。しかし、これは全世界に1万台以上の設置事例があることに比べれば、ごく一部に過ぎない。

これまでは、イメージング・マシンとプレートの値段が高すぎることに対する苦情があった。高価なことで生産費が高くなり、投資回収効果が遅れてしまう。価格の他に、人々を混乱させて戸惑わせる原因となったのは、イメージングとプレート・モードとして発表され提供される技術の数が非常に多いことである。熱レーザー・イメージングは最も優れているとされてきたが、新たに台頭しつつあるUVレーザー・イメージングの脅威に直面している。その一方で、CTcPは従来のPSプレート(ピーエス版)をイメージングすると言う魅力的な将来像により、存在感が強まっている。イメージング・メディアは、更に複雑である。熱的な処理に対しては、予熱タイプ、非予熱タイプ、熱除去(ablation)タイプ、および相変化プロセス・タイプがある。不可能ではないにしても、地域の印刷会社にとって、急速に変貌する技術においてどのモードのイメージングとプレートが生き残って長期的な資本回収効果をもたらすかを見極めることは容易でない。このように変化が激しく不確実な時代には、様子を見ることが安全策である。
更に、デジタル環境が不十分だったり、適切で効果的なマネージメントが欠如していることが問題にされるべきであるが、このような側面は無視されたり、実質的な関係がないと見なされてしまっている。非常に多くの人達が、業界のリーダー達ですら、CTPが完全に威力を発揮するためにこれらの二つの条件が如何に重要であるかを真に理解しておらず、プレートセッタとプレートがCTPソリューションにとっての全てであると単純に考えている。

2. CTPは中国において成長しているか?

 この質問に対する答はイエスである。DRUPA95以来の中国におけるプレートセッタ設置の伸びを示す図表を見てみよう。1995年以前には設置例がなかった。1996年にOptronicsがプレートセッタを中国に持ち込み、地域の出版社に設置した。データが欠落しているので、1997年から1999年までの設置例は知られていない。2000年に設置されたのは23台以上と見積もられ、以前と比べて大幅な伸びである。そして、DRUPA2000はこの伸びにおいて重要な役割を果たしたと思われる。調査1]は、2001年9月までの全設置台数が61台であることと、その半数以上が2001年の最初の9ヶ月に設置されたことを示している。継続調査2]が半年後の2002年3月に実施され、全設置台数が85台に増えていることが判明した。これは6ヶ月間に40%近く増えたことを意味している。この傾向に基づいて、今年末までに更に30台が設置されると予想され、設置総数は100台を超えることになろう。
 この調査が行われる前は、新聞印刷がCTP導入の主体であると考えられていた。その理由は、新聞印刷業界が伝統的に財務状況が良好で、所要時間短縮要求が高く、デジタル環境が比較的整っているからである。しかし、この調査の結果では、この期待に反して、商業印刷部門における設置台数が2001年9月までに41台(全体の67%に相当)、2000年3月までに63台(全体の74%に相当)であった。これらの数字は、商業印刷がCTPの主要市場であったことと、今後も主要市場であることを示している。
 AgfaのPolarisプレートセッタは銀プレートとの組み合わせにおいて大好評を博し、出力速度が速いことから新聞印刷において高い市場占有率を獲得した。そしてCreoは商業印刷において極めて強く、LotemとTrendsetterはKPGの熱プレートとの組み合わせると非常に競争力がある。Creo、AgfaおよびHeidelbergが上位3社で、市場占有率は2 /3を超えている。広州、上海および北京は、現在CTP出荷の主要な目的地である。中でも、新洲・広州は35台設置でトップであり、2001年9月までの国内全体の総設置台数の57%に相当する。上海地域が12%、北京が8%でこの3地域で約8割を占めている(これらはいずれも経済特区)。
サプライヤー
:商業印刷→クレオ、アグファ、ハイデルの3社
:新聞印刷→アグファがメイン
CTPの急速な普及により中国の印刷はどのようになるのかというと、一方順調にCTPが定着していない面があるのも事実である。うまく稼動しておらず遊んでいるものも少なくない。

そこで中国での問題点を整理してみると、
1. 中国にとってCTPプレートあるいはプレートセッタが高すぎる。
* プレートは従来のPSプレートに対して2-3倍高い。
* セッターは10万ドルから4,50万ドルで推移しており、高価です。
2. デジタル環境が充分に普及していません。
3. フルデジタルでのマネジメント能力がない。
4. デジタル校正という概念が普及していない。得意先にデジタル校正の重要性ややり方にに慣れてもらう。
5. 統合型の生産手段が確立されていない。

これらから中国の動向をまとめてみると、
・ 商業印刷がCTPを導入する主要な分野
・ サーマルプレートが商業印刷分野では一般的
・ 2000年以降がCTP導入の第二段階に入り急進している
・ CTP導入の障害は高価ですこと

3. CTPは中国で順調に推移しているか?

 しかし、この急成長とは裏腹に、CTPは中国ではうまく機能しておらず、平均してその容量の半分が遊休状態である。極端としては、深洲市の合弁企業が早い時期にプレートセッタを購入したが、訪問者があるときに展示された以外は、生産には使用されなかったという事例がある。機械とともに搬入された1000枚のプレート設置時のテスト用に100枚だけが使用され、残りの900枚は期限切れまで在庫のままであった。
 この現象を説明するために、幾つか理由が挙げられている。中でも、イメージング・マシンとプレートの高価格が第一の理由である。プレートセッタの市場価格は10万米ドルと50万米ドルの間にあり、プレートの市場価格は平米あたり100RMB(12米ドル相当)で、従来にPSプレートより2倍ないし3倍高い。高価なプレートを供給する必要のある高額なプレートセッタに印刷会社が大々的な投資を行う一方で、CTPと組み合わせた露出フレーム(exposure frame)が廉価なフィルムやPSプレートで十分に機能している状況は正当化できない。更に、ビジネスの展開という観点からは、CTFをCTPで置き換えねばならないという市場ニーズはない。 デジタル環境と効果的なマネージメントが欠如していることも、障害となっている。CTP生産では、プレートを処理する前段階は全てがデジタルであり、視覚的あるいは機器によるチェックを提供する中間の物理的メディアがもはや存在しない。このことは、新しいマネージメント方法と管理、デジタルのワークフローとマネージメント、および校正の新しい方法が必要であることを意味している。これらの事柄は、従来の印刷会社にとって新しくて対応が難しく、新しい知識と専門性が要求される。
 生産統合の程度もまた、CTP生産を成功させる上で無視できない要素である。プレート作成時間が分単位まで大幅に短縮されるので、準備期間を以前ほど長くすることはできない。このために、生産の全ステップを途切れのないネットワークに統合する必要があり、オペレーションのデジタル情報、パラメータ設定、制御コマンドおよび一連のフィードバックが、人的な介入なしに共有され、自動的に分析・実施されなければならない。急速な進展があるとは言え、印刷業界の現状は、この統合水準からは遥かに遅れている。

4. 印刷業界の最大の懸念点は何か?

−CTP導入への関心事(アンケート調査)−
*CTP導入で一番気になる(不安)こと
@投資効果があるかどうか(64%以上)
                   Aどういうタイプのプレートを導入するか(12%)
                   BCTP技術自体への不安(11%)
*CTPを拡大する上で何が障害になるか→@プレートセータとプレート自体が高すぎる(34%)
A CTP技術が未熟(16%)
B 資金不足(15%)
C CTPのサプライヤーが十分でない(10%)
*CTP導入のタイミングについて→価格が十分に下がれば導入する(36%)
A CTP技術が成熟するまでは待つ(31%)
B 地域のサプライヤーが整えば導入する(23%)
C 国内産が生産されればCTPを購入(5%)

5. 最近の動向

 これらの懸念に呼応するかのように、この数年間に以下の幾つかの動きが見られる。  Beida Huatong Hi-Tech Co. Ltdという地域合弁事業が、中央政府の資金援助と北京大学の技術的な支援のもとで、BH-3000プレートセッタの最初のバージョンを立ち上げた。旧世代のBH-3000は、緑レーザーまたは赤レーザーを備えており、3種類のソリューション、すなわち、1024、1540および2794dpiを提供し、銀プレートのイメージング用に設計された。最新世代は、最小スポット径が10ミクロンでマルチビーム・スキャンの可能な熱レーザー・ヘッドを搭載していると言われている。この会社は、同社製品の価格が海外企業の提供する類似製品の僅か1/3ないし1/2であると述べている。これは、大多数の地域印刷会社にとっては非常に魅力的である。Founderは、イメージング・マシンやワークフローを含むCTPの総合システムを統合し供給している別の企業である。システムはOEMベースで生産され、機械を輸入して、ワークフローはFounderが開発した。これまでに、約10台のシステムが、国内全体に設置されている。
 非常に多くの機関や企業がCTPプレート開発に携わっていると考えられる。熱レーザー・イメージング・プレートおよび紫レーザー・イメージング・プレートが二つの主要な方向である。幾つかの機関や企業が製品を発表しつつあり、量産に入っている所もある。Nanyang No.2 Fim Factoryは、2001年に中国最大の国際グラフィックアート見本市であるChinaPrint'01において、第1世代の熱CTPプレートを発表した。このプレートは、830nmの高出力レーザー光に対して敏感で、プロセシングの前に予熱が必要であった。この会社は同社の熱CTPプレートのアップグレードを強力に進めており、現像(development)の前に予熱を必要としない第2世代をリリースするであろう。この会社は、プロセシングのない熱プレート(プロセスレス・プレート)およびUV-LDイメージング(400−410nm)用のUV感光性ポリマーCTPプレートの開発に関する基礎検討を終了したと伝えられている。
中国印刷技術学会は、フジフィルムと合弁事業を設立したが、この合弁事業は2003年または2004年に中国国内でCTPプレートの生産開始を計画している。Agfaもまた、同社のCTP生産を江蘇省の舞錫に上陸させると報道されているが、具体的な日程は明らかになっていない。KPGは駐在員事務所を独立した会社に昇格させ、この夏に天津において最初のCTP生産工場の建設に着手した。工場建設は、今年末までに終了し、生産開始は来年3月に予定されている。

6. 今後の展望

印刷業界は、CTPが最終的にプリプレス生産で支配的になることを確信しているが、CTPの普及が何時頃になりそうか考えている。これは回答が難しい質問であり、どんな予想にも危険で伴う。しかし、プレートセッタとプレートの価格が手の届く水準に下がってデジタル環境が改善されれば、CTPが普及することは間違いない。国内で生産されたプレートセッタは海外生産製品ほど競争力がないかも知れないが、Creo、Agfaなどの企業がCTP組立ラインを中国に移転するか、自社の技術を中国企業に輸出すれば、状況は変化する。地域生産プレートが入手できるようになれば、プレートセッタの購買意欲が刺激され、中国におけるCTPの普及に飛躍をもたらすであろう。

 現在、北京大学との合弁企業でBeida Huatong Hi-Tech Co.Ltdという企業が、独自のプレートセッタの研究を進めている。海外メーカーは中国国内へ生産拠点を移すと考えられ,またプレートやプレートセッタが中国国内で生産されることは価格の変化に期待ができるということである.プレートについても多くの動きがみられる.中国最大のプレートメーカーはNanyang No.2 Film Factoryで2001年の中国国際グラフィック展において第一世代のサーマル方式のCTPプレートを発表した。この企業は、UV-LDイメージングによるUV感光性ポリマーCTPプレートの開発に関する基礎検討を終えたとの情報もある。
 また中国印刷技術学会は、富士フィルムとの合弁によって2003から2004年に中国国内でCTPプレートの生産を計画している。アグファ社もCTP生産を江蘇省・無錫で行うと報道もあり,KPBも駐在員事務所を会社に昇格させ、天津でCTP生産工場の建設を始めた。

中国でもCEPSは死滅しつつあり,プリプレスではDTP-CTPは明らかな流れとなっている. このCTPがCTFのように釣鐘状にあり時期をピークに下がっていく形になるのか、常にある一定の拡大を続けるS字型になるのかまだ検討はつかないが,CTFからCTPへの移行は明らかで、その置き換わりが5年以内なのか以上なのかはまだ結論はでていない。

2003/02/10 00:00:00