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Key Applications for Digital Print〜デジタルプリント拡大の鍵〜

講演者:PODi会長 Mr.Rab Govil
モデレータ:EFI 田中 和宏氏

PAGE2003からの開催報告として基調講演A3セッションでは米国の非営利団体であるPODiから会長をお迎えし、デジタルプリント(POD)の成功の鍵は何か,という観点で講演をして頂いた。まず本セッション企画の背景を国内市場調査結果にもとずいて
JAGATから説明を行った。その後,Govil氏の講演がEFIの田中氏の名通訳兼解説を加えながら行われた。
講演はPODiの役割から始まり,デジタルプリントの用途分類,各用途での成功事例の報告,最後にまとめとしてデジタルプリント成功の鍵は何かであり,セッション参加者との討議を含めて最後にまとめが行われた。
本レポートではその中から講演のポイントについて概要を以下報告する。

1.PODiとは
PODiは設立されてから6年目の団体であり,役割は主に2つある。一つはデジタルプリントのインフラストラ クチャー整備である。これには業界標準規格の制定があり,PPMLがその具体例である。他の一つはデジタルプリントの市場開拓である。この目的で今までに約125のデジタルプリント事例を紹介し,セールスの参考用に提供している。本日はこの中から幾つかの事例を紹介し,デジタルプリント成功の鍵について考えてみたい。

2.デジタルプリントの用途
  デジタルプリントの用途(アプリケーション)としては以下の6分野があると考えている。
     《1》ダイレクト・マーケティング:DM
     《2》トランザクション:請求書等
     《3》コラテラルマネジメントとフルフィルメント:カタログ・パンフ等の営業支援ツール
     《4》パブリッシング(出版):本,マニュアル,雑誌,ニュースレター
     《5》スペシャリティ:ラベル,パッケージ,カード,POPマテリアル
     《6》ビジネス・コミュニケーション:人事関係書類,挨拶状等
 さてこの様な分野でデジタルプリントを行う事のメリットは何であろうか? PODiとしては2つのメリットがあると考えている。それは,
 《1》ドキュメントの効果
 《2》コスト削減
 である。ドキュメントの効果はパーソナリゼーション等による顧客への訴求力の向上という事である。また,コスト 削減は自動生成等による効率の向上を意味する。これらの両者が期待できる程デジタル化の効用が大きい事になる。
講演では以下,実際の事例をもとにDM,トランザクション,コラテラルマネジメント,スペシャリティの4分野に ついて紹介がなされた。また,講演では具体的なレスポンス率や売り上げへの寄与等,従来あまり報告がなされてい ない事項が紹介されたが本レポートでは割愛する。事例紹介の後,まとめとしてデジタルプリント成功の鍵は何であ るかについてPODiの考えが述べられた。

3.デジタルプリント拡大の鍵:印刷会社の姿勢
印刷会社にとってデジタルプリントを成功させる重要な鍵は,クライアントとどうつきあうかという点につきる。 単に刷り屋として対応するのか,またはクライアントの戦略的パートナーとしてつきあうか,という選択である。戦 略的パートナーはクライアントの課題を解決する事が役目であり,それなりに高いマージンが得られ,かつクライア ントとのつきあいも深化できる。米国の印刷会社は生き残りをかけてこの方向に現在転換しつつある。 米国ではデ ジタルプリントの主要プレーヤは印刷会社である。他には広告代理店と印刷会社が協力して実施する例や広告代理店 が直接クライアントに対応している例がある。米国の印刷会社も日本と同様,受注産業という事で'受け身'の姿勢 があったが,デジタルプリントに対応しないと生き残れなくなって来たためにクライアントとの関係を転換している。
転換の仕方としては,印刷会社自体が戦略的パートナーになろうと自ら気づく場合と,クライアントから仕事がなく なると言われ姿勢を変えるという2通りがある。

4.デジタルプリント拡大の鍵:2つのポイント
デジタルプリントを拡大させるには,従来の様な購買担当者ではなく,マーケティング担当や財務担当者とつきあ う事が重要である。購買担当者とのつきあいの範囲では1枚幾らの世界からは抜け出れない。またこれらの担当者に 対し,《1》デジタルプリントのメリットが何か,について十分教育する必要がある。また教育という面では,印刷会社 のセールスマンに対する教育も重要である。成功した印刷会社では,ソリューション営業ができる人間を新しく雇っ たり,その会社のトップセールスマンからソリューション営業教育を他の営業マンに対して直に教育させる等の施策 も行われている。また他の鍵としては,《2》プリントコストの削減,がある。オフセット並とはゆかない迄も,現在の コストでは高すぎると思う。この点でメーカには再考を促したい。

以上が講演概要であるが,講演の後には活発な質疑応答がなされあっという間に2時間が過ぎた感がある。ちなみに最近米国では'オンデマンドプリンティング'という言葉はもう死語である事,現在は'デジタルプリント'という言い方に変わってきている事の指摘が最後にGovil氏からあった事を補足する。


2003/02/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会