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インターネットの、夢から、現実へ

2003年4月は、Webブラウザの元祖であるMozaicの発明10周年にあたる。1994-5年頃のMozaicの奇跡的な大爆発は神話のように語り継がれている。当初画面の中をクリックするだけで世界中に分散したサーバにつながっていくことは、なんと素晴らしいアイディアか! と思われていたし、それを経験することは大変スリリングなことであった。Mozaicの開発側もどんどんダウンロードがされていくことに、世界が変わる予感がして興奮していた。

MozaicがNetscapeとなってもしばらく夢心地は続いた。Mozaicを継承して発達したブラウザは、「本家」のNetscape以外にマイクロソフトのIEその他多く登場し、そのうちIEは悪夢になった。当初からWebユーザにはNetscape擁護派が多くいて、IEと機能を競い合いながらともに発展した。マイクロソフトを敵視した人もいたが、今日ではブラウザの95%はIEになってしまった。

これはマイクロソフトの悪巧み故の結果ではなく、Netscape的な人が好んで使った「サイバー…」「ネチズン云々」などにみるがごとく、インターネットのフロンティア性や社会効果にあまりにも期待を抱きすぎた人々に対して、現実的なマイクロソフトのビジネス路線が勝利したようなものだ。インターネットは妄想を掻き立て、また従来の法律の枠外ということで無法地帯のようになったことで、逆にインターネットは既存の文化や社会の破壊者と見る人たちも出てきた。

結局1996年にはアメリカで「新通信法」が成立するなど、インターネットは過去からある実社会の一部の機能とみなされるようになって、インターネット幻想は下り坂に向かう。これと同時にハッカー・サイバーテロ・セキュリティといった問題に産学官ともに正面から取り組むようになり、インターネット解放区は終焉する。

マイクロソフトのIEはネットワークが現実に引き戻されていく方向を主眼において開発されている。Windows系はセキュリティが甘いともいわれるが、それはハッカー対策などネット特有の技術開発を第一にせずに、ビジネス改革をミッションにしているからである。すべての問題をWindowsまわりだけで解決しようというのではなく、パソコンが使われる環境のいろいろな局面でそれぞれセキュリティ対策の分担をするというのが現実的であろう。

■出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」167号(巻頭言)

2003/03/26 00:00:00


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