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デジタル画像と印刷を結ぶ最適CMSルール

 デジタルカメラの普及に伴って印刷原稿としてRGBデータが入稿される。しかし,撮影段階の色空間の設定や,最終的なRGBからCMYKへの色変換が適切に行われないと色再現がうまくいかない。デジタル画像データから最適な印刷結果を得るために,撮影から印刷に至るまでの工程を検討する。

講師 モデレータ JPC CMS部会ディレクター 三邊 眞吾 氏
株式会社プロ・バンク システムプランナー 庄司 正幸 氏
望月印刷株式会社 GE部 フォトエンジニア 大鍛治一郎 氏,伊藤 隆司 氏

■カラーマネジメントの実現

 昨今のデジタルカメラの普及により,印刷会社における入稿についてもその比率は大きくなってきている。カメラマンに関してもデジタルカメラに移行してきておりますます増加が見込まれ,カメラマン自身のワークフローの確立も大切になる。
 そのような環境のなかで,標準化ということが重要なポイントとなっており,雑誌広告基準カラーや新聞用ジャパンカラーも標準化の1つの手段として注目されている。
 また今年は,大手の会社がこれらの基準をもとに出稿を予定しており,ますます標準化という意味において拍車がかかると考えられる。
 カラーマネジメントは1つの技術で重要であるが,ワークフローの組み立てとその運用,実施も大切である。


■CMSルール構築の考え方

 作業を効率的に進めるためのルール構築をするにはどうすればよいのだろうか。
 前述のとおり,技術の進展に伴ってデジタルカメラによる印刷原稿として,RGB画像入稿が進んでいる。今では様々な分野でデジタルカメラは活用され,風景まで対応している場合もある。それらは,多目的活用や制作時間短縮のために利用される。このRGB入稿に対応するために,仕事に使用できる最適なCMSワークフローが必要とされている。

 デジタルカメラのメリットとして,撮影してすぐに画像確認が可能であり,これはクライアントへのメリットとなる場合もある。また,画像の加工が容易にでき,工程の簡素化が図れる点もある。これらは,経費の圧縮につながるものである。
 撮影から印刷に至るCMSワークフローを考える場合,RGBデジタル画像から最適な印刷結果を得るため,各工程の流れやCMSの技術的ポイントを全体ワークフローとして捉える必要がある。そこでは,RGBのハンドリングやCMYKのクオリティ,ハンドリングも重要である。また,トータルワークフローを誰かがきちんと押さえていることも必要とされる。


■RGB入稿の問題点

 デジタルカメラ撮影時の問題点が後工程に影響することが多い。とくにライティングの悪さなどの問題もある。また,撮影段階の色空間設定が曖昧で,データ入稿方法が不明確な点も挙げられる。これらは,色再現がうまくいかない原因であり,より良いコミュニケーションが必要である。
 また,Exifはデジタルカメラの画像記録フォーマットであり,撮影時の様々な付属情報がTagとして付加されるものである。しかし,処理の仕方によっては想定した色空間ではなかったり、色補正が掛かったりすることもある。
 カメラマン側では,適切なRGB入稿を目指す取組みとして,画像フォーマットの統一や色空間定義の明確化,グレーバランスのコントロールなどと,保存時のプロファイル形式にも注意が必要である。


■印刷会社の色基準の考え方

 印刷会社側では,2つのカラーコントロールが必要である。1つは,自社の印刷技術をもとにした管理であり,印刷条件に沿ったプロファイルで展開されるものである。もう1つは,標準的な色空間をもとにした管理で,基準データに準拠した色管理,すなわちsRGB,AdobeRGB,JMPA,JapanColorなどである。
 また,CMSワークフローのカギは印刷にあり,印刷機の安定性は重要なポイントである。
CTP/CIP3(キャリブレーション)などの出現により,印刷物は工芸品から工業品へと変わったのである。
 基準カラーに合わせた印刷のコントロールが基本となり,クライアントの望む色管理は,いつでもどこでも、基準に沿った色再現ができることである。さらに,標準カラーを元にした印刷発注がなされ,品質の安定性が重視される時代になった。

 デジタルカメラへの取組みとして,以前は変換ソフトに頼りすぎていた点がある。印刷物ははじめの段階でいかに良い画像データを得られるかで善し悪しが決まる可能性もある。よって,色空間による色調の特性やCMYK変換による色のずれを把握することが大切である。
 画像データは,画像をどのように表示するかというプロファイル(色空間)と,そのモニタに写っている画像をどのようにオペレータが判断するかに大きく左右される。これは,カメラマンとオペレータの見ている色が違うことや,CMYK変換での色違いのトラブルもある。これらの対策として,プロファイル埋め込みやコメントの添付による情報伝達も欠かせない。

 画像解像度も大切な要素で,最終印刷物でどの程度の大きさになるかを考慮する必要がある。品質の劣化が発生した場合,Phtoshopなどでピクセル数を増やしても画像容量が大きくなるだけで解決にはならず,撮影時に考慮する必要がある。
 作業効率を考慮した指示,情報伝達を実行しなければならない。印刷会社は新規だけではなく,データリピートによる使用頻度も高く色調確認など添付素材が必要である。これらは,ルールを決めて運用することにより役立つものである。


■カラーマネージメント環境構築

 印刷会社にとって,カメラマンやクライアントに共通認識をもってもらうことが重要である。
 正確な色再現には,基本になるものが必要であり,テストチャートなどでデジタルカメラデータの特性を把握し,これを継続することにより色の安定とシステムへの安心や信頼を得ることができる。また,デジタルカメラRGBデータのCMYK変換テーブルにおける階調など特性の解析にも有効である。同時に印刷機のさらなる安定や新たな基準値作成にも役立つものである。

 色管理方法は,数値管理を実行し測色機やモニタマッチング専用ソフトを使用する。人間の目も重要であるが,個人の感覚に左右されやすい。また,モニタ同士のマッチングにも有効な手段である。印刷物,プリンタ,モニタの保守管理により常に安定させ,データ化して日々の変動を見ることも重要である。
 また,印刷適正に合わせたプロファイルづくりも構築すべきである。印刷機の特性に合わせたオリジナルの基本テーブルを作成し,主にボリュームやスミ系統の調子を再現する。さらに,クライアントごとのプロファイルや用紙による使い分けも実現し,仕事ごとのCMYKの数値情報を管理する。


■今後に必要なもの

 CMSワークフロー全体をコントロールできる環境を構築する必要があり,それには印刷の品質管理,すなわち経験値から数値管理への移行,積極的なコラボレーション,RGB/CMYKのコントロール,CMS全体のディレクションが重要である。標準化はクライアントも含めて実運用段階へ突入した。

 デジタルデータになると,従来の画像入力で使用したカラービューワーやカラーポジが使用できなくなり,モニタやプリンタでの確認しかできない。現実には,見本なども設定環境などが分からず,データと大幅に違うことも数多い。
 カラーコミュニケーションによる的確なイメージの伝達には,カラーマネジメントされた環境が必要である。その重要性が分かり始めた現在,CMS構築だけでなく,関連するものの保守,管理,安定が大切である。これらは,印刷会社の携わる者にとってスキルを活かすことができ,クオリティの追究になる。

2003/03/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会