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機械で文字を打つことに憧れて

◆栄光社印刷(株) 笹川 美知代

私がDTPに興味をもった,そもそもの発端は,小学校の担任の先生が習字好きだったことでした。
文字の上手な生徒は優遇され,そうでない生徒は冷遇される立場にありました。
私はといえば,冷遇されるほうの代表でした。本人は精いっぱい文字を書いているのですが,先生に「文字に心遣いがない」と指摘されて,すっかり文字を書くのが嫌になってしまったのです。
もう二十何年も前の話になりますが,「いつか機械で文字を書く時代がやってくる。そうしたら鉛筆で文字を書くことなんてしなくていい。もう文字をきれいに書く努力なんか,絶対にするものか!」と,強く心に誓い,機械で字を書くことを夢見るようになりました。

時はたち,電機メーカーのシステム課勤務を経て,現在の印刷会社に勤務させていただくことになりました。そこで,初めて念願のDTP専用機を使わせていただくことになったのです。
しかし,元がシステム関連の勤務でしたので,コンピュータに関しての知識は多少あるものの,印刷に関してはまるで無知。
毎日,社長を始めとして,ほかの社員の皆さんに,印刷に関しての知識を教えていただきながら,なんとか仕事をこなす毎日でした。
そんな私も,気がつけば社ではDTP部門では一番の古株になっていました。
お客様には,「プロだもの,お任せして大丈夫だよね」とおっしゃっていただくことも増えました。しかし,当の本人は,「プロ?」「ベテラン?」「本当にそうなのか,そう言っていただいていいのか」と,全く自信のない状態でした。
そんな時,社長から「こういう資格があるので,受かる受からないは別として,勉強してみたらどうだろうか」とお話を頂きました。
それがDTPエキスパートの資格との出会いでした。

私のもっている知識・技術はコンピュータに関しても,DTPに関しても,特別に専門学校などに通って勉強したわけでもなく,すべてが仕事をすることで培ってきたものです。
いわば自己流です。
常に自分の知識・技術が,「これでいいのだろうか」と疑問をもつ状態でしたので,喜んで勉強することにしました。
勉強を始めてみて,今まで「印刷」と「システム」の知識を別々にもっていたような感じだったのですが,それがどんどんつながっていくことを感じました。
受かる受からないは別のはずだったのですが,いつしか私は合格を目標として勉強していました。

そしていざ試験。
終わって「ほっ」とする間もなく,立て続けに課題の作成です。
とにかく毎日こつこつと作成し続けました。しかし,初めてのこともあり,これでいいのかという不安な毎日。
課題を作成し終わり,郵送する時には書類の不備はないか,すべて封筒に収めたか何度も何度も確認しました。
今,DTPエキスパートとして認証していただいたわけですが,JAGATのHPに訪問すると,「これはスタートラインなのだ」とつくづく実感しています。
しかし,以前感じていた,「これでいいのだろうか」「プロとして大丈夫なのだろうか」という不安は,軽減されました。また,勉強をしていく方向もはっきり見えてきました。試験を受けて,本当に良かったと思っています。

最後に,私はお花のお稽古に通い始めて今年で14年目です。
流派は宏道流(お家元は梨雲斉望月義j先生)です。
今思い返してみると,デザインに必要な美しいものを美しいと感じる心,バランス感覚。そして,お客様と接する時の,話題,目上の方に対する礼儀,すべてお花のお稽古から学んだような気がします。
パソコンも,ほかの機械も大好きですが,仕事においても,私生活においても,機械一辺倒の人間になるのでなく,お花を愛(め)でるような柔らかい心も失わないでいこうと思っています。  

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2003年4月号


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2003/04/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会