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DMのデジタルプリントへの進み方を考える

アメリカは通販を始め、郵便によるビジネスが大変発達した国なので、日本でもその先例を参考にすることは多くあった。しかし広告とかマーケティングに関してはアメリカはヨーロッパなどとも違って独自に発達した部分が多くあるので、広告統計をみても隔たりを感じる部分はある。アメリカのTVは民放ばかりで主として広告収入で運用されて受益者はタダであるように、業界誌紙も広告付きでタダのものが多くある。

アメリカでいろいろな情報がタダで手に入る見返りとして、例えば雑誌購読者の宛名だけでなくプロフィール情報もマーケティング用に流通している。もっとも購読申し込み時に「オプトイン」的な承諾はとる場合は多いが、ある意味で個人情報がマーケティングに使われることは黙認されているので、データベースマーケティングが可能になる。

また転居などの人の移動も軍官に管理されていて、その情報も税金の見返りとして民間で使えるようになる。こういったさまざまなデータをうまく管理すると、自社の顧客データでなくても、かなり対象の絞られたDMの宛名が得られることにもなり、それらがDM発達の一因であろう。

日本は国民背番号的なことやグリーンカードのような管理は嫌う傾向がが強いので、人のデータメンテナンスは非常にコストがかかり、DMのパフォーマンスは出難かった。しかし郵便万能のアメリカと違って、昔から富山の薬売りよろしく、自分の足でマーケティングすることが行われてきた。それは印刷物に関係するところでは、教育産業やフリーペーパーなどが有名である。

教育産業と違ってフリーペーパーやチラシ・新聞折込はターゲットを絞り難いマスマーケティングであるが、チラシの折込単価は郵便の20分の1くらいであるし、必ず開封されているので着目率も高く、データベースマーケティングに骨を折るよりは安易にプロモーションができるものと考えられている。

日本は国土が狭く人口が密集しているので、営業マンの訪問効率はアメリカよりも高くでき、広告印刷物も「持っていく=お土産的」なものに考えられ、高級感を要求されがちであった。つまり日本はマスマーケティングと訪問の間に挟まれて、アメリカ的DMが発達しつらかったのかもしれない。

しかしこれからは営業マンを多く雇うコストと、DMによるピンポイントのプロモーションの効率のせめぎ合いになるだろう。デジタルプリントはDMよりも先行して、営業マンの販促ツールの側から動き出している。営業がどんな情報をどんなタイミングで顧客へのアプローチに使うかを経験していけば、そこで培ったノウハウは次にワントゥワン的なDM戦略に使えるようになるのだろう。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 204号より

2003/04/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会