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印刷のプロなら、色のプロを目指せ

印刷関係の人は色の問題というと、紙の上にインキを載せて色再現をどうするかを第1義に考える。それは当然であるが、もともとそのことが重要であったのは、印刷時の発色のブレである網点変量のふるまいを捉えて、製版の色分解カーブにフィードバックするためであった。しかしPhotoshopを使うようになって、かつては必須であった分解カーブの設計など行わないで印刷物を作る人の方が多くなってしまったのではないだろうか。

要するに印刷機の自動化に伴う安定化によって、それらの平均値に合わせたようなそこそこのカーブはありふれたものとなり、印刷側も極ベーシックな色の調整はCIP3のような方法により誰でもできるようになった。こういった土台が整備されたとしても、さらに微調整を加えて、印刷されたイメージの味わいを増し加える技量が各社各人に求められることになる。

しかし実際にそうなっているわけではない。今日の技術的な底上げで下手なカラー印刷はなくなったが、素晴らしい印刷物が増えたともいえない。その理由の一端は人にある。技術の未熟な時代は、この種の仕事につく人には必須の感覚であった色に関する神経の精密さが、今は抜け落ちがちだからである。現場の人がさらに品質にこだわろうとしても、市場からは高精細印刷や高濃度印刷が多く求められるわけではなく、センスや技量をどこに発揮すればよいのだろうか?

個々の印刷物をどう設計すべきかについては、製版設計にあたるコーディネータという役割が今後とも求められる。しかしラインの側はプリプレスも印刷もシステム化が進むから色の問題はこれで終わったのか? いやこれからシステム的に取り組まなければならない色の問題は多くなるのである。昨年は「リモートプルーフには、色の総合的な判断力を」という記事を書いたが、今年はデジタルカメラからの入稿におおわらわになった。デジタルカメラやCGのデータ入稿は、リバーサルフィルムをスキャンすることではありえない色域とか発色の問題があるが、そのソリューションを考える前に日常的な仕事になりつつある。

幸いデジタルカメラ対応などはユーティリティソフトとかカラーマネジメントソフトによって、誰でもかなり対応できるようになりつつあるが、それは作業面のサポートがされているだけのことで、技術が変化する中で旧来の印刷知識だけに頼っていては根本的な理解がおいてきぼりにされてしまう危険性もある。よくいわれるが、プリプレスの作業用モニタをカラーマネジメントしても、周囲の照明や、本人が着ている服の色や、印刷する材質の特性などを配慮していないと意味がなくなってしまう。

印刷物作りがデジタルカメラからCTPまで一貫してデジタル化すると、知識も一貫したものでないと、トータルなソリューションができなくなる。そのためには色についても、人間の目の特性から、光や色の科学的な理解、カラースペース、色の計測、文化的な記号としての色の常識など、総合して考察・評価できるようにならなければならない。ここに色に関するセンスや技量を発揮するフロンティアが生まれつつあるといえる。

関連情報:色を科学的に理解する

2003/04/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会