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マレーシア印刷産業の概要

■ASIA FORUM
第6回シンガポールFAGAT(2002年)
マレーシア講演レポート

May 20, 2003

Tan Soo Huat氏(Malaysia Printers Association会長)

マレーシアの印刷産業の概要について7つの項目

1. マレーシアにおける印刷業界の位置付け
2. 政府の方針
3. 印刷産業の現状
4. 印刷メディアの売上
5. 投資
6. 印刷物の輸出入
7. マレーシアにおける印刷メディアの将来

1.印刷産業の位置付け

印刷産業はいろんな業種のなかで最も古い産業のひとつで、教育、コミュニケーションおよび知識・情報の普及の手段として大変重要な地位を占めてきました。近年は電子メディアが台頭してきましたが、印刷はマレーシア社会のあらゆる面に普及した伝統的な産業であります。古い伝統的な産業ですが、これからの印刷の成長の可能性に注目してマレーシア政府も印刷物の輸出を奨励する処置をこうじています。現在は政府がテコ入れをしております。国内だけでなく印刷の輸出を奨励しております。マレーシア政府はわれわれに多大な支援をしていただいています。印刷・出版業界はマレーシアの中でトップ5には入る経済的に重要なポストです。

2.政府の方針

すべてのマレーシアの印刷会社は政府から保護されています。しかしその一方で、海外の投資家も招致する政策が打出されています。社会的、政治的、経済的環境を踏まえた上で、海外からの投資は、条件つきですが輸出に回すことを前提に100%海外資本の参加も許可されています。具体的な印刷のプロジェクトについてもマレーシア政府は奨励策を打ち出しています。海外からの投資で、マレーシア国内で印刷物を提供されたい方は製造業としてのライセス取得は免除されますが、資本参加をマレーシア側が70%で海外は30%以下にしなければなりません。海外の方が印刷業に参入するには内務省からプリンティングライセンスの許認可を取得する必要があります。国内企業、海外企業では若干あつかいが変わっています。

3. 印刷産業の現状

国内産業促進局でまとめた数字です。 内務省に企業登録された数が3162社、そのうち印刷業としての登録が1698社、製造業としての認可登録は113社。 製造業者として認可を受けていて、海外の株主のシュアが50%を越えている企業が8社です。 生産活動を行っている企業が2500前後(この中には一般的な印刷業者、カートン&ボックス、プラスティック包装、金属製缶業者が含まれています)。 印刷業の許認可の規準として従業員数75人、資本の額が250万RM(マレーシア・リンギット)。

4.印刷産業の売上げ

年間70億RM(一般的な印刷業者、カートン&ボックス、プラスティック包装、金属製缶業者)。2001年の一般的な印刷業者に限っていうならば、34.5億RMです。産業としての生産能力は100-120億RMといわれ、まだ余剰生産能力があります。この生産能力が余ってしまっていることからマレーシア国内では激しい競争が展開されています。

5.投資について

業界における投資の許認可制ですが、マレーシア産業育成局の数字を引用いたしますが、2001年の紙、印刷・出版業界の許認可を受けたのは23プロジェックト50億RMです。印刷・出版にあたえられた認可の額はいままでで最高になるでしょう。他の業界としては、電子電気関係に次いで第二位です。印刷業界は資本集約的で投資のかかる産業であることがわかります。 実際の資本投資額ですが、2001年で21億RM、国内と海外を分けると国内投資16億RMで海外からの投資は4.8億。

6.印刷物の輸出入

輸出:95−99年の推移ですが、95年が20億RM、1999年は36億RMとなり輸出は漸増ではありますが、増えております。その内訳は書籍・パンフレット、地図などが全体の70-%占めています。 輸入:印刷物の輸入の推移は輸出とは若干違っています。95年は4.1億RMであったのが、99年には6.6億と伸びています。内訳は書籍と有価証券などが90%以上を占めています。書籍については95年には49%であったが、99年には39%にまで減った。一方、有価証券、カレンダー、ポストカードどの印刷材が42%から55%に伸びています。 輸出入をトータルでみると、マレーシアは輸入超過です(輸入6.6RM、輸出3.6億RM)

7.マレーシアにおける印刷メディアの将来

将来については不確定な要素があります。それは多国籍企業がその拠点を移動をしつつあるからです。現在は、多くの企業がアメリカやヨーロッパに拠点を置いていますがしだいにアジア太平洋地域に拠点を移しつつあります。その流れの中で中国、香港、台湾地域の需要が伸びているのがわかります。印刷需要は着実に伸びることは確実ですが、どれぐらいになるかは多国籍企業のこれからの動きに掛かっています。

産業促進局から入手した最新の輸出の変化をみますと(2001-2002年の上半期) 輸出先としては、アメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、日本、香港、台湾などが列挙されていますが、ヨーロッパ、日本は大きなマイナスとなっています。それに対して香港、中国、台湾がいずれも大きく伸びています。これはアジア地域内での取引が増えてことでこのような結果になったものです。
アジアすべての国が中国の動向を注目しています。この中国の伸びをどう自国に取り込むかでこれからの発展が大きく左右されます。中国の拡大はマレーシアにとって脅威でもありチャンスでもあります。アジア地域の相互の取引を伸ばすことで、各国が潤うことができるのではないでしょうか。アジアのネットワークを築きことで戦略的提携を実現できるのではないでしょうか。韓国からも提案がありましたがFAGAT各国が仕事を分かち合う協力体制が望まれます。

2003/05/15 00:00:00