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「デジタル交通事故」激増時代の交通安全ルールとは

社会的責任の大きな顧客(企業や官公庁)からの要望事項
食品関連の企業における情報隠しや自動車会社のリコール隠しなど、生活者の安全にかかわる事柄や、デジタル化されたさまざまな情報の不正利用などが社会問題化する中で、「安全性」が大きなテーマになってきました。
住民基本台帳ネットワークなどで、情報の安全性が重要であるという認識が広まる中で、個人情報保護関連5法案が成立しました。さらに法務省では企業犯罪に対処するために刑法など刑罰を科すための関連法を改正する方針です。
また、京都議定書にあるCO2などの温暖化ガスの排出抑制という「地球環境保護」のテーマがあります。
そして社会的責任の大きな企業や官公庁などの印刷発注元(顧客)からは印刷物作成に際して、セキュアな環境やグリーン調達への対応を求めてきています。



客に「原稿をメール添付で送って・・・」と言ったら安全面では落第生
「情報ワークフローのセキュリティホールは印刷会社に有り」ということが一部で言われるようになって来ました。この意味は顧客企業がどんなに情報の取り扱いの安全性に気を使っていても、その情報が原稿という形で印刷会社に渡されると、その大事な情報があっと言う間にデザイン外注・印刷外注・製本外注などへ拡散してしまい、コントロールできなくなるということを言っているのです。
印刷納品時に、他社の印刷損紙(ヤレやペケ紙)を結束の当て紙に使うなども論外です。

モータリゼーションと交通ルール
米国フォード社が創業100年になるそうですが、自動車やバイクの発明普及とともに交通事故が増大したことは容易に想像がつきます。皆様も発展途上国と言われる国を旅行すると良くわかると思います。モータリゼーションの拡大に伴ない、安全をキーワードにした道路や信号機などの交通インフラや法整備が行われたことになります。
交通標識も世界標準の現在の丸型が各国で採用されて、日本でも、四角いそれまでの標識から、1963年には現在の丸型の交通標識に一斉交換する大事業が行われました。 交通安全の世界標準を作り各国が採用したということです。

工場では安全管理の基準作り、事故ゼロ運動などが盛んに行われ、印刷機械の安全カバーも次第に厳重なものに変わっていきて、版汚れを取ろうとして機械に指を取られる事故などが激減したのです(昔々の印刷機はギアもむき出しです)。

「デジタル交通事故」激増の時代へ
社会全体がフルデジタル時代を迎える中で、インターネットに代表されるデジタルインフラの普及に伴って「デジタル交通事故」が激増しています。モータリゼーション黎明期と同じように、デジタルワールドにおける信号機や交通標識、歩道を作って安全性を確保することが必要になりました。そうです、世界基準が大きなキーワードです。

例えば、インターネットの安全性は個人的にはメールに添付されてくるウイルスに感染しないように注意するなどがありますが、ホームページを発信している企業などではWebサーバーへの不正侵入などの脅威にさらされたり、収集した個人情報には適切な安全保護措置を採っていないと社会問題になることもあります。

印刷会社は印刷工程のデジタル化(自社情報)と、また発注主のホームページのデータやサーバーを預って運用する(発注者を含む外部情報)、インターネットに接続されたデジタル化も行なうようになってきましたが、いずれにおいても情報の適切な管理が重要です。

そして国際標準のISOや国内標準のJISなどにおいて、これらのデジタルシステムや個人情報の扱いを企業が明確ルール化し公表することを求めています。 今後は情報加工を営業品目とする印刷会社にとって情報セキュリティポリシーやプライバシー マークに対する取組みが重要になります。発注者もデジタル情報を安全に運用する社内の仕組みであること、情報に含まれる個人情報の取扱が適切であることを求めてきます。

情報の保護に関する2つの認証制度
これからは「デジタル交通事故」が起こらないように、顧客からは印刷制作においてもさまざまな情報の安全性を確保に対する要求事項が出て始めています。

印刷会社にとっては、情報の保護に対する認証制度が2つ存在します。
・新製品カタログ印刷の受注など「企業が持つ情報の保護」が確保できること
→情報セキュリティーマネージメント(ISMS)適合性評価制度
・名刺、名簿などの「個人情報の取り扱いに関する保護」が確保できること
→プライバシーマーク制度


認証そのものは必ずしも取得しなくても良いのですが、社内ルール化と企業としての情報セキュリティポリシーを外部に宣言できる用意する必要があります。その上で、顧客の要望、取り扱う情報(企画書や原稿から印刷/製本時に発生する損紙まで)の内容、将来性や国際性、認証取得へのハードルの高さなどを検討して認証などを取得するかどうかを決めれば良いのです。

情報の安全性を確保するとは「利用権限のある者だけが正しい内容の情報を必要な時にいつでも利用できるよう,情報を安全に保護すること」で、人事・組織,管理すべき情報,コンピュータやネットワークなどのシステムなどで、情報の安全な取り扱いに関する脅威や脆弱性をつかんだ上で、社内の管理ルールやネットワークの安全性を高めなければなりません。

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2003/06/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会