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出始めた?インターネットの紙媒体への影響

JAGATの推計によれば、通信販売用のカタログ、チラシ印刷物の市場規模は1997年度の1809億円から年々減少し、2001年度は1394億円、対ピーク時の77%にまで減少した。価格低下も一つの要因と考えられるが、さまざまな状況から見るとやはり電子媒体の影響が出てきていると思われる。

社団法人日本通信販売協会「第20回 通信販売企業実態調査報告書」によると、通信販売業界における各種広告媒体利用度で最も高い媒体はインターネットで、75.2%の通信販売企業が広告にインターネットを使っている。DMの利用率は65.0%でインターネットに次いで高く、さらにカタログ(58.8%)、チラシ(46.0%)とおなじみの紙媒体が続いている。
通信販売業界における広告媒体としてのインターネット利用率は高いが、その売上に占める割合は5.0%でまだまだ低い。やはり、カタログ(34.9%)、DM(23.5%)といった紙媒体での売上が大きい。しかしながら、2001年度における通信販売業界の全広告費4731億円に占めるインターネット広告費の割合は1.2%、47億円であり、例えばカタログを使った広告費用1016億円(全宣伝広告費に占める割合は25.7%)の1/20に過ぎない。

そこで、各媒体に使われた宣伝広告費に対する売上高の比率を計算して見ると、「インターネット」が21.9とダントツに高く、次いで「その他」の9.0%、「会員誌」の8.6%と続いている。ちなみに、カタログの宣伝広告費1単位当たりの売上高は7.1、DMは6.5、チラシは3.8である。インターネットの場合には、100万円の広告費で21900万円の売上が上げられるのに対して、カタログの場合の売上は710万円ということである。インターネットの費用対効果は抜群に高い。
だからといって、通信販売の広告媒体がインターネット一辺倒になるといったことは当面ないはずである。それは、多くの消費者の情報に接する姿勢が受動的なので、自らが情報を取りに行かなければならないWebのようなプル媒体を活用する人はまだ少ないからである。情報に対して受動的な消費者に対しては、こちらから情報を提供していくプッシュ媒体の方が有効である。また、Webの場合には、消費者が買う物をあらかじめ決めてWebを開いて買う「目的買い」をするのに対して、カタログのようなプッシュ媒体の場合には、カタログを見ているうちに買いたいものを見つけるといった「発見買い」を誘うといった違いもある。そのことによって、カタログを見て買う顧客の方がネットで買う顧客よりも1人当たりの購買金額が大きいという事実も報告されている。ただし、eメールは、表現力はカタログに及ぶべくもないがメディアの性格としてはプッシュメディアもある。

日本のインターネット普及率は、1998年に世帯普及率が11.0%と1割を超え、事業所普及率は同年に19.2%とほぼ2割になった。以降、インターネットの普及は年々拡大し、特に2001年度には大幅に伸びて、インターネットの世帯普及率、事業所漁礁普及率はそれぞれ60.5%、68.0%と50%を越えた。
また、個人が自宅内で接触する各メディアへの接触時間の推移を見ると、インターネット・eメールへの接触時間は、1998年にはわずか2.3分であったものが年々増加して2001年では書籍・雑誌といった媒体への接触時間(12.1分)を抜いて12.4分になった。そして、2002年度は更に差が開いて、前者が11.0分、後者は15.4分になっている。

以上のような背景の中で、主要な通信販売企業のネット売上は2桁で伸びている。BtoBのアスクルでは、2000年度のネット売上げ199.4億円が2001年度には269.1億円、前年比34.9%伸び、全売上に対するネット売上の割合も26.5%から29.1%へと上昇している。BtoCの千趣会でも、2000年度のネット売上42億円が2001年度には106.6億円と倍以上となり、全売上に占めるネット売上の割も3.9%から7.3%になっている。2002年度の千趣会のネット売上は前年比62.0%増加し160億円に達したという。
一方、通信販売における紙媒体の市場規模減少は1998年から始まり、特に2001年度の落ち込みは非常に大きい(前年度比15.7%)。
以上、さまざまな状況から見て、少なくとも通信販売業界においては、電子媒体の紙媒体への影響が出始めたといえるのではないだろうか。

(出典:「印刷白書2002→2003」より一部抜粋)

来る6月19日、レスポンスメディア研究所代表 田村吉昭氏による「通販・カタログ販売・ネット販売の最新トレンド」と題するセミナーを開催するが、ネット売上の状況を含めた最近の通信販売の詳細な状況が報告される。

2003/06/17 00:00:00


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