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CTPのオープン運用に向けて

デジタル制作環境の標準ルール化

CTPを利用するための原稿制作から製版出力に至る分散作業体制の中で,基本的なデジタル環境の条件がそろっていなければなりません。DTP作業で使用されるフォント情報,使用アプリケーション,バージョン,画像情報などが入稿の時に明記されている必要があります。
そのためには原稿データの作成手順や設定内容が,印刷品質を考慮したものになるように,印刷側から制作側への技術情報が適切になされていなければなりません。DTPソフトウエアの旧バージョンが使われることもあるので,印刷側ではおのおののバージョンに応じた処理が必要でトラブルが発しないようなルール化も必要です。

PDF入稿

制作会社から印刷会社に入稿されるデジタルデータの場合,ほとんどはDTPアプリケーションのネイティブフォーマットですが,この形式は訂正への対応には融通性がある一方で,出力エラーの可能性などの不確定さをも同時にもっています。対応として,作成されたDTPソフトの種類に依存せず,フォントデータを埋め込んだり,さらにフォントを線画形式に変換して,いわゆる文字化けしないようなPDF形式を作成することができますが,そのように設定を変更できる知識が必要です。

DTPデータの点検

ページ組版が終了したデータはソフトウエアでチェック(プリフライトチェック)して,データ内容に不備がないかの点検を行います。問題のないページデータは,面付けソフトで面付けされます。そして校正のために大サイズのインクジェットプリンタや静電プリンタから出力されます。この段階の面付け校正が完了すると下版で,イメージセッタやプレートセッタからの刷版出力になります。
DTPで使用されているアプリケーションソフト類はおおむね統一されていますが,制作者によって使用するソフトウエアバージョンが異なっていることが多く,製版側においては以下のようことが課題になっています。
・入稿データ作成に使用されたアプリケーション・バージョン・OS・フォントの種類が業者間で不統一なための仕上りの差異や修正作業の煩雑さ
・すべてのフォント情報が明記されていない
・使用アプリケーションが明記されていない
・バージョン情報が明記されていない
・画像情報が明記されていない
また,原稿データの作成手順や設定内容が印刷品質を考慮したものになっていないこともあり,製版工程でデータ修正作業する際の混乱の要因になっていて,制作側の理解を深める必要もあります。さらにDTPソフトウエアについては,2〜3世代も前のメーカーサポートが打ち切られているソフトが,慣れているからと使い続けられていることもあり,ここで作成されたデータの癖を知らないでトラブルを起こすこともあります。
現在,制作会社から印刷会社にデジタルデータで送付される場合のほとんどは,DTPアプリケーションに依存したデータフォーマット(Illustrator EPSやQuarkXpessなど)です。トラブルを避けるためには出版・印刷業界で使用するバージョンをしぼり,運用の煩雑さを減らすことが重要です。
当面の対策としては,制作作業にタッチするデザイナーやオペレータの作業方法や使用するルールの範囲に一定の制限を設ける方法があります。
特にデータ入稿仕様書は,データを制作したコンピュータの環境を確認するための唯一の手段です。きちんと必要事項が記入されていないと,印刷会社では制作環境を合わせることができず,正しい絵柄を表現することができません。規定されたアプリケーション(含むバージョン),フォントを使用し,その内容を正確に表記する必要があります。

面付け

ページものを印刷する場合には,大判の用紙に複数ベージを並べて印刷します。ページの配置を面付けと言います。面付けするページ数は片面で2ページ,4ページ,8ページ,16ページ,32ページなど必ず複数になります。面付けするときの各ページの配置は,印刷サイズ,製本仕様,表と裏を違う版で印刷するか同じ版で印刷するかなど,印刷や製本工場における機械の取り都合や機械仕様によって決まります。つまり,印刷機や製本機が決まらない段階での面付けは,やりにくいことがあるのです。
面付けされて印刷された刷り本を折り機などで折ったものが折り丁です。面付けは左開き(ヨコ組)か右開き(タテ組)かによって,配置は同じですがページの向きが異なります。ページの方向は,左開き天合わせ(折り丁は天袋),右開き地(またはケシタ)合わせ(折り丁は地袋)となります。

(図 面付けから製本までの流れ)
印刷部数が多い時は,表面(ルビ:おもてめん)印刷用の刷版,裏面印刷用の刷版が別々になる本掛けでの面付けになります。しかし,部数やページ数が少ない(4ページなど)時は,1枚の刷版を表裏の印刷に兼用できる,打ち返しの面付けになります。
通常の折り機による回し折りでは,折り回数が4回以上にならないようにするため,全判サイズで印刷したものを半裁に大裁ちしてから,折り機に掛けます。
また,新しい技術として,面付け工程から印刷や製本加工のプリセットデータをデジタルデータで渡す,CIP4/JDFの実用も始まっています。これは,面付けデータから算出した印刷加工データとして,オフセット印刷機械のインキキー調整用のデータ,断裁機へ断裁寸法データ,製本機の製本寸法データなどを,デジタルデータとして渡そうというものです。これによって,印刷製本工程の前準備時間が短縮され,さらに短納期を実現できることになります。

出力

網フィルムへの出力はイメージセッタ,デジタル校正への出力は網点なしの場合はインクジェットプリンタ,レーザープリンタなど,または網点ありのデジタル校正はDDCP,印刷版への出力はCTP,無版での出力はデジタル印刷機からそれぞれ行います。
まず,DTPアプリケーションで作成され完成したページデータやオンライン・オフラインで電子送稿されてきたPDFなどのページデータは,面付けアプリケーションでページ面付けされます。そして,RIPによって文字(文字コードとフォントのアウトラインデータ),線画(アウトラインデータ),画像(網点%計算されたデータ)などがプリンタやイメージセッタなどの各出力解像度に合わたせた,ビットマップデータへの変換処理が行われます。
印刷製作では校正用のプリンタ出力,網フィルム出力,CTPによる刷版出力などいろいろな出力機器が使用されますが,RIP装置が1つ(One RIP)であることが,文字化けや網化けといったデータ変換時のトラブルを避けるための望ましいやり方になっています。
色校正の作成にはいくつかの方法が,費用対効果の面から使い分けられます。最もローコストなのが印刷網点なしデジタル校正で,インクジェットプリンタやカラーレーザプリンタなどから色校正を出力します。DDCP(デジタル・ダイレクト・カラープルーフ)は同じデジタル出力機でも,印刷網点が再現されていて,用紙も印刷で使われる紙に近くなります。実際に印刷インキと用紙に色校正を刷るのが校正刷りです。イメージセッタは印刷原寸サイズで印刷網点が形成された網フィルムを出力する機械で,出力した網フィルムをPS版に焼付けて刷版ができあがります。 また,CTPは専用のPS版(CTPプレート)に直接出力できる機械でプレートセッタともいいます。
デジタル印刷機は,高速複写機やインクジェットプリンタがベースになっている無版方式と,印刷機にCTP装置が内蔵されていて通常の印刷インキが使えるDI印刷機の2種類があります。

(図 DTPにおける出力データの流れ)

CTPとイメージセッタの業務分担と進行の違い

イメージセッタによるフィルム工程ではプリプレス工程と刷版工程は明確に分かれており,責任範囲も明確でした。CTP運用において製版と刷版の役割分担・責任範囲をどうするか検討が必要です。
デジタルデータ化によりフィルムなど,中間材料の受け渡しがなくなるため,品質や進行管理に配慮が必要で,CIP4/JDFによる標準的なワークフローシステムやこれと連動した進行管理システムが開発されています。

CTP工程の課題

CTPはDTPをフィルムレス化する比較的新しい技術であるため,ワークフローを組み立てる上で,まだいくつかの課題があります。
(1)CTPに対応した新たな組織・体制の構築
CTPは現状のフィルムを使用する工程と違い,目に見えないデジタルデータを使用するため,入稿時のデータ確認,面付けデータ確認,生産管理などを含めフルデジタルに対応した組織・体制を構築する必要があります。
(2)遠隔印刷でのネットワークの活用
フルデジタル化によってプリプレスと印刷の工程の分散化に対してネットワーク技術の活用が可能であり,インターネットを利用した制作のコラボレーション,リモート校正による校正時間の短縮化,CTPデータの電子送稿による印刷版の物流の廃止による時間とコストの削減が可能です。

データ保存/管理

素材データ,編集データなど各種データについてはどの段階のデータをどのように保存・管理するかが決まっていなければなりません。CTPでは,データ修正→面付け→面付け→RIPのうち,どの段階のデータを保存しておくのが有効かは,ワークフローにより異なります。

(JAGAT『印刷入門』より抜粋して作成 2003年5月発刊)

2003/06/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会