〜情報リスクマネジメントを具体化する時期がきた〜
印刷は歴史のあり伝統的なメディアでありながら、情報の最先端環境の中に浸かり始めている。印刷は違う、という考えは、これからは通用しない時代になりつつある。情報を扱うビジネスをするかぎり、情報の持つ「光と影」を背負わなければならないことは当然である。情報リスクマネジメントのための体制を具体的に構築する時期がきたといえる。
●経営戦略の4つのキーワード
現在、印刷会社の作り出す印刷物あるいは製品、サービスのほとんどがコンピュータによって制作・製造されている。社内外の連絡、原稿入稿についてもコンピュータネットワークでの授受が日常化してきた。クライアントあるいは自社のデジタルデータが日々社内に蓄積されている。印刷会社はこの10年ですっかりその様相が一変した。印刷業は、クライアントの目的に応じて情報を高度に加工・パッケージ化する情報サービス産業である。サービス内容も多様化しはじめ、デジタルを活用して新たな分野のビジネスチャンスを掴もうとする企業もめずらしくない。一方、従来型製品サービスの企業にとってもデジタル化の波を避けて通ることはできない。つまり新たなビジネス展開があろうとなかろうと、印刷業という情報を生業とする産業にとって、IT(情報技術)による社会基盤の変化は、ビジネスを根底から揺り動かす大きな変革である。いままでのビジネス手法が通じないことが増えてくるであろう。経営者は、印刷業が置かれている環境をよく理解し、どのように考えるべきかを明確にしなければならない。
これからの印刷ビジネスを展開する上で、経営的営業的に重要な管理キーワードが4つある。受発注管理、知的財産管理、情報資産管理(情報セキュリティ)、環境管理である。日常の営業実務の中で、あるいは経営戦略や経営リスクを考える上でこの4つのキーワードは欠かせない分野である。当然、日常活動のなかで活かしていくためには、まず上記のような管理思想を経営層がしっかり受けとめ、理解を深め、社内にそのリーダーを養成し、定着のための研修を繰り返し行なうことが重要である。つまり経営者がこれら4つのキーワードの分野に無関心、あるいは安易な対応をするならば自社の経営基盤を揺るがしかねない、といっても過言ではない。
●「情報は資産」を実践しよう
会社の資産は誰が管理していますか?との質問をすれば、当然社長あるいは経営幹部という回答が当たり前ですが、実際にそのように管理・教育されているであろうか。
例えば、会社として「印刷版(版下・フィルム、データ)の管理ルール」が明確になっているだろうか。印刷版の権利が印刷側にあることは裁判の判例からすでに確定しているといっていい。課題は中間生成物としての印刷版を引き渡すか渡さないか、ではなく、印刷版を資産としてどう管理をするかの経営思想があるかないかが大変重要なことである。そう言う意味で社内ルールは極めて経営・営業戦略的であって当然だろう。感情論の渦中で、何の権限もない営業マンが勝手に判断したり、譲渡したりするような体制では非常に危険である。
一方、今回の国会で個人情報保護法が成立した。同法の賛否は別にして、これからの時代の中で重要な法律の一つといえる。個人(プライバシー)情報は、今回の保護法とは関係なく、憲法で保障された基本的人権にも関わることで、その運用には慎重でなければならないことは常識ともいえる。印刷業にとって情報の管理はそれが個人情報であれ企業情報であれ、得意先からの預かり情報を加工・管理することをビジネスとしていることから企業として根幹にかかわることである。しかし、このようない印刷業の立場は今に始まったことでなない。では、なぜ今なのか。デジタル環境の出現以外の何物でもない。ところが問題はデジタル化が及ぼすリスク増大への認識が弱いのが実情。かつてのアナログプロセスあるいは印刷製造オンリーの時代とは比較にならないほど印刷会社の責任、リスクが大きくなっている。これは印刷業だけでなく、社会全体にこういったリスクをどう回避して、情報資産を守るかが産業全体の共通経営課題である。このような背景をもとに作られたのが、セュリティ規格である。
ことに印刷業はクライアントの情報資産を預かり加工する立場に立っていること、そして今後より一層高度な支援ビジネスへと踏む出すことは、それなりの体制を整えなければ企業として厳しい評価にさらされることになる。
●まず、情報管理の自社の実体を掴むところから始めよう。
JAGATでは、Edu-Com配信者を対象に、情報管理に関する簡単なアンケートを実施致したが、その中で、過去に経験したトラブルについて下記のような回答があった。データの紛失、原稿の紛失の経験がどちらも50%を大きく上回っており、驚くべき数字である。大事にいたらなかったとしてもそれが実情とすると危険な状況といわざるを得ない。データを間違った得意先に送った、返却データが残っていた、は4割以上が経験している。また丸秘扱いのデータが現場や営業の机上に置かれていたことがある、という人も3割弱もいる。
デジタルはいとも簡単にコピーができ、オリジナルとの区別がつかず、一瞬のうちに(重たいデータも沢山ありますが)遣り取りできる利便性を持ってはいるがそのことが危険との隣り合わせであることを管理者は認識しなければならない。
| トラブルの内容 (複数回答・有効回答人数52名) |
経験の割合 (回答人数) |
| 過去のデータが見当たらなくなった(社内) | 71.2%(37人) |
| 預かり原稿の紛失経験がある(社内) | 65.4(34) |
| メールの遣り取りで「ウイルスデータ」を受けたことがある | 51.9(27) |
| 間違った送信先にFAXまたはデータを送ってしまったことがある | 46.2(24) |
| 返却あるいは消去したつもりのデータが現場に残っていたことがある | 42.3(22) |
| 丸秘扱いのデータが現場や営業の机上に置かれていたことがある | 28.8(15) |
| 預かり原稿(データ)を自宅などに持ち帰ったことがある | 25.0(13) |
| コピー不可情報のコピーを取った経験がある | 13.5(7) |
| 預かり原稿(データ)を関係者以外の部門の人に見せたことがある | 9.6(5) |
| 預かり原稿(データ)を乗物等外部で忘れそうになった経験がある | 9.6(5) |
| 上記のような経験はまったく無い | 5.8(3) |
| 未回答 | 9.6(5) |
※Edu-Com読者対象「印刷、及び関連業に於ける情報の管理に関してのアンケート」より
今後、このような情報管理については、現場任せにせず、経営層が積極的にルール化に関与することが重要ある。得意先情報を扱うことの重大さ、ルールを守ることの大切さを企業として教育しなければ、情報に対するマインドは高くならない。マインドが低ければ低いほどリスクが大きいことを肝に銘じてほ
しい。
【関連のご案内】
JAGATでは、社内体制の整備、ルール、教育、自社のセキュリティあるいはプライバシーポリシーを築くためのリーダー養成(情報マネジメントオフィサー)のための「情報マネジメント講座」を企画中です(8月または9月開講予定)。開催が確定次第、「セミナー情報コーナー」、メールマガジン「Edu-Com」でお伝えいたします。
2003/06/26 00:00:00