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一筋縄でいかないプリプレスワークフローを再考する

プリプレスでコンピュータが使われるようになり,ワークフローが自動化できるようになった。一方で,ワークフローというのは一筋縄でいかない複雑な要素がある。サカタインクスの事業開発部マネージャ,堀本邦芳氏にお話を伺った。

ワークフローの複雑化と問題点

MacOSもOS 7〜9や,OS Xなどが混在している。QuarkXPressは国内では,3.3や4.1が使用されているが,アメリカでは5に上がっており,6も出てくるらしい。 また,Windowsパソコンは,家庭や企業に普及しており,Word,Excel,PowerPointなどの出力データから,印刷物を作ることも多くなっている。さらにはPDFが一般に普及して,PDFデータの入稿も多くなった。このように,システム環境は,多様化している。

アメリカでも,デジタルファイルによくある問題として,ミッシングフォント,不適切トラップ,不正確な指定色,画像のカラーモード(RGB),不正確なページ設定,不正確な余白設定,リンクが切れたグラフィックス,ミッシンググラフィックス,不適切な画像解像度,出力できない細罫線などが指摘されている。
Windows DTPは,印刷サイドから見ると問題がある。RGB画像が入ってきたり,Word,Excel,PowerPointのデータを,PSに変換するだけでは,うまくいかない。
OpenTypeにより MacとWindowsの完全なプラットフォーム互換が実現できると言われているが,アプリケーション側の対応が100%同じには合ってないために,実用上では「組体裁の崩れ」だとか「文字化け」が生じるので,当面は要注意と言える。

プルーフとは,本来「保証」という意味で,品質保証,色保証をするためのものである。CTPでは最近,本機校正が増えている。これが正しい方法かどうかは別にして,実用的なのだろう。要は,デジタルになったからといって,どこかで人間がチェックしないといけない。また,CTPを導入した印刷会社では,カラーマネージメントが次の課題となっている。

プリフライト

入稿データに関する諸問題は,プリフライトの段階で,対処すべきである。従来のプリフライトは,アプリケーションのネイティブデータや,PostScriptデータを対象とするものだった。最近では,PDF化することで安定したデータとし,さらにそれをプリフライトするという考え方に移行しつつある。

PitStop Professionalというツールは,PDFプリフライトができる。また,「Certified PDF」という概念で,信頼性を高めることが出来る。これは,デザイナがデータをつくった段階でPDFにしてプリフライトをかけてしまい,その履歴を付けて印刷会社に渡す。履歴が残っているので,二重にプリフライトをかける必要がない。修正の個所も,修正したということも履歴に残るので,データ受け渡しの双方から見て信頼度が高いPDFと言えることになる。

単機能RIPとワークフローRIP

単機能RIPでは,AdobeのCPSIが標準だが,CPSIはコアエンジンで,単純なワークフローしか組めなかった。AdobeのExtremeはワークフローRIPと謳っており,分散処理の構想からつくられたものだった。それがExtremeという名前の技術として表現され,ノーマライズ,フォントエンベッド,InRIPトラップ,プリフライトチェックという機能を付けることができるものとなった。また,PDFを中間フォーマットとし,面付けもできる。Interpreterを一度通っているので,その段階で,品質が保証される。これらがワークフローRIPのキーコンセプトである。
PDFを中間データとするメリットは,ページ独立によるものである。PostScriptデータは,100ページのデータがあったら100ページ全部を処理しないとその結果が分からない。PDFでは,100ページあって35ページだけを修正したいとか,そこだけを抜き出すことが簡単に出来る。面付けやデータ修正の際に,フレキシブルな直しが可能である。

CTPに最適なワークフローとは

AdobeのExtremeは,PDFベースのワークフローである。欧米でのデータ受け渡しは,PostScriptからスタートして,PDFに移行しつつある。フォントエンベッドに関しても問題が無く,スムーズに動いている。新聞などではPDFの入稿が多い。商業印刷でもPDFがかなり普及してきた。ところが日本ではそこまで行っていない。PDFは,電子文書をどこででも見れる便利なフォーマットとして,普及している。しかし,印刷用としては利用されていない。
ただ,ワークフローRIPを供給する側の日本のメーカーは,世界の市場を見てExtremeベースに動かざるを得なかった。

TIME誌とPDF/Xの動向

TIME誌は世界でも大部数を誇るニューズマガジンである。TIME社は,データ入稿にDCS 2,PSデータ,TIFF/IT-P1を使用していたが,2002年からPDF/Xに移行した。印刷会社に対しても,PDF/Xのデータで送る。TIMEが移行した理由は,クロスメディアに対応するためだと言っている。

PDF/X-1aはISO 15930に認証されている。PDF/X-1,PDF/X-2,PDF/X-3とあり,PDF/X-1がCMYKのデータのみを扱う製版専用のデータである。PDFを作成する際の自由度を制限することで,互換性を高め,間違いが起こらないようにしている。AdobeのPDF 1.3のサブセットで,プリプレス用に特化している。その中にはトリムボックス(トリミングの枠)だとか,トラップキーといってトラップ処理のためのデータが入るようになっている。
PDF/X-3はカラーマネージメントができるRGBデータ,あるいはLabのデータを画像として入れることができるものである。
TIMEはPDF/X-1で,ベクター型のデータを使っている。PDF/X-1にはラスター型とベクター型と両方使える。ラスターであれば,解像度が入っているわけで,ベクター型は解像度に依存しない。
日本でも日本雑誌協会の活動が活発化しており,雑協の色標準というのをつくった。少し前には電通,博報堂がADF(Advertising Distribution Format)というフォーマットを広めようとしたが,実際には広まらなかった。
今後おそらく,PDF/Xが主流になると思われる。データが小さいこと,互換性が高いこと,受け取れるハイエンド・システムも増えている。
Acrobat 6.0 Professional(英語版)は,PDF/Xをサポートしたこと,セキュリティ向上,コンポジットしかできなかったものが色分解ができるとか,プリフライトを内蔵しているそうである。日本語版がどうなるか,詳しいことは今後注目していくべきだろう。

日本でのリアリティ

今後,日本でプリプレスのワークフローの最適化を考えると,データフォーマット,プルーフなど,ワークフローの中でどのように組み立てていくかということだろう。いろいろなソリューションが出てきているが,すべて検証されていないので,なかなか難しい。

2003/07/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会