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クライアントをその気にさせる企画提案・プレゼンテーションの仕方

神奈川インターパブリッシング協会副会長ドキュメント インフォメーション コンサルタント 高木雅治

景気の低迷,インターネット普及やIT活用による受注環境の変化で印刷受注を取り巻く状況は厳しい。特に「最初に製品ありき」型の製造業とは違い,「受注」を基本とする印刷ビジネスにおいては,営業のウエートはより高く,営業力の強弱が会社の業績に直結する。このような状況で,営業には印刷物を受注するという姿勢から,クライアントの課題を汲み取り,そのニーズにこたえることでビジネスを作りだして行くことが望まれる。求められるのは積極的にクライアントの課題解決につながる提案を行っていく姿勢である。そのためには,顧客の課題やニーズを汲み取ること,そしてそれに対する答えを的確に企画提案できるプレゼンテーション力が重要になる。今月は,企画書作成・プレゼンテーションのコツを解説するとともに,企画提案営業の実例を紹介することで,仕事を創り出す企画提案とは何かを探る。

■提案営業といわれているが
印刷業界の営業の人たちで,お客さま(クライアント)に対して見積書は出すが企画書や提案書といったものは,あまり作ったことがないという人がほとんどではないでしょうか。 これまでは,クライアントと既に長い間お付き合いがあって「新しい仕事も先方から依頼があれば営業はそれを制作や印刷へ受け渡すだけ」といった,従来型の営業スタイルを踏襲していれば済んでいたのかもしれません。
しかし,現在の厳しい社会環境では発注量は少なくなり,競合会社も多くなればなかなか仕事をもらえません。そこで,こちらから積極的にアプローチする必要が生まれてきました。だが,入社以来提案営業のノウハウを教わっていない営業マンは,提案の仕方が分からないのが現状ではないでしょうか。

■どうすれば提案営業ができるか
いきなり提案といっても,情報がなければどうしようもありません。日ごろから顧客情報をしっかり収集し整理しておきましょう。「顧客リスト」を作成し,そこに営業活動で気づいたことを分かりやすくまとめます。ここがポイントです。最近流行っている論理思考による情報整理術を身に着けると,いざ提案といった時きっと役に立ちます。書店に出回っていますので参考にしてください。
例えば「SWOT(スウォット)分析」で顧客の「強み」「弱み」「機会」「脅威」を調べておくことも必要かも知れません。また,「ロジックチャート」を使って,提案項目を整理することも大切です。このように,いつでも使える顧客情報をもっていないと,クライアントを説得する提案はできません。今からでも遅くはありませんので,まずは「顧客リスト」を作ってください。

■提案書作成は手順を踏まえて
情報はとりあえず集まったとします。いつもの口頭による説明ではなく,きちんと「提案書」としてクライアントに説明できたら,言葉だけの提案より説得力が高まります。ここでは提案書を作る手順をご紹介します。
【1】まずは提案のテーマを明確にする
社内資料とは違って,クライアントへの提案書は「表紙(タイトル)」が重要です。クライアントは,これから何を話す(提案される)のか,期待して待っています。そこで,タイトルを読んでもピンとこなければ,内容を見る意欲も半減してしまいます。これから見てもらう提案書が魅力的かどうかは,表紙の作り方次第で変わってきます。手に取って見てみたいという気持ちにさせることは,プレゼンテーションが成功するかどうかの重要なファクターの1つです。
表紙で提案の主旨(目的)が相手にしっかり理解されていれば,本文の内容もスムーズに見ていただけるでしょう。特にパソコンを使ったプレゼンテーションでは,表紙は重要なカギとなりますから心を込めて作ってください。
PCプレゼンテーションソフトで提案書を作成する時,最初に表紙を作るケースがほとんどでしょうが,実際の作業では,本文を構成してから,その後に表紙や目次を作った方が効率的です。というのも後ほど説明しますが,本文フォームを作成し,その内容やイメージをまとめたものを「表紙」として表現したほうが,タイトル表現も分かりやすくなり,統一されたデザイン表現が容易になります。

■まずは全体構成をしっかり押さえる
とりあえず提案したい情報(本文)をばらばらに作り,後で並び替えて提案書として作る人がいますが,この方法では作業時間に無駄が生じるだけでなく,説得力に欠けたドキュメント(文書)となりがちです。ファッションで例えるとアクセサリーを着け過ぎて,ポイントが見えなくなるようなものです。提案書の基本は「テーマの明確化」ですから,あれも言いたい,これも言いたい,ではなくポイントを絞り込むことが重要です。「今回の提案の目的は○○○です」のように,多くても3つぐらいのテーマに絞り込みます。そのためにも,「内容の組み立て」や「シナリオの作成」が大切です。まとめると,次のようになります。

【2】内容を組み立てる
いきなり,PCで作成するより,鉛筆などでラフスケッチを描くようにします。提案書には解答があるのではなく,クライアントにいかに理解してもらえるかがポイントですから,いろいろなケースを想定してじっくり構築します。先ほどのロジックチャートの例は,ここで活用すると効果的です。「内容の組み立て」つまり提案骨子をまとめる時,「だれに」「何を」提案したいのか整理し,(1)○○○に関すること,(2)○○○に関すること,(3)○○○に関すること,のように箇条書きでまとめます。
【3】シナリオを作成する
次に,「シナリオ(提案項目)の作成」の段階で具体的な情報を作成します。ここで初めてこれまで収集していた,あらゆる顧客情報が必要になるわけです。いつもクライアントにとって何が利点(ベネフィット)となるかを考えておきます。提案とはクライアントニーズの明確化です。
【4】ページを組み立てる
「ページの組み立て」では,提案の論理展開を頭に描きながら,全体ボリュームを設定します。特にPCによるプレゼンテーションの場合,ペーパーと違って時間が限られていますので,短時間で理解してもらえるよう,ポイントのみで組み立てます。詳細説明や補足資料などは,質疑応答のための資料としたほうが受け手(クライアント)の理解力が高まります。

(以下詳細は本誌へ続く)

■高木雅治(たかき・まさはる)
約30年間,三井物産,東芝,富士ゼロックス等にて企業のドキュメント設計を中心に仕事を行う。現在,富士ゼロックス総合教育研究所専任トレーナーとして人材育成教育プログラムの講師を務める。また,神奈川県専修学校の方々と生涯学習教育ツールの企画制作に参画する。
連絡先 dictakaki@yahoo.co.jp

『プリンターズサークル7月号』より

2003/07/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会