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広がる小規模企業のEMS取組みへの支援

世界のISO14000の認証取得件数は倍々の勢いで伸びてきている。「ISO MANAGEMENT System 2002年9−10月号」によれば、1996年に1,500件に満たなかったISO14000の認証取得件数は2001年末で36,765件になった。2000年からの1年間での増加は13,868件、前年比60.6%増である。この中では日本企業の認証取得増加が最も大きく2001年だけで2567件増加している。
このような中で、小規模企業の認証取得促進が世界各国での共通の課題になってきている。中小企業は、どの国においても経済の背骨である。世界の企業約7300万社のうち、6500万社が中小企業という。中小企業のISO14001導入の障壁にはいくつかの要因が考えられるが、最大の要因は認証取得のコストと時間及び人材の不足である。しかし、中小企業がEMS(環境マネージメントシステム)を採用しなければ社会全体としてのEMSの効果は著しく損なわれる。したがって、いま、世界各国で中小企業のEMSへの取組みを促進する動きが出始めている。「ISO MANAGEMENT System」では、カナダとベルギーでの取組みが紹介されているが、オンラインでの中小企業支援の学習センター的なもののようである。

日本においても、より少ない審査時間や費用での認証取得ができるよう支援する仕組の提供が検討され始めている。全日本印刷工業組合連合会は「ネットEMS/ネット審査システム」を2003年10月から稼動すると発表した。ISO14000認証取得を目指す企業は全印工連のWebにアクセスし、「ネットEMS/ネット審査システム」が提供するソフトを使って認証取得に必要な文書作成やその管理を行う一方、監査機関はネットを通じて書類審査等を行う。このことによって従来に比べて少ない期間、費用での認証取得を可能にしようとするものである。また、日本水なし印刷協会はすでに「印刷ネットEMS」の提供を始めた。全印工連では同システムを利用すれば、取得期間は4ヶ月強、取得費用は100万円〜300万円で済み、いずれも従来コンサルティングを依頼して取得するのに比べて半分以下になると見ている。

上記のようなISO14000 認証取得支援とは異なるユニークなシステムが「エコステージ」である(東京エコステージ研究会事務局(株式会社UFJ総合研究所内)TEL 03-3572-9030,Eメールteshimam@ufji.co.jp)。「エコステージ」の特長は、各企業のEMSの現状に応じた水準から取組みを始めて、順次高度な水準にレベルアップするように「継続的改善」を促進する仕組みを提供している点である。EMS導入の初期段階としての第一ステージから、ISO14000取得レベルの第二ステージ、そして環境会計が実現でき情報開示によって環境パフォーマンスの改善および社会とのコミューケーションが実現できる水準としての第5ステージまでの5つのレベルが設定されている。
したがって、既にISO14000の認証取得をした企業がワンレベルアップして、営業、購買、工程、物流などの管理システムにも環境への配慮を実現しようとするならばエコステージ3にチャレンジすればよい。また、いままでEMSに全く取組んで来なかった企業、あるいは時間的、金銭的な制約があってISO14000の認証取得に支障を感じている企業には、エコステージ1を取得することが勧められる。エコステージ1は基本的な経営管理要素について環境配慮が実施できる段階で、ISO14000レベルへの準備ステップとなる。

EMSは、取引先との関係から形式的に行うといったものではなく、それによって企業の社会的責任を果たしつつ、企業体質を強化して利益に結び付けていくことが本来である。そのためにはEMSを自社の血肉にしていくことが不可欠であり、エコステージの「継続的改善」という考え方は大切にしたいものである。

(出典:JAGAT info 2003年7月号)

2003/07/18 00:00:00


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