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アウトラインフォントの雑学(2)─フォント千夜一夜物語(30)

1文字を構成する文字のグリッドサイズは、画面表示に大きな影響を与える。この意味は、グリッドが粗いと文字の細部まで表現できないことになり、逆に細かすぎるとデータ量が多くなるということである。

●TrueTypeのヒンティング
アウトラインフォントは、文字の輪郭情報だけで画面表示を行なう。したがって実際にモニター画面やプリンタに出力する場合には、輪郭の内部を塗りつぶす、つまりビットマップデータに変換するわけである。

TrueTypeとTrueTypeフォントは、Macintoshでは漢字Talk7以降、WindowsではWindows3.1からサポートされるようになった。

従来RIP(Raster Image Processor)側で、アウトラインフォントのラスタライジング(ビットマップに変換すること)が行なわれていたが、TrueTypeはパソコンのOS内部でこの処理機能を行なうラスタライザである。パソコン本体側でビットマップデータに変換し、画面表示とプリンタ出力ができる機能をもっている。

比較的大きなサイズ出力の場合には問題はないが、小サイズ出力の場合は文字の輪郭情報をグリッドに合わせるようにアウトラインを変形させる。これを「グリッド・フィッティング(grid-fitting)」という。

この処理を行なわないと「ドロップアウト」と呼ばれるドットのヌケ現象が起きる。これが文字品質に影響を及ぼす。

では何をヒンティングするのであろうか。ラスタライザがフォントの特徴を参照するときに「フォントレベル」または「画」レベルでのヒンティングが行われる。

「フォントレベルのヒンティング」とは、フォント共通の特徴であるストローク、つまり文字を構成している字画の平均的な幅や調整する数値などにより決定される。また「画レベルのヒンティング」では、カーブに最適なビットマップが得られるように変更する。

漢字のような表意文字の「画」は、ストロークがいろいろな方向に伸びて、しかも形状が複雑である。しかしすべての画は基本的に正方形に収められる。

フォントデザインにおいては、縦線や横線などの直線のストローク以外にも、傾斜のストローク、カーブしたストローク、末端処理を施したストロークなどの幅にも神経を費やしている。

「画」レベルでのヒンティングを行う目的は、文字の特徴を活かして、小サイズで文字品質が劣化するのを防ぐためであるが、「画」レベルのヒンティングにはいくつかのポイントがある。 まず「グリッドフィッティング」がある。ラスタライザは「画」の座標をグリッド位置に合わせるとき、できるだけ高品質になるように配置する。配置はアウトラインフォントのラインの幅に影響を与える。

次はカーブの直線化である。書体の優美さを出すための必要な微妙な情報は、低解像度で小サイズの文字を出力するときには、逆に美しさを損なう原因となる。このような場合には、ラスタライザは文字を生成する過程で、微妙な情報を省略することで美しさを保つことになる。

次には「スペーシングコントロール」がある。この制御は小サイズの出力時には重要な技術で、特に画数の多い文字には有効な方法である。

この手法は「ホワイトスペーシング」と呼ばれ、このホワイトスペーシングのバランスは、漢字などに重要な特性である(図参照)。白い部分の幅が均等になるように処理するわけである。この他に「グリッドフィッティング」や「ドロップアウトコントロール」などがある(つづく)。

図 ホワイトスペーシングの例



フォント千夜一夜物語

印刷100年の変革

DTP玉手箱

2003/08/02 00:00:00


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