本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

プリプレスにおいて活用されるRIPとPDFの技術

HarlequinRIPやJawsRIPと言っても,国内の印刷業界では馴染みが薄いかもしれないが,非常に多くのプリプレスメーカーやプリンタメーカーにおいてRIPエンジンとして採用され,使用されている。グローバルグラフィックス株式会社代表取締役の萩原佳之氏に,同社のRIP技術とPDF技術についてお話を伺った。

グローバルグラフィックス社の概要

グローバルグラフィックス社は,本社はフランスにあり,研究・開発拠点はイギリスのケンブリッジにある。2003年2月に日本法人を東京に設立した。グローバルグラフィックスはHarlequinやJawsなどPostScriptインタープリタ・コア技術とPDF関連技術を保有する企業である。
グローバルグラフィックス社の製品は,主にデジタルプリプレスや大判カラープリンタ,プリンタ,複写機,カラープルーフのメーカーにOEM提供し,各社の製品に組み込まれて,エンドユーザに販売されている。Jaws製品のいくつかは,パッケージとして販売もおこなっている。

HarlequinRIP

高〜中解像度にオプティマイズされており,オプションとしてHarlequinスクリーニングライブラリ,カラーマネージメント,In-RIPトラッピング,CIP3などのプラグインが利用可能で,短期開発出来るのが特徴である。

最新のHarlequin RIPの特徴は,PDF 1.4形式にネイティブで対応しており,PostScriptに一度変換しないので処理が高速である。「透過」の出力にも対応している。また,In-RIPトラッピングも強化されている。入力ファイルタイプではPostScript1,2,3の他,PDF1.4,PDF/X-1a:2001,PDF/X-3:2002にも対応している。また,TIFF/IT-P1やその他のイメージファイルにも対応している。フォント形式は,PostScriptの標準的な形式には当然対応しているが,内部に登録するときにDLD1(Demand Loadable Fonts)というHarlequinの独自フォーマットに変換している。これによりデータ容量を小さくし,処理スピードを高速化することができる。

HarlequinのアーキテクチャでJawsとの大きな違いは,コアの内部にモジュールを追加できないことである。逆に言えばカラーマネージメントのような機能は標準で全て用意されている。
Harlequinの対象市場は,イメージセッタ,CTP,デジタルプリント,大判プルーファ,インクジェットプルーファである。最近ではデジタルプリンティングとモノクロ,カラー複写機にも広げている。
Harlequinはハイエンド・プリプレスにおけるPostScript互換インタープリタの最大のサプライヤである。ハイエンド・グラフィックアーツ市場で約50%のシェアを保持している。1985年からビジネスをしており100,000台以上の市場での実績がある。

JawsRIP

低〜中解像度にオプティマイズされており,低価格でポーティングが容易でありフレキシブルなのが特徴だ。
JawsRIPはPostScript 1,2,3,およびPDF1.2, 1.3, 1.4形式にネイティブに対応している。Jawsには標準バージョンの他に,組込み型のバージョンがある。
一般に,RIPは入力されたPostScriptファイルをビットマップ形式に変換するものだが,JawsはPostScriptを受けてPDF形式のファイルに変換,または特別なラスターフォーマットに変換することも可能である。また,入力としてPDF,PostScriptを受けて,異なる形式のPostScript,EPS形式に変換することも可能である。

JawsRIPの対象市場は,主にモノクロ,カラーのデスクトッププリンタ用内蔵RIPや,カラー,モノクロの複合機用の内蔵RIP,大判インクジェットプリンタ用のRIPである。
JawsやHarlequinのRIP技術は,多くのプリプレスメーカーやプリンタメーカーにライセンスされており,それぞれ50〜60社ぐらいのカスタマーがある。

PDFの技術

PDFファイルの生成・表示・編集・配信技術はJawsをベースにしている。
Jaws PDF CreatorはPDFファイルを生成するアプリケーションである。Windowsの印刷システムに仮想プリンタとして組み込まれ,通常の印刷操作でPDFファイルを生成する。セキュリティの対応として,RSA Security社からRC4のライセンスを受けている。暗号化の方式はAcrobat Readerと100%の互換性がある。パスワードによるファイルの保護や,印刷の制限,PDFの変更の制限を加えることができる。

日本ではジャストシステム社から,Justsystem PDF Creatorとして,既に販売されており,WordやPowerPointから,しおり,リンク,注釈に対応したPDFファイルを生成することができる。自社ブランドのJaws PDF Creatorも,8月から出荷開始予定である。
AcrobatでいうとDistillerに相当するのがJaws PDF Creatorで,既存のPDFファイルを編集するにはJaws PDF Editorを使う。サムネールやしおり,マークアップやコメントの追加・編集,ページアセンブルなどが出来る。
Jaws PDF Serverはサーバータイプの製品で,全てのクライアントPC/Macにインストールすることなしに,サーバーに接続されるクライアントPC/MacからPDFファイルを生成することが可能となる。
Jaws PDF Libraryは,アプリケーションメーカー向けのライブラリ製品である。PDF,PostScript,EPS形式のファイルを,違うファイル形式にフォーマット変換することができる。 QuarkXPressの次期バージョン6.0へ搭載されることが決まっている。

Jaws PDF CourierによるPDF入稿の仕組み

Jaws PDF Courierは,サービスビューローが,顧客の印刷したいドキュメントをPDFに変換し,暗号化して,インターネット経由でサーバーにアップロードする仕組みを提供するものである。SDKでの提供であり,システムインテグレータ側で,ユーザインターフェイスなどを構築する必要がある。
Jaws PDF Courierのサーバーはサービスビューロー側に設置され,クライアントソフトウェアは顧客側のPC/Macにインストールされる。顧客は,印刷したいドキュメントを,プリントの操作をするだけで,印刷に適したPDFファイルを生成し自動的にアップロードする仕組みとなる。
クライアント側で,暗号化されたPDFファイルが生成され,プリフライトが実施される。検証済みのPDFファイルが,サービスビューロー側に転送される。その後,印刷指示のためのジョブチケットを生成してサーバーに送る。サーバーは暗号化されたPDFファイルを解凍する。
Jaws PDF Courierの利点は,入稿データが印刷に使用できるかどうかの心配が激減することや,教育が簡単なことである。入稿確認書(印刷指示書)をジョブチケットとして受け取ることや,Webでの進捗確認により,問い合わせも大幅に減ることになる。

2003/08/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会