検索エンジンのGoogleの新BETAサービスで,今までオンラインでは見られなかった印刷された通販カタログのサーチがある。さまざまな分野の何百というカタログがスキャンされて,だいたいA4サイズで200KBほどのJPEG画像で配信されている。印刷物からのスキャンをこれくらいに圧縮すると,画像のきれいさという点ではそれほどの魅力はないが,文字をくっきりさせているので実用上は問題なく読める。今日はブロードバンド環境になったので,これくらいの容量のページはスイスイめくりながら見ることができ,紙のカタログに再会というのは奇妙な気がする。
特徴であるロボット検索ではなくて,googleはこのサービスに通販業者が自分のカタログを登録することを勧めている。通販企業がカタログを郵便でgoogleに送ると,タダで電子カタログ化をする。カタログの更新時も同様である。取り扱うカタログの範囲は,きちんと価格の入ったオーダー用のものに限る,モノではないサービスはダメで酒・タバコ・武器など,問題になりそうなものも扱われない。
紙のカタログはスキャンの際にOCR化され,キーワード検索ができる(当然英文だけ)。またいくらかページ間でのリンクも貼られているようである。この電子カタログは,タイトル,発行時期,管理コード,注文の電話,WebのURLなど,紙のカタログのメタデータがついており,紙のカタログと同じ,あるいはWebとの連携でもっと便利に発注できるように配慮されている。
Webの初期にもビットマップデータを送るものはあったが,非常に評判は悪かった。では今回のgoogleの電子カタログは時代錯誤的な試みなのだろうか? しかしDELLでさえも48ページほどある立派なカラー印刷カタログが載っており,こういうのをDELLが無視しているわけではないことを知って驚いた。過去の不評ものとの違いは,googleがOCR,メタデータ,リンクというさまざまな技術を組み合わせることによって,ただ紙面を眺めているだけのスキャン画像ではなく,紙面に機能を持たせた点である。
今はまだ試験期間だから,これからどのような機能が加わっていくか分からないし,サービス形態もどうなるか分からないが,紙のカタログの一覧性の良さと,紙面の裏側に機能をつけて,双方の良さを組み合わせるという試みは,ブロードバンドで盛んになる分野かもしれない。
■出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」172号(巻頭言)
2003/08/12 00:00:00