本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

市場ニーズに対応する製本・後加工の動向

製本機械のデジタル化も着実に進み、各調整部分の遠隔操作やプリセット化による脱技能化、自動化が実現されてきた。今後のデジタル化の方向は、パーソナル化に対応するセレクティブ・バインディング、セレクティブ・パッキング、CIP3/CIP4対応の自動化、そしてデジタル印刷システムと連動したオンデマンド製本である。

徐々に広がるセレクティブ・バインディング

欧米では、稼動している高速雑誌・カタログ専用中綴機の多くにはセレクティブ・バインディングとインキジェットによる印字機能が装備されて動いているという。セレクティブ・バインディングは、日本でもカタログ分野で使われるようになっている。全ての顧客に同じカタログを配る従来の方式に比べてレスポンス率は数倍に上がるという。顧客毎に、メインカタログ以外のサブカタログ、DMなど異なる内容、形状の印刷物数十点を自動的に選択、封入するランダム封入システムもあり、市場調査や各種テスト送付などの幅広い利用も期待できる。

市場投入が始まったCIP3/CIP4対応機

昨年あたりから、CIP3/CIP4対応の製本機が大ロットから小ロット向けまで発表されてきている。その先鞭をつけたのがハイデルベルグの「スティッチマスターST400」である。面付けソフト「シグナステーション7.0」で中綴じ機の設定に必要なデータ(折丁の寸法設定,針金の長さ調整、本の寸法に合わせた位置調整、三方断裁寸法,スタッカーの寸法調整,冊数設定)を作成し、FCS100を通してデータを送り中綴じ製本機各部の調整機構をプリセットすることができる。CIP対応でなくてもセット替えは10分程度で済むが、JDFへの期待は、機械の稼動状況をリアルタイムに捉えることや細部の稼動記録から効率化を考えるための情報を得ることである。

ホリゾンは、PAGE2003で大日本スクリーン製造とのコラボレーションでCIP3/CIP4対応の「i2iシステム」を実演、大きな反響を呼んだ。折り調整に必要な情報が書き込まれたポストプレス用のPPFデータをDSのFlatWorker5.0 から受け、不足データを変換プログラムで補って折機の自動調整に必要な全てのデータを作る。データは折機に送信されて調整必要個所が自動設定される。セットアップ時間は従来の1/10分程度にまで短縮される。 「i2iシステム」では、既に各機械からの情報が随時フィードバックされ、リアルタイムでの進捗状況確認や各仕事のデータを書き出して月次集計処理ができる。MISとの直結は少し先になるようだが製本工程部分のCIM化はもう手の届くところにある。
同社は、ゼロックス社のDocuTechと連結してオンデマンドでくるみ製本ができるシステムを出しており、UP3i(Universal Printer, Pre and Post Processing Interface))の動きも出てきているので、こちらでの動きもこれから楽しみである。
ミューラー・マルティニの中綴じ機「ブラボスプラス」はCIP3,CIP4対応の自動セット替えシステム「AMRYS」をオプションとして搭載できる。

CCDカメラ方式への切替が進む乱丁防止装置

製本工程は印刷物製造の最終工程であり、そこでの品質不良は他のどの工程におけるよりも大きなマイナスをもたらす。丁合機の乱丁検査では、従来のような背標を濃度センサーで読み取る方式から、格段に高い精度で検査ができるCCDカメラ方式への切替が進んでいる。
正しい折丁の画像を読み取り、各駒台から流れる折丁一折毎の内容と比較し,乱丁,落丁を防止する。丁合機上の印刷物の位置がずれていても正確に検査できるし、カメラと対象との距離の許容範囲も広くとれ、従来の濃度センサーでの読み取り方式に比べて柔軟性の点でも優れている。事前の読み取りはオペレータの設定により行うことも,外部信号の入力によってオペレータが介在しないで自動的に設定することもできる。
しかしながら、念には念をということで、固定式レンズ乱丁防止装置とCCDカメラで2重チェックをしている会社もある。

普及がいまひとつのPUR

製本強度向上、見開き性の改善、紙のリサイクル適性などの期待から、空気中の水分によって反応が進み硬化するPUR(Polly Urethane Reactive)の利用が始まっている。代表的な事例として、PURホットメルトで綴り本の表紙くるみをした道路地図帳がある。道路地図は、見開きの良さ、見開きの絵柄のわたりの厳密さ、さらに真夏、真冬に車内に放置されるという過酷な条件下でも壊れないといった厳しい製本条件が要求される。糸かがりをした上でPURで表紙をくるんだ道路地図は見開きがよく、表紙の剥がれも無く本を閉じた時の復元も良好である。
その他、高級書籍、文庫本での実用例があり、製本後、長期を経た無線綴じ本の壊れの問題も解消できるということだが、管理面での問題に対する工夫、使いこなしのための習熟の必要性、そしてPURホットメルトが高価であること等の理由で普及は今ひとつのようである。

市場ニーズに対応するさまざまな製本・後加工

環境問題対応や安全性などに関連する市場の要望を取込んだユニークな後加工技術もいろいろ出てきている。
環境対応の面から、CDのケースをプラスチックではなく紙製のものに置きかえる提案が業界から出されているが、ユニークなものとして、CDハードカバーの裏側にCD-DVDを収納し、糸かがりあるいは無線綴じした解説パンフレットを中本としてくるんで一冊の本の形にしたものがある。
針金を使わない中綴じ「糊綴じ製本」は、印刷物の利用者への配慮と両端折り・変形折りを取り込むことが可能で差別化した印刷物提供を可能にする。小ページ数物ではオフ輪のラインのなかで使うことも有効である。本の利用者が、中綴じに使われる針金で指などを傷つけることを避けるための製本方式として「逆中綴じ」もある。
雑誌の付録の添付や広告ページへの現物添付を自動化するアタッチャーが増えている。郵政の公社化で、郵便物に関する各種規制の見直しが出てくると、DM分野で新たに多様なニーズが出てくる可能性がある。

環境問題との関連では、グラビア印刷、表面加工分野での「埼玉県生活環境保全条例」を巡る騒動は一段落したがあくまでも時限付のものであり、非常に厳しい対応が迫られていることに変わりはない。表面加工は、ラミネートからコーティングに移行していくことになるのだろう。

(出典 「2003-2004 グラフィックアーツ機材インデックス」)

「グラフィックアーツ機材インデックス」の内容

2003/09/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会