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アウトラインフォントの雑学(4)─フォント千夜一夜物語(32)

前回の第31回で「フォントレベルのヒンティング」の一つ、「水平アラインメント」について欧文文字を例にとって説明した。

欧文文字は横組みが基本であるから、横方向に並べることだけ考慮してデザインされている。したがってヒンティングにおいても「水平アラインメント」の要素だけを重要視していることになる。

ところが和文文字は、縦組み/横組みが存在するから、水平方向だけではなく垂直方向にもアラインメントの要素は欠かせない。したがって和文の場合は、文字の揃えは各文字のデザイン上の「寄り引き」に左右される、という表現が適切であろう。

フォントデザインによっては、寄り引きが良くないフォントを見かけるが、元の原字上の寄り引きが不良な状態では、ヒンティングで補正することは不可能である。むしろ和文の場合は、ストロークの幅や形状に対するヒンティングの方が有効な手段になる。

●ストローク幅のヒンティング
アルファベット文字「H」の例で見ると、2本の縦のストローク(ステム)は同じ幅でなければならない。またステムの上下についているセリフの幅や形なども同じでなければならない(図2.参照)。したがってフォントはストロークの幅以外にも、いくつかの要素をもっているわけである。

すなわち水平と垂直のストローク、セリフ、曲線のストロークなどである。したがって平均的なストローク幅以外にも、ストローク幅を生成する方法がある。

また和文文字の「言」の例でいえば、縦画と横画だけの単純な字画構成であるが、この場合の「口」の2本の縦のストローク幅は同じでなければならない(実際には原字上では錯視のため厳密にいえば、縦画の右側の太さは、左側の太さより少し太めにデザインするものである)。

しかし低解像度のビットマップに展開すると、量子化誤差により2本のストロークの幅は同じにならないで、1ピクセルと2ピクセルのようになることがある。そこでヒンティングを施して、縦のストロークを2ピクセルに統一するという処理をする(図3.参照)。

しかし幅のヒンティングはできても、縦画の位置はグリッドに左右されるので、必ずしもバランスの良い位置に設定されるとはかぎらない。その結果、縦の寄り引き不良のフォントになる。

画面表示用の低解像度のドットフォントは固定サイズで作られているが、漢字・かなともに寄り引きは良いとはいえない。つまりグリッドサイズの制約から、無理にデザインしているから可読性を損ねている。そのため長文を読んでいると目が疲れるわけである。

またストロークの形状では、表意文字の漢字やかなのストロークの形状は複雑で、しかもいろいろな方向に伸びている。

タイプデザイナーは、水平・垂直や直線のストローク以外にも、傾斜ストローク、曲がったストローク、明朝体のウロコなどのように、末端処理を施したストロークの幅にも神経を使うものである(つづく)。

フォント千夜一夜物語

印刷100年の変革

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2003/08/30 00:00:00


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