渕上印刷が開発した印刷情報管理システム「リゾーム」は、ほとんどがWebベースで開発されたシステムである。平成13年から開発をはじめ1年後の平成14年の7月から運用を開始している。データベースにOracleを採用して、見積・受注管理、生産管理、用紙・資材管理、実績管理、製品別原価管理、部門別原価管理、外注管理、在庫管理などのアプリケーションからできている。運用環境では、CS(クライアントサーバ)の時期に端末台数が50台であたのが、Web化で200台の運用になった。これはWeb化による専用端末が不要になりブラウザがあれば使えることから1人1台のパソコン運用をベースとした情報共有を目指したシステムである。
Web化の目的としては、CS(クライアントサーバ)の問題点の解消という点が一番の理由であった。まずCSではWindowsアプリケーションとなるため、MACが多い印刷現場では使えない。またOSの違い(Windows3.1/95/2000)で修正が必要となり、プログラムの修正がある度に全端末にソフトウェアの配布が必要であった。
さらにネットワークの問題で利用範囲が制限されていたものが、Web化で解決され誰でもどこでも情報共有できるようになる。
しかしすべての機能をWeb化するには、実現が難しい機能がある。ひとつは複雑な操作やスピードを要求される操作があり、もうひとつには定型的な印刷などが難しいことがある。しかし印刷については最近これを解決できるソフトウェアが出てきているが高価である。
このような理由からWeb化するアプリケーションとしないアプリケーションに分けた。たとえば受注情報から大量な仕事のおおまかな計画を建てる大日程指示があるが、これは一日入力される作業が200件くらいあるので、非常に複雑な画面操作とスピードが要求される。このためこの部分ともうひとつ管理予定表などの複雑な帳票出力についてはWeb化は行っていない。
開発を行った渕上システムは、関連ソフトウェア会社であるが、外部のソフトウェア開発を仕事にしている。昨年後半からは外部から受注するシステムはすべてWeb技術によるシステム化が要求されているそうで、Web技術を利用しないシステムの提案では受注できない状況になりつつあるそうだ。
一般的にWebアプリケーションは、3層構造のシステムで実現する。まずブラウザ及びWebサーバで実現するプレゼンテーション部分、アプリケーションサーバで実現するビジネスロジック部分、そしてデータ管理を行うデータベース部分からなる。そのためサーバOSの選定、Webサーバの選定、開発プログラム言語の選定、データベースの選定が必要になる。OSの選定としては、Windows2000とLinuxを利用している。Windowsは操作面に優れいるが、経費や安定性に欠ける。現在も2週間に一回は再起動を行っている。これに対してLinuxは経費面と安定性に優れているがサポートの問題がある。しかし最近はLinux関連の本が出回っており、運用する現場でもそこしづつ知識がついてきているので使えるようになってきている
次にWebサーバの選択では、WindowsではIISを利用し、LinuxではApacheの利用になる。Web環境のプログラミングは、CGI(Perl,C,VBなど)やASP(VBScriptなど)、PHPやJavaServletなどの選択となる。実際の開発に利用したものは、CGIはサーバの負荷が高いため、ASPとPHPの選択とした。ただし、これからはJava環境のIDEと呼ばれる統合開発環境が整ってきているので、Javaを利用したJavaServletやJSPが主流になってくる。
一般的に開発環境と開発工数をみると、クライアントサーバでACCESSで開発するのに対して、WebシステムではASPでは実時間で3倍、PHPでも3倍、Javaでは5倍の開発時間がかかる。これは統合開発環境(IDE)がいろいろと出てきているので、たとえばWindowsでは.NETがあり、特にJava環境としてはLinux環境でEclipseやSun One Studioがあり、BEA WebLogic Workshopなどが出てきているので、これらを利用することでプログラムの生産性が上がることが期待できる。
今までVisual Studioなどでは、表示する位置などをマウスでドラッグして変えるようなことができていたが、IDEが進歩することでJava環境でもマウスで画面の作成や画面と画面のリンクなどが簡単に実現できるようになりつつある。そのため開発時間が従来の5分の1になるという話もある。
オフコンなどからWeb化への移行を行うには、2重の投資を避けるために完全Web化を狙う方がよいが、一括移行は不具合も最初の頃は多く出たり、運用の慣れの部分もあるため、既存システムを有効に活用する手だてを行いながら、徐々に移行するのがよい。
そのためのツールとして、アプリケーションサーバで画面を加工するツールとか、Web上で画面を表示する端末エミュレータ、ファイル転送、メッセージ連携など過去のプログラム資産の延命とWeb化を実現できるツールがあるのでこれらを利用する方法がある。
渕上印刷が開発したリゾームのシステム構成は、データベースはWindows2000にOracle9iを載せ、見積・受注・原価・資財管理のアプリケーションをWindows2000とIISを利用してASP環境で開発を行っている。これに対して生産・外注・在庫管理のアプリケーションはLinuxにApacheを載せPHPで開発を行っている。
Oracleの選択理由には大規模DBに対応しツールが充実している点がある。Windows2000とLinuxを利用している点は、ひとつは開発時期の違いと過去遺産がある。Windows2000を利用した部分はVB資産があるためで、その後PHPが使えるようになったので、将来も考え安定性のあるLinuxを利用した部分とがある。
1年運用して400万件の情報が貯まったが、特に速度的には問題もなく動作している。
Web化で注意すべきことは、WindowsとMACにより速度に大きな違いが出てくることである。たとえばWindowsで3秒で表示できる受注画面がMACでは10分もかかる。OS10では解決されているが、これはMACのOS9の問題で表示に時間がかかる。このため一度に表示する量を減らすことで、この問題を逃げている。
開発したリゾームの特徴は、鹿児島県内に7カ所ある営業所、工場から入力、参照ができるようになり、最新の作業仕様をブラウザで全員が参照できるので迅速な情報伝達が可能になったことがある。また画面項目の柔軟性を目指してプログラムの変更なしで見積・受注項目の変更が可能になる仕組みを実現している。
Webアプリケーションの特徴は、エラーチェックを3層で行える点がある。クライアント側ではブラウザ上でJavaScriptを利用して簡単な入力のチェックを行い、アプリケーションサーバにデータが渡ってからはASPでチェックを行え、最後はデータベース側でチェックを行える。
ただし、コード参照とかデータの絞り込みを行う場合には画面の切り替えを行う必要があり、速度や操作性の課題がある。画面表示については、HTMLを利用するためHTMLを自動で生成する事でダイナミックに変更が実現できる。これは先ほどのプログラムを修正せず見積・受注項目の変更ができる仕組みを容易にすることができる。
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2003/08/28 00:00:00