本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

スキャナからデジカメへの大転換

製版分野の機材動向を象徴する出来事として,カラースキャナの機材リストから日本アグフア・ゲバルトとハイデルベルグジャパンの名前が消えている。

製版用スキャナは新聞用ファクシミリの流れを汲む技術であるが、実用製版スキャナとしては米国タイムライフ社が写真誌の品質時向上ために子会社のPDIでコダックの特許を買ってスキャナを完成させたのが1950年。そして1965年には西ドイツ(当時)のドクター・ヘル社からクロマグラフが、イギリスのクロスフィールド社からダイヤスキャンが実用スキャナとして発表された。その後PDIスキャナはCEPS時代の対応できずに消え去り、ヘル社はジーメンスの傘下になった後、組版機メーカーのライノタイプにM&Aされ、ライノタイプヘル社となり、この会社も最終的にはハイデル社にM&Aされていった。当初ドラム型で発達したスキャナは、CCDの開発によって作られた平面型で普及した。しかし現在、印刷用途にデジタルカメラの利用が本格化するのに伴い、製版スキャナはニッチ用途になった。

印刷用のデジタルカメラには、35mm一眼レフのタイプと中判以上のカメラ用のカメラバッグタイプが多用されている。キヤノン「EOS 10D」は,有効画素数1,110万画素という非常に高い数値を実現した一眼レフタイプのデジタルカメラで,撮像素子には35mmフルサイズ(36×24mm)という大型のCMOSセンサーを搭載している。一般にデジカメのセンサーのサイズは35mmフィルムカメラよりも小さいためレンズの焦点距離が通常の1.4〜1.5倍になってしまうという欠点があったが,「EOS 10D」では同社の「EFレンズ」をそのままの画角で使用できる。

2003年9月1日出荷予定のクレオ「Leaf Valeo22」は,カメラバッグタイプのデジタルカメラで,48mm×36mmの超大型CCDセンサにより,2,200万画素(4,056×5,356)という高精度を実現している。また,一般コンシューマ向けのデジタルカメラであっても300万画素クラスの製品が続々と登場してきており,高機能化,低価格化の勢いは当分止まりそうにない。

一方で,カメラマン/制作会社/製版印刷会社間で,新たな役割分担,ワークフローが模索されつつある。デジカメデータの印刷利用において,大きな問題点となるのがRGBからCMYKへの色変換である。色再現領域(ガマット)の広いRGBデータをいかに品質を損なわず,あるいは品質を補ってCMYKデータにするかがポイントとなる。かつては入稿データはCMYKでないと受けつけないというケースが多々見られたが,今では高品質なCMYKデータを作成するのは,製版印刷サイドの仕事という認識が強まっている。RGBデジタル画像規格標準化研究会がまとめた「印刷入稿のためのRGB画像運用ガイドブック(ここからダウンロード可能)」においても,カメラマンはCMYKに変換せず,プロファイルを埋め込んだsRGBないしAdobeRGBのデータを製版印刷側に渡し,製版印刷側は,そのデータをきちんとしたCMYKに変換して安定した印刷をするという役割分担が推奨されている。

デジカメRGB画像をCMYKに変換するツールとしては大日本スクリーン製造「ColorGenius DC」,富士写真フイルム「PICTUNE21」がある。これらにはスキャナのノウハウが組み込まれており,Photoshopでのプロファイル変換に比べて,ハイライトポイントとシャドウポイントの設定,トーンカーブの設定,墨版の生成,シャープネスの設定等をきめ細かく行えるほか,いわゆる好ましい色再現が配慮されており,従来のスキャナライクの画像品質が得られる。また,大日本スクリーン製造「YUKIMURA」は,アドビシステムズ「InDesign」用のプラグインで,InDesign上に取り込まれたRGB形式の画像を、「ColorGenius DC」を利用してCMYK画像に変換し,InDesign上に反映させることができる。

デジタルカメラの標準規格としては、画像ファイルフォーマットの標準規格であるExif(Exchangeable image file format)とメモリカード間で画像データを交換・再生するためのファイルシステム規格DCF(Design rule for Camera)とがある。Exifでは、従来から標準色空間としてsRGB規格を採用しているが,現在JEITA(電子情報技術産業協会)で審議中のExif2.21,DCF2.0では,sRGBに加えてAdobeRGBをサポートすることになっており動向が注目される。

CMS対応が進む液晶モニタ

PC用のモニタの多くは液晶に変わってきているが,クリエイタや印刷業界では大半がCRTという状況である。その理由として,カラースペースが狭い,コントラストや色度が視野角によって大きく変わってしまう,ガンマ特性が滑らかでない,色調の調整が難しい,価格が高いといった点が挙げられる。一方でメリットとしては,省スペース・省電力,環境光の影響が少ない,画面がフラットで幾何学的な歪みが無い,経時変化が少ないといった点があり,色評価を行うビューアとしての適性は高いといえる。ここにきて弱点を解消しつつメリットを生かした製品が数多く登場してきている。

ナナオの「ColorEdge」はキャリブレーションソフトウェアを標準搭載した液晶モニタで,21.3型と18.1型の2つのモデルがある。sRGB相当の色再現域を実現したほか,見る位置や角度によって色合いやコントラストの変化が少ないパネルを採用している。また工場出荷時に1台1台のガンマ値を測定,調整を行っている。

中央無線の「PreferVisionLC」は,20.1型のキャリブレーション機能搭載モニタである。高輝度220cd/u,高コントラスト350:1を実現。またモニタキャリブレーションソフトのPrecisionColor LCは,CRTで培ったノウハウが活かされ色温度・ガンマの細やかな設定が可能なほか,モニタ同士の色合わせも可能である。

液晶モニタに対応したICCプロファイル作成ツールには,日本シイベルへグナー「Monaco EZcolor2.5J+Monaco OPTIX(測色計)」,恒陽社グラフィック事業部/きもと「GretagMacbeth i1シリーズ」,イメージワン「Spyder(測色計)with OptiCAL」等がある。 また,凸版印刷「CS-Sharpener Ver4.0」に新しく追加された「CS-ProfileCard(Monitor)」は測色機を使わず目視で印刷チャートとモニタ画面を比較しながら操作を行うユニークなツールで,環境光も考慮したプロファイル作成・キャリブレーションが可能。

リモートプルーフ 普及のカギは出力保証

デジタル化・ネットワーク化が進展する中で,校正刷りが物理的に行きつ戻りつする色校正の工程はワークフローのボトルネックとなりつつある。
得意先にデータを送り,先方のプリンタから出力するというリモートプルーフでは,印刷色に近い色再現,プリンタを含めた安価なシステム,OSやアプリに依存しない汎用的なデータフォーマットの利用,出力保証の仕組み等が求められる。
印刷色の再現についてはICCプロファイルを利用したCMS技術と汎用プリンタの性能向上により,実用レベルに達しつつある。特にインクジェットプリンタは価格が安く,しかも色再現の安定性に優れており適性が高い。最近ではソフトウェア・トゥーの「rosette Star Proof」やサカタインクスの「BEST Screenproof」のように印刷網点を再現する色校正用のソフトウェアが発売されている。

オープンなデータフォーマットとしてはPDFがその地位を確立しており,フォントやICCプロファイルのエンベッドにより,ある程度の品質保証が可能となっている。しかし,色校正となるとかなり厳密な色再現の保証ができないと責任問題になりかねず,解消すべき課題の最後に高いハードルが残されたかたちとなっている。

サカタインクスの「BESTColor4.6J」から標準搭載される「BEST Remoteproof」では,送信側・受信側の双方の出力物を分光光度計で測色し,測定値を比較し,誤差が許容基準内に入っているかどうかの合否結果を送信側に連絡するという仕組みを持っている。BEST Remoteproofでは,コンテナファイルと呼ばれるものをデータ転送に利用する。コンテナファイルは,RIP済みデータのPDFとカラーマネジメントの設定を記述したJDFファイルとICCプロファイルのデータから成る。また,測色は出力物の余白の15色のカラーチャートに対して行う。

また,ネットワークを介したソフトプルーフの仕組みとして,クレオの「Synapse Insite」がある。クライアントはリモートでRIP済みデータを画面で確認することができ,修正指示をオンラインで行えるほか,チャット機能も備えている。そして校了指示を出せば,クレオのワークフローシステム「Brisque」や「Prinergy」と直結してオンライン出力することも可能である。

「グラフィックアーツ機材インデックス」の内容

2003/09/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会