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アウトラインフォントの雑学(5)─フォント千夜一夜物語(33)

アウトラインフォントは、文字の輪郭情報だけで画面表示を行なう。したがって、実際 にモニタやプリンタに出力する場合は、輪郭の内部を塗りつぶす、つまりビットマップ・ データに変換する必要がある。

その際に発生する量子化誤差を補正する技術が「ヒンティング・テクノロジー」という わけである。

●グリッド・フィッティング
大きなサイズの場合は問題ないが、小さいサイズの出力の場合は、文字の輪郭情報をグリ ッドに合わせるように、アウトラインを変形させる。これを「グリッド・フィッティング (grid-fitting)」という。

●ドロップアウト・コントロール
このグリッド・フィティング処理を行なわないと、「ドロップアウト(drop out)」と呼 ばれる、ドットの「ヌケ現象」が起こる(図1.参照)。そこで「ドロップアウト・コント ロール」が必要になる。

ドロップアウトが発生した場合、ラスタライザは生成したビットマップを修正する必要 がある。大部分の場合は、1ないし2ピクセルの修正ですむものである。

●スペーシング・コントロール
この制御技術は、小サイズの時に重要な技術である。特に複雑な文字に対して有効な手 段となる。

スペーシング・コントロールには、「ホワイト・スペーシング」と「ブラック・スペーシ ング」がある。

「ホワイト・スペーシング・コントロール」とは、「目」のような文字の場合、4本の横 線相互間の空間を指している。このバランスは漢字の重要な特性である。(図2.参照)

制御方法は、アウトラインの再配置という形で実行される。また別な方法として、ホワ イトスペースの最小値を1以上に設定する方法もある。

「ブラック・スペーシング・コントロール」とは、ストロークの平均的な幅でコントロ ールする。また小サイズのときに線が消えないように、最少ストローク幅の制御を行なう 必要がある。

これは最少ストローク幅のデフォルト値を1ピクセルとした場合、ストロークの平均的 な幅が1未満になっても、最低1ピクセル分の幅を保持する機能である。このコントロー ルは、複雑な漢字を小サイズで表示したときに、黒い点になるのを防止することになる。

●結論
「アウトラインフォントの雑学」の章で、ヒンティング・テクノロジーについていろい ろ述べたが、ヒンティングはアウトラインフォントを、低解像度で小サイズの文字を表現 するときに、読みやすさを保持する技術である。したがって、高解像度で大サイズに出力 する場合は意味のない技術である。

ヒンティングの処理機能は、インテリジェントなラスタライザに組み込まれたり、ある いはフォントメーカーが膨大な量のコマンドをフォントデータのなかに組み込むことによ り実行が可能になる。そしてヒンティングのアルゴリズムは、それぞれの目的により異な ることになる(つづく)。





フォント千夜一夜物語

印刷100年の変革

DTP玉手箱

2003/09/13 00:00:00


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