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高齢者・技能者のノウハウをどう伝えていくか

具体的に提案しよう。
まず高齢者の技能,ノウハウを分類,整理し,レベル,能力値(等級のようなもの)別に,各社で登録すること(退職者を含めて……)。
その場合,企業別分類の時は,第1に烈しい技術革新の中でチンプ化しないノウハウであること,現状で生かすノウハウという切り口が大切になるだろう。第2に,「遺産継承」「次世代への教育システム」として捉えること。
金儲け主義だけでは持続できない。
高齢者側にも一言。自分の技能が,時代を越えて受け継がれていくノウハウである――という変化への対応力をもつこと。ポリシーは誇り高き技能者魂。現役時代から,自己能力をチェックし,人々に伝えるために,理論化し,テキスト化すること。そして,ノウハウの引き出しを多くもつエキスパートであること。高齢者よ,「陽残りて暮るるに未だ遠し」
生きる限り存在感をもとう。無防備に老いるな!「老人よ,大志を抱け!」と言いたい。生涯現役の心意気で生きよう。

(プリンティングディレクター 坂本恵一)


技能的ノウハウで書き表せるものはどんどんコンピュータに取り込まれて,機械設備が代替していくのがこれからの時代。高齢者・技能者のノウハウがマニュアル化できない大きな理由は,そのノウハウ自体によるものではなく,自らがそのノウハウを経験によって身に染み込ませてきた技能者の表現力の問題だと思う。だから,やりようによってそれを取り出すことは可能なはずである。ただし,個々の印刷会社ができることではない。
マニュアル化できないノウハウは,尽きるところ管理力,さらに言えば人間性ではないか?
その意味で,広い範囲で管理職経験の定年退職者と会社がお見合いできる場を業界として作ることは意義があると思う。

(東京 匿名希望)


難しい問題ですね。いろんな意味で世代ギャップが大きいと思います。伝えてもらいたいノウハウはいっぱいありますが,伝える側の高齢者の情報の出し方と,伝えられるべき側の若い人の教わる態度のアンマッチに悩みます。
昔のように時代がゆっくり流れて,両者が同じような境遇で育ったのだったら,当然伝わったような「当たり前のこと」すら,今日では伝わらないのですから。
仕事の環境は過去20年ほどで劇的に変わりました。その間にいろんな経験をしてきましたが,せっかく覚えても意味がなくなったことも数多くあります。例えば電算写植のコーディングなどです。
いまさらコーディングを教えてもらうことはないですが,コーディングの前に,今から作ろうとしている印刷物のレイアウト構造やデータ構造を考える時には,どこに着目するか,というのはXMLの時代になっても共通のノウハウです。
こういったノウハウを教えてもらうには,高齢者の方も作業レベルの考えに終始するのではなく,仕事全体をトータルに見ることが必要ですし,いくらかは今の技術を覚える必要もあります。
こういう作業以外の要素は,放っておいたら絶対に身に着けることはないでしょうから,高齢者と若者の間に調整役を,現在のバリバリの管理者がしなければならないでしょう。
手間の掛かることですから,自社のコア技術であると経営判断できるようなことに絞って,取り組んでいけたらな,と思います。

(大阪 匿名希望)


色や音,味覚のようなものは最終的には感性がモノをいう。カラーマネジメントシステムがどんなに発達しても,顧客の求めていることをすくい取れる感性,感受性が決め手になる。
個人に帰属するノウハウを文書化できれば一番良いが,実際には文書化できない部分も少なくない。
OJTをとおして積極的に後輩へノウハウを伝授するようにという意味もあってチーム制を取っている。その中で次の熟練者が育ってくれればと思っている。
(匿名希望)


後加工のような手作業が多い部分では,機械化が進んでいなくてもベテランの作業員が付いていると安心して任せられる。
もちろん熟練者のノウハウということだが,仕事に対する責任感の差も大きいようだ。コストを圧縮するために低廉な労働力にばかり頼っていると,大きなミスにつながって顧客の信頼を失うことにもなりかねない。
バイトでもできる仕事というような言い方をするが,当社のような小さな会社では,従業員の一人ひとりが掛け替えのない戦力である。
マニュアル化や標準化はもちろん今後とも進めるが,従業員のモラールアップ,モチベーションを高めることが何より肝心である。
CS(顧客満足)の前にES(従業員満足)があるということを忘れてはならない。働きがいのある職場,仕事に誇りをもてるような環境作りこそ,社長の仕事である。
(匿名希望)

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2003/09/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会