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デジタルイメージングのビジネス動向

デジタルイメージングは,紙文書などをデジタル化する技術であるが,最近デジタルイメージングのビジネスが変化し始めてきている。一つは電子帳簿保存法の施行がある。もう一つは企業内における文書管理で,特にカラー文書をデジタル化できるようになってきた点がある。

イメージングビジネスの創出

日本国内でイメージングビジネスが大きく伸びたのは,1994年後半から1995年であった。中でも大規模なものが国立国会図書館の電子図書館構想で,明治初期からのフィルムをデジタル化してデータベースにすることになった。フィルム化を行う国立国会図書館所有データは,明治時代のものが1500万コマ,大正時代のものが1000万コマぐらいあり,その大量のデータをデジタル変換し,検索システムを載せてスタートした。
また現存資源のマイクロフィルム,紙をスキャニングしてデジタル化するビジネスがある。これは検索システム構築費の4倍から5倍の金額で取引されている。
さらに2年ぐらい前からデータプロセスビジネスの割合が増えており,イメージデータを使ったデータ処理を行っている。従来,原票から入力していた伝票,申込書はスキャニング,OCR,OMR処理をしたデータにして,イメージデータを検索し,問い合わせの渉外対策を円滑に行っている。

電子政府

官公庁は電子政府化を進め,行政情報公開,申請・届出が電子化される。現状は国税関係の帳簿の電子データ,マイクロフィルムを正式媒体と認める形で電子帳簿保存法が施行されている。
また2005年をめどに,イメージデータ,電子データを正規の媒体とするために,電子帳簿保存法を改定しようと経団連が主体になって動いている。これが通るとイメージビジネスがさらに発展する可能性がある。
2003年5月に,個人情報保護法が国会を通った。カード会社の例でも,カードの申込書は個人情報の最たるもので,名前,住所,会社,口座番号,名義人などの情報が入っている。従来は申込書を入力する段階で他の入力センターに出し,エントリーをする。しかし個人情報保護法により,あるカード会社では外へ出すことも禁止という流れになった。新しい流れとして,イメージデータを加工して手続きする動きがある。

市場規模

日本画像情報マネジメント協会の調べでは,1999年はマイクロフィルムが約1000億円強であったが,2002年は約1000億円を切った。一方,電子文書は800億円から約2000億円に伸びている。
さらにフィルムの本数とコマ数を算出したところ,日本国内で約数十億コマのフィルムが残っている。実際にデジタル化したのはその20%くらいである。2003年6月2日に社会保険庁で2000万コマのデータ入力入札公示があったばかりである。
2000年から2004年まで年率20%強の伸び率である。開始されてまだ間もないので国内の市場は未成熟であり,これから大きなマーケットニーズが見込めるということでもある。

デジタルイメージングのニーズ

最近は,スピードとセキュリティがビジネスの大きな要素になっている。さらに情報が氾濫すれば情報保護,セキュリティが重要な要素になってくる。原紙,紙で保管,情報保護を考えた場合は限界がある。しかしデジタルデータであれば,手を加えることによってセキュリティが図れるので,デジタルビジネスが今後のビジネスの中で重要なスピードとセキュリティを補完する形になる。
原票移動時間の短縮は,日本では完全にはまだ実施されていないが,アメリカではデータキャプチャリングシステムが主流になりつつある。
例えば保険会社には,支店,営業所のブランチが全国に数百カ所ある。日本の場合,申込書データは各支店,営業所で記入されたものをセンターに配送し,原票から入力,イメージからスキャニングして,OCR,OMRのデータ処理を行っている。一方,アメリカでは,各支店に低価格スキャナを置き,発生した原稿(申込書)をその場でスキャニングする。本店はネットワークによりデータをセンターに集める。各支店には,申込書自体は原紙が残っているので,センターに送ったイメージデータから実際のデータを起こして審査などに使う。そのイメージデータとインデックスデータを用いて検索する。OCR,OMRによって,原票からそのまま全部入力するものに比べて,入力工数を低減させる。
原票の移動は情報が漏えいする可能性があるので,イメージを活用するということである。
日本でのデータ入力は,日本で原稿をスキャニング,衛星回線を使い人件費,コストの安い国にイメージデータを転送,エントリーして国内に戻すことでイメージとインデックスデータとして利用している。
カード会社は,デジタルイメージングビジネス分野にとって大きな市場である。カードの申込書は各個人が記入しカード会社に対して発送する。この申込書をスキャニングしイメージデータにする。
重要なのは,カード会社の場合は,申込書が永年保管対象文書であるという点である。原票を1カ所に集め,スキャニング,データ入力をする。さらにデジタルデータをフィルムにするためにダイレクトにフィルム作成を行う。
これによりスピード面も,圧倒的に速くなる。さらにイメージデータ化した原票の移動は1カ所になるので,セキュリティ面が確保される。

カラーOCRシステムと技術動向

OCRもカラーの時代に移行している。流通関係の統一仕入れ伝票は,ドットプリンタで打ち出すと,印字位置が印刷用紙に比べてずれてしまう。モノクロだと線も文字も同じ黒なので,OCRは誤読してしまう。カラーOCRをかければ,印刷の枠をブルー,OCR対象を黒にし,黒の文字だけOCRを掛け認識率を上げられる。
従来は原票からエントリーしているが,OCRを掛けることで入力工数を下げる。イメージ検索のファイリングはイメージデータを使ってOCRを掛け,検索のイメージデータを残すと同時に,データ処理工数が大幅に削減する。
また日本には押印の習慣がある。押印の赤を対象外とすれば,文字にかかった検印などの判を全く無視して高認識率のOCRが掛かる。ただし,現状は1イメージに1秒近く掛かるような状態である。
技術もどんどん進歩し高速カラースキャナ時代では,100枚/分,60枚/分のものが次々に登場し,モノクロに比べてデータ量は圧倒的に多くなる。
最近はスキャンすると,カラーとモノクロの2ファイルを作るようなスキャナも出ている。
ソフトウエアではプリズムグレイというアプリケーションがあり,少し大きめにスキャニングし,原稿とバックグラウンドの境界を区分して曲がりの補正をし,同時に原稿サイドでクロッピングを掛けてしまう。カラーデータは,光の関係でノイズなども入るので,スキャンする段階で除去する必要がある。これを解決するのがプリズムグレイである。
このようなデジタルイメージング技術を支えるハードウエア,ソフトウエアにより,デジタルイメージングビジネスの範囲が広がってきている。

(通信&メディア研究会)

出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2003年9月号

2003/09/29 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会