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フルデジタルで再考されるべき文書システム

文書の生成から,文書が読者に届き,読んで理解され,保存され,企業や学校など組織の共通の知識となるまでの過程は長く,また場所的にも多くのところが関与している.文書の有効活用や,活用される文書作りを考えると,これらの過程全部を考慮しなければならない.

過去においては,何らかの文書システムがあっても,有効なシステムかどうかを判断するにはあまりにも局部的な機能を提供するだけなので,システム導入の強い動機には結びつかなかったことが多い.これは文書の活用度や有効度を計測することの困難さを示しており,成果を計測できないものは投資の対象にはならないからである.

文書作成のプロセス自体は,アナログでもデジタルでも大きくは変わっていない.最初は,何らか書きとめる必要が生じたときは手書きでメモし,それらを原稿としてまとめ,入力・校正し,再度推敲して,版下のようなページの整形をして他人にレビューしてもらい,仕上げの修正をして印刷したりファイルを作り,印刷・配布をすると同時に保管をする.さらに読んだ人のフィードバックを受けて改訂・改版する.

ところがこれらの過程の順序に沿って技術が発達したのではなく,まず印刷が産業化し,次いで版下,編集など前工程にそれぞれ異なる業者群が出現し,ワープロなどの入力・校正の装置が一般に普及し,プリンタが発展し,パソコン・ネットワークが普通に仕事の環境になるなど,過去20年ほどの間にジグザグに機械化が進み,全工程が分断・固定化されていった.

機械化にともなう設備投資をなるべく生かそうと考えると,どうしても先に機械化した工程を起点に前後工程への展開をしようとするが,それもうまくいかなかった.そんな中でインターリーフなどが力を入れていた文書管理というジャンルは弱体化した.しかし今日では,メモ書き以降のすべての工程はデジタル・ネットワーク化し,再結合しつつある.つまり文書管理の究極の姿は見え始めている.

メールも携帯電話でもPDAでも業務中にメモできるようになったので,それらさまざまなソースを包括的に管理できるグループウェアのようなものが求めらる.それらソースを整理し,内容を認証し,いつでも使える標準部品のようにして保管し,使用履歴などを含めて管理するシステムも必要になる.ここまで整うと,目的にあわせて文書部品を組み合わせて,版下やWEBのテンプレートに流し込んで自動的にページを作ることができる.そうするとこれらの紙への出力や通信での配信がオンデマンドでできるはずである.

このように技術開発の歴史からいったん切り離して,コンテンツ発生からコミュニケーションの成立までの流れを頭からコントロールするコンテンツ管理がこれからの中心になるであろう.これは言い換えるとクロスメディアのシステムでもある.

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 211号より

2003/09/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会